第2話
次の日アルバートの下にカメリア家が訪ねてきた。
「ようこそおいでくださいました。アルバート様がお待ちになられています。こちらへどうぞ」
ウォルターはカメリア家夫妻をアルバートの執務室へ案内した。
「ようこそアルフレッド様。イヴリース様。」
アルバートは立ち上がり二人に挨拶をした。
「随分と早く見つかったな。流石だなアルバートよ。」
「勿体なきお言葉。まずは今回紹介させていただく子の説明をさせていただきますのでどうぞお掛けください。」
二人をソファに座らせるとウォルターがすぐさまお茶を運んできた。
「まず今回紹介させていただく子は6歳になったばかりの子で昨年の判別の儀にて魔力無限のギフトを授かっております。使える属性は火と水。いずれは風と土も覚える可能異性があります。その他に短縮詠唱のスキルを覚えています。カメリア家にとって大きな力になることは間違いないでしょう。」
アルバートはここまで説明するとカップに口を付けた。
「魔力無限のギフトに短縮詠唱だと?そんな貴重な純魔、まさか攫ってきたわけではあるまいな?」アルフレッドは鋭い眼光でアルバートを睨みつけた。
「まぁまぁあなた?アルバートがそんなことをするわけないでしょう?」
アルバートを殺気を含んだ眼で睨みつけるアルフレッドをイヴリースが制した。
額に流れた冷や汗を服とアルバートは
「あの子は庶民の生まれで父親に虐待を受けておりました所私の商会に売られました。父親のほうは絵に描いたような屑。妻亡き後酒に溺れ、子に暴力をふるい今回も自分の酒代のために我が商会へ...こちらでスキル鑑定したときには痛覚耐性がレベル5に上がっておりました。」
アルバートはレクスの出自を説明した。
「なんということだ...そのような事許される筈がない。ここで保護できたのはこの上ない幸運だったか。」
「そうね。私たちが責任をもって愛しましょう」
二人は既にレクスを連れて帰ることが決定してるようだった。
「その前にあと一つ懸念事項があります。こちらで調査した結果恐らくですが魔力出力が著しく低い可能性があります。実際に魔法を使って貰ったところ通常の3分の1に満たないレベルの魔法でした。」
アルフレッドは少し思案すると
「出力は正直修行次第でどうにでもなる問題でもある。仮に上がらなかったとしても使い方を教えれば問題はない。」
アルフレッドはこれからの修行過程を想像しながら伝えた。
「さすがは魔道卿ですな。それでは連れてこさせますのでしばしお待ちを。」
アルバートはベルを鳴らしウォルターにレクスを連れてくるよう伝えた。
「それにしても今回は助かった。アルバートよ」
カメリア家には以前から不妊に悩まされており数年前から養子の希望を出していた。
しかしカメリア家の希望は最低でも2属性以上魔法を使えることとありかなり難しく今回見つかるまでに時間がかかってしまったのであった。
「やっと息子ができるのね...あなたごめんなさい私のせいで...」
イヴリースは自分のせいと言わんばかりに涙を流した。
「泣くなイヴ。不妊は私にも問題がある可能性もあるのだぞ。しかし今回息子ができるのだ。精一杯愛そうではないか。」
アルフレッドはイヴリースを抱きしめたところでノックが聞こえウォルターがレクスを連れて部屋に入ってきた。
「お待たせしました。こちらがレクス君です。」
「初めまして、レクスです」
レクスはアルバートの横まで行くとアルフレッドをイヴリースに挨拶した。
「初めまして。レクス君私はカメリア家当主、アルフレッド・カメリアだ。こちらは妻のイヴリース。これから君を我が子として迎えたいと思うのだがどうだろうか。」
アルフレッドはレクスの目を見ながら自己紹介をした。
僕はアルバートをチラッと見ると判断を任せるように頷いていたので
「よろしくおねがいします」
と一言だけ伝えた。
「本人も確認が取れたところで契約に移りましょう。まずは既存の契約を破棄します。」
そう言うとアルバートはレクスが逃走したりしないよう縛っていた隷属契約書を取り出し何事か呟くと契約書が燃え上がり消えた。
「これで既存の契約は破棄されました。と言っても逃走防止など軽いものですがね。
この後はどうしますか?新たに契約しなおしますか?」
アルバートはアルフレッドに新しく隷属契約をするか尋ねた。
「そんなもの必要はない。私の名に懸けて愛し守り抜こう。」
「かしこまりました。それでは養子縁組の書類だけで結構でしょう。こちらとこちらにサインと血判をお願いします。片方は当商会、もう片方は大切に保管しておいてください。レクス君の市民証作成に必要になります。」
アルフレッドはさらさらと書類を仕上げるとアルバートに手渡した。
「これでレクスは正式に我が子になった。世話になったなアルバート。今後とも良い取引を頼む。」
「願ってもないお言葉。またご要望の品がありましたらお頼りください。」
アルバートが頭を下げたのを確認すると
3人は商会を後にした。
「レクス、ここがこれから住む家になる。今までよく頑張ったな。ここにはもうお前を傷つけるものはいない。」
レクスは自分が住んでいた家より数倍は大きな家を見上げると今までの緊張が途切れたように涙を流した。
そんな姿を見たイヴリースはレクスを抱きしめ、
「もう大丈夫よ。これからは私たちがあなたとお父さんとお母さんになるのよ。だから安心しなさい。」
「着いてすぐで悪いがこれからの事を相談しよう。おいで」
アルフレッドをイヴリースはレクスを連れて家に入り執務室へ向かった。
「まずは改めて自己紹介をしよう。私の名前はアルフレッド・カメリア。カメリア子爵家当主で君の新しい父親だ。」
「次は私ね。私はイヴリース。アルフレッドの妻であなたの新しい母よ。よろしくね。この他に執事のトーマス、メイドのアリア、ベネット、リーシュよ。あなたの身の回りの世話はアリアに任せるわね。」
イヴリースが執事たちの紹介をすると名前を呼ばれた順にレクスに礼をした。
「レクス様の身の回りの世話を仰せつかったアリアと申します。これからは何なりと私にお申し付けくださいませ。」
「自己紹介が済んだところでこれからの事を話そう。レクスよ置いてけぼりで済まないがこれからはお前の未来に関わることになる。しっかり聞いておくように。」
アルフレッドはレクスの前に座ると真剣な目をして話し始めた。
「まずは12歳になったらレイハルム王立魔道学校へ入学してもらう。そこへ入学するための修行を中心に行う。」
アルフレッドは目先の目標を魔道学校への入学とし、それまで6年間修業を積ませることにした。
「ですが僕は魔法が...」
レクスはここまで閉じていた口を恐る恐る開いた。
「大丈夫。君の魔法の事は知っている。それを解決するためにも魔道学校へ進んでもらいたい。修業はイヴリース、頼めるか?私はこの後王都に残り仕事に戻らないといけないのでな。」
「かしこまりました。レクス君は任せて頂戴。すぐに入学できるくらいに鍛えて見せるわ。」
イヴリースは自信たっぷりに力こぶを作って見せた。
「さすが頼もしいなイヴは。氷災の魔女と呼ばれているだけあるな。」
「その恥ずかしい二つ名は言わない約束でしょう?あ・な・た?」
イヴリースは隠していた二つ名を堂々とばらされアルフレッドに氷の魔力を放った。
「ちょっとした冗談じゃないかハハハ・・・。」
アルフレッドは飲もうと口にしたカップが一瞬で凍りそっとテーブルに戻した。
「次はありませんからね。さぁ早速準備をして家に帰りましょうか。」
イヴリースはメイド達に帰り支度をさせるとその日の昼過ぎには領地に向け馬車を走らせた。
「さて今後の事をしっかり考えなければな。トーマス。新しいお茶を用意してくれ。」
「かしこまりました」
執事のトーマスは凍ったカップを下げ新しいお茶を用意した。
「しかしほとんど心ここにあらずといった感じだなあの子は。」
新しいお茶に口をつけながらトーマスに話かけた。
「そうですな。6歳とは思えないほど静か。通常あのくらいの子は落ち着きないものでしょう。」
「それほどまでに虐待されたか...」
「そうでなければあそこまで心を閉ざすことはないでしょう。」
「イヴたちに任せて良かったかもしれないな。早くに母を亡くしてる影響もあるだろう。男の私よりイヴたちに任せたほうが心も開きやすいか」
「そうでしょう。父親に虐待されていたなら男性にトラウマを持っていておかしくない。次に会うのは心の傷が癒えたころにするのがよろしいかと。」
「どちらにせよこの仕事を終えるまではしばらく帰れないから丁度良いかもしれんな」
アルフレッドは積みあがった書類に辟易しながらも仕事を再開した。
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