第4話
「レクス、どうだった?」
イヴリースはこのところずっと考え込んでいるレクスを心配していた。
「惜しいところまでは行ってるんだ。だけどそのあと少しがうまくいかない。欲を言えばもっと飛距離を伸ばしたいし...」
僕は今日の実践結果をイヴリースに報告しながらも悩み続けた。
「ゆっくりでいいんじゃない?まだ学校に行くまで3年もあるのよ。12歳の子なんてレクスより魔法が使える子はいないわよ」
イヴリースにはレクスが生き急いでいるように見えて心配だったのだ。
「あと少しだけ頑張ってみるよ。」
そう呟いてレクスは自分の部屋に戻りもう一度魔法式を考えることにした。
「腕をどうにかして保護できれば...腕を覆うか...身体強化?それか魔法自体を浮かせるか手のひらを向けて発動する理由は狙いをつけやすくするため・・・じゃあ体から離れると魔法はどうなる?崩壊は、しないな。」
僕は自分の体から徐々に魔法を離していき魔法がどうなるかを実験した。
「崩壊はしないけど少し小さくなったかな。これは体から放出した魔力を体の近くで形を作る為か、体から話すと魔法までの距離で魔力にロスが生まれて最終的に霧散すると。放出し続ければ形は保てるけどこれも距離が離れれば小さくなり霧散する。」
普段は手のひらから20cm程度のところに作っていた魔法は最終的に1mを超えると霧散することが分かった。
「やはり体の近くで発動する必要があるか。としたら何かで覆うしかなくなるが・・・。そうか、これなら」
レクスは何かをひらめくと部屋を飛び出し屋敷の裏まで走った。
「何も腕を覆う必要はなかった。魔法自体を閉じ込めてしまえば!」
僕は思いついた魔法を構築し始めた。
「ロック!ここにウォーター、これで...ウィンド!」
僕はロックで大砲のような筒を作り出すとその中にウォーターを発動した後その後ろにウィンドを発動させてウォーターを押し出すことにしたのだ。
シュドッ!!という音と共に筒から勢いよく水が噴き出した。
「なんか思ってたのと違う...」
レクスはウォーターボールが射出されると思っていたのだが実際はウィンドに押し出された水は筒の中でぶつかりまくり単に勢いよく水が噴き出しただけという結果になったのだ。
「それなら玉をロックで作ってみるか...ロックなら重さもあるし複合魔法で爆発させて押し出したほうが飛ぶかな?」
先ほどと同じようにロックで筒を作りその中にもう一度ロックで玉を作り火と土と風魔法を複合させた魔法を玉の後ろで待機させた。
「バーストマジック!」
短縮詠唱で爆発を起こすとドンッッ!!!!と体に響くほど大きな爆発音と共にロックで生成した玉が裏山に向かって飛んで行った。
直後にズンッ!という音と共に土煙が上がった。
「成功だ!!やっと完成した。これはアースキャノンと名付けよう!」
僕は喜びながらガッツポーズをしていると背後から凍えるような寒気を感じた。
「あなたは一体何をしているのかしら?」
「ひっ...ごめんなさい母様・・でもついに完成したんだ。僕だけの魔法だ。」
「でももへったくれもありません。爆発音が聞こえたと思ったら家が揺れてびっくりしたわよ?危ない魔法は使用禁止と言ったはずよ?」
レクスは魔法の完成で気づいてなかったが着弾の衝撃派は屋敷にまで届いていた。
「危なくないんだこの魔法は。今までは怪我をしていたけどこの通り。どこにもけがはしていないんだ。」
「今までは怪我をしていたですって?そんな事今知りましたけど?危ない魔法の練習はしない約束でしょう?説明してもらおうかしらレクス?」
過去最大と言えるほど怒っているイヴリースから逃げるようにレクスは後ずさりした。
「母様...一度見てください僕の成果を...お叱りはそのあとでしっかり受けますので・・・。」
「そうねぇ一度見せてもらいましょうか?危なくないっていうあなたの魔法をね?」
イヴリースはこめかみをピクピクさせながらもレクスの新しい魔法に興味があるように見せるよう言った。
「じゃあ見ててね。ロック!」
僕はさっきよりもっとすごいものを見せてやろうと調子に乗った。
「まっすぐ飛ぶようにウィンドで回転を加えるように...玉も先端を尖らせれば飛びやすいかな?さっきより弾も大きくして爆発の威力がちゃんと乗るようにしてっと...」
さっきよりも複雑に魔法を構成していく。通常魔法は条件を追加すればするほど魔力の消費は増えるがそこはレクスに関係ない。なので特に考えずに魔法を構成した。
「筒もさっきより強度が増えるような形に変えて...っと。これで良し。バーストもなるべく爆風のほうに比重をかけるためにロックを減らすか。ロック、ファイヤ、ウィンド!」
「待ちなさいあなたその構成は・・・」
魔法の構築に熱中しているレクスにはイヴリーズが待ったをかけるも虚しく
「バーストマジック!!!」
気合を入れて発動した。発動と同時にバンッッッ!!!!!!とさっきよりも大きな音がしてロックで作った直径15cm程の弾は先ほどとは打って変わって一直線に空気を切り裂きながらに裏山に吸い込まれるように飛んだ。弾は一瞬で裏山に到達するとズガァァァァンと凄まじい音と共に着弾した。すぐさま着弾の衝撃波は屋敷にまで届き窓ガラスが全て吹き飛んだのだった。
「...ウマクイッタナーハハハ・・・。(完全にやりすぎた殺される・・・。)」
チラッと後ろを見ると母様は口を開けて固まっていた。
その隙に僕はそろりそろりと逃げようとすると足が凍っていた・
「どこへ行こうというのかなレクス?」
イヴリースは先ほど以上ににこにこしながら逃げようとしていた僕に迫った。
「ひぃっ・・・逃げようとだななんて人聞きが悪いですよかぁさまぁ」
「そんな甘えた声出したって無駄よ!!!これのどこが危なくない魔法なのよ!戦略級魔法より危ないわよ!!」
「ごめんなさい」
僕は素直に謝った。
「はぁ・・・(本当にこの子は末恐ろしいわ。10歳にも満たないのにこの威力の魔法を使うとはね。またアルに報告する事が増えたわね)しばらく魔法は禁止よ。目を離したら何するかわかったもんじゃないわよ。」
イヴリースはレクスに魔法禁止を言い渡した。
「そんな・・・それは勘弁してよ母様。もう危ないことはしないから...」
僕は消え入るような声で母様にお願いした。
「ダメなものはダメよ。入学試験に合格するまでは勉強しなさい。」
レクスは入学試験まで勉強をすることになった。
主に試験に出題される歴史や魔法理論、魔法生物学、魔法薬学等学校で学ぶ内容をメイドのアリアに詰め込まれた。
レクスが放ったアースキャノンは地中深くまで貫通し、その先にミスリル鉱床が見つかったのはもう少し後の話。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます