汚れ続けた私が、生まれて初めての恋を知るまで【R-15、修正あり】
※文字数が多いです
★
ーーつまり、私のハジメテは「仕事」に奪われる運命。
昔から根暗で人見知りしていた私は、男の人と話すのも苦手だったし、今もそう。
お客様とのトークも「営業マニュアル」のコピペが多いし、同行する正従業員さんに委ねる事も多かった。
男の人と付き合っても「話がつまらない」と、捨てられるだろうな。
あと単純に、貧乏で恋愛をする余裕も無かった。
また格闘都市たる
不同意で純潔を散らされる
住人女性の間では「初めてを不同意にされるくらいなら。同意した男性に、早めに捧げよう」という考えも、珍しくない。
そりゃそうだし、私もそんな感じ。
超人ではない平均男の腕力も、平均女の約2倍だもの。
今日は、無垢(笑)なる小魚が水揚げされて。
それがまな板の上で捌かれて、初刺身の試食会が行われるのだ。
カナと私と、30代くらいの清潔感のあるオジサマ。
「模範客リスト」の常連で、気配り上手らしい。
「そ、そにょっ。最後までは初めてですが・・よ、宜しくおねがいしましゅっ!」
彼は緊張していた私に、柔和に応対してくれる。
この人なら、必ずしも悪くはないかなあ。
一番はお金の為だけど、副店長さんや仲間たちの為にも。
覚悟、決めなくちゃね。
シャワーと共に最終確認して、漁場へ。
丁寧な下準備、手順を踏んだ盛り上げ方。
カナの支援砲火もありがたい。
もう、私達を隔てる布は消え去り。
準備が出来た私に「力を抜いて」と声がかけられ。
「いいですよ・・来て、下さいっ・・!!」
私の
陸で力尽きた魚のように、水滴に塗れている私。
痛みと疲労感で、指一本も動かないまま、天井の光が滲んでいた。
カナが「お疲れさん」と、タオルで拭ってくれた。
私は微笑を浮かべて礼を言い。
「やっとみんなと同じになれた」とか。
「マジ眠すぎる。あ、赤いシミがいっぱいだ・・」とか。
とりとめもない思考に沈んでいった。
・・解散後は簡単な食事を取り、入金を確認して帰宅。
今日は叔母さんも帰ってこないので、部屋で一人だ。
『まあ、初めてがいい人で良かったな。
同僚たちはもっと酷い相手が多かったし、こりゃ嫉妬されるぞw』
そんなカナの話に愛想笑いで返したのが、ついさっき。
スマホの通帳画面には、基礎料金分の配分と、追加料金が上乗せされている。
つらい思いをしても、この画面を見ると心が安らぐ。
追加7万円。
喪われた、花一輪の価格なり。
気づいたら私の頬を、冷たい水滴が伝っていた。
「・・う。ひぐっ。う、わあああんっ!」
少し声を押し殺して。
ただただ私は泣き通した。
分かってるわよ、「初めては好きな人と」なんて、私には過ぎた願いだって事は。
それでも時々「ああ・・私、何やってんだろ」って、どうしても虚しくなるの!
そんな感情、自分でも制御できないんだから!!
泣き疲れて、吐いて、服も着替えずに眠って。
痛みと虚脱感に蝕まれたまま、学園を2日休んだ。
その後は気持ちを切り替え、日常に復帰した。
休んだ理由をカナに言ったら、謝られたけど。
「私が稼ぐのに、一番効率のいい方法はコレしかないから。
目標額が貯まるまで続けるわ」と返した。
いつもの三足わらじの、日々の隙間。
カナと私は、お互いの身体における「神経拡張訓練」をする事になった。
それは私の体を、仕事向きへと再構築する行い。
神経を広げれば、苦痛を和らげたり、あまつさえ心地よさにすら変換されると。
それを信じて、カナと少しずつトレーニングに励んだ。
その結果。
私は持ち前の器用さを活かし、多くのお客様を相手に、戦果を上げていった。
苦手なトークも少しづつ鍛える過程で、リピーターもついた。
たちの悪い客やクレーマーもいたけど。
副店長さん、カナ、みんなの力を借りて冷静に対処できた・・と思う。
内心は結構ビビっていて、終わった後でこっそり泣いたけどね。
『正直言うとね〜。
心や体を病んで退職する娘も多いのよ。
ミサちゃんは良くやってくれるし、アタシの目に狂いは無かったわ〜♪』
今まで私がヘアアレしてきた子からも。
副店長さんたちからも。
やっぱり、承認されるのは嬉しい。
時々ココロが沈むのも処方薬で誤魔化せるし、通帳を見ると落ち着く。
貞操ゆるい女子が多い、
その中でも最大にゆるいとされる4人が【
うち一人のカナとつるんでいた私も。
名実ともに、そこの仲間入りを果たしたのだ。
はあ、カネのためとは言え不名誉だなあ。
仕事以外で、そういう事はしていないのに。
それでも、ゆるい系コミュニティからヘアアレの手伝いを頼まれるので、孤立はしなかった事が、せめてもの救いかな。
ーーそんな感じで、歳月は矢の如く過ぎ去り。
受験中は業務縮小しつつ進学を果たし、私の環境も変わって。
それでも目標額までの、着実な手応えを感じていた、そんなある日。
『いやあっ、な、何なのよコレえーーっ!』
心臓が止まりそうになってたなー。
何せ、風呂前に脱いだショーツに緑のシミが付いてりゃさ。
病院で検査。一部、職場から補助金が出たのは有り難い。
知らない間に、客に病を
投薬治療を一ヶ月ほど受ける運びに。
その間、バイト内容は縮小して
粘膜以外での伝染性は無く、普通に生活は出来る。
一部の従業員からは同情されたり。
或いは「汚いのが移る」と文句を言われたりした。
少し前には本業務の後で、酷使した箇所が出血して、それが3日続いた事も。
あのときは痛さと空しさで、メッチャ鬱になったなあ。
これ、労災出ないのよね。
この組織自体も、必ずしも「合法」とは言えないし。
そうして塞ぎ込んでいた、ある夕方のこと。
名栗町の路地裏で格闘家(崩れ)3匹に、声をかけられた。
『ふひひ。試合に負けてツイてねえと思ったが。
とんだ拾い物をしちまったぜww』
『小柄で巨チチとはギャップなりい。
しかも慣れてる感じがしますし、気軽に使い捨てられますなあ!』
『いくらか握らせてやれば、すぐに開くだろ。
オラ、とっとと相手になれよお!!』
ちょ、止めてよドクターストップがかかってるのに!!
コイツラ、女を何だと思ってんのよ!!
・・押さえつけられて声も出ないよ。
いくら仕事で慣れていようと、こんなキモい奴らになんて・・
『・・お前ら、何をしている。その娘を放せ!』
その視線の先には。
黒髪ウルフカットで180㎝はありそうなイケメン。
アンニュイな雰囲気に、引き締まった肉体。
ーーねえ、【拳の王子様】って知ってる?
それは
ピンチに遭った女の子を、筋肉で迎えに来てくれる存在。
私の存在もまた、この街の神話へと絡め取られ、落ちていく。
それが、汚れきってしまった私の。
生まれて初めての恋の
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修正履歴:9月5日に文章を追加
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