暴力装置という両刃の剣
警告:【残虐描写】
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ドグシャアアアッ!!
「・・何だ、蚊でも刺したか?」
俺はノーガードで仁王立ちしたまま、奴らを睥睨する。
奴らが俺に叩きつけ、突き刺そうとした得物群は。
俺の筋肉に当たりはすれど、有効打には至らず、半端な場所で食い止められた。
ーー俺の基本技、〈
筋肉を一時的に膨張させるスキル〈
鐘堂千早こと
この2つを組み合わせ、ノーガードのまま、相手の攻撃をライフで受ける
・・もとい、素肌で食い止めるという荒業だ。
増加した筋肉に服が耐えきれず、破れてしまうので。
事前に服を脱いでおくのを忘れずに。
・・冬は寒いけどな。くしゅん。
「「「馬鹿な、直撃のはz・・おぼおぉおっ!?」」」
一瞬動きが鈍った敵集団を、〈筋肉肥大化〉したままの腕と足で、ぶっ叩いて処理する。
立ち上がってこれないように、ふくらはぎや足首を踏み潰しておく。
「フン、硬さだけはいっちょ前だな。
だが闘気を使えるのは、こちらも同じこと。
〈
敵リーダー(名前忘れたわ)が、居合抜きから刃を薙ぐ。
とっさに両手をクロスさせ、さっきと同様にガードするが・・
「ぐうっ・・・」
完全には防ぎきれず、前腕部に刃が食い込んで出血。
骨には遠く届かないものの、皮膚を切り裂かれた鈍い痛み。
「〈
涎が
正眼の構えから、小刻みに切りつけてくる。
皮膚の表層しか斬れていないものの、傷創と鮮血が
「ふっ!ふんっ!」
こちらから僅かに踏み込む事で、相手の刀は最後まで振り抜けない。
それを利用して威力を殺す。
ノーガード戦術の基本技だが、このままじゃジリ貧だ。
まだだ、今は耐えて、隙を伺え。
誘い込むために、一瞬だけ〈筋肉肥大化〉を緩めて・・
「〈
「〈
ズブウゥッ!!
切っ先が、俺の脇腹に刺さる。
5cm食い込んだ所で、再び〈筋肉肥大化〉を発動!
相手の刃をガッチリ腹筋で掴み、動かせないようにする。
真剣白刃取りの、腹筋版といえる技だ。
「ぬぬっ、抜けない・・動kわぷううっ!?」
その隙に、先輩から貰った「スコビル爆弾」をパンツから取り出し、奴の顔面に投擲する。
小さく弾けて、飛散した赤い
・・・公式試合では事前申請が要る武器だが、まあ非公式だしな。
あーあ。初めて先輩と会った日の俺みたいに、地面を転げ回ってるよ。
刀を引っこ抜いて肉薄。
拳を振り上げてーー
「おラあッ(ボゴッ)!
よくもぉ(ベキッ)!!
調子にィ(べチッ)!
乗ってェ(バゴッ)!!
くれたァ(ゴスッ)!
よなあッ(ブチュッ)!!
(ドカバキグシャ)!!!」
・・ああ、やっぱこれだよ。
暴力を振るうのが、楽しくて仕方ない。
外道の血の色が、見たくてたまらない。
己の憤懣を乗せるのも。
狂気の沼を、潜水して泳ぐ感覚も。
天へ突き抜けるような、浮揚感も。
相手の皮膚を抉り、毛細血管を引き裂き。
返り血が吐精される様も。
「いー加減にせんかーっ!!!」
バヂバヂバヂイイッ!!
痛烈な電気ショックに焼かれ、俺は動きを止める。
後ろには、テイザー銃を構えた先輩。
そして警察の機械兵士が立っていた。
★
あーあ。いくら相手が悪いとはいえ。
サギ君、勝負がついた後の相手を何度もボコッていたら、そりゃあ
警察ロボが『
傍らでは、救護ロボがサギ君の止血をしたり。
搬送ロボが、外道たちを応急手当して、どこかに運んでいったり。
アタシは、簡単な事情聴取を受けて開放された。
サギ君は、大人しくへこへこしてる。
まあ、彼にとっては日常茶飯事だよねえ。
血液がついた身体で、荷物を持たせるわけにもいかないので。
仕方なく、家までの短い距離を(自動)タクシーで帰った。
車中で考える。
この街には、全国各地から『気性が荒く、喧嘩っ早い男』が集まってくる。
持て余した超人の力を、金銭に換える為。
或いは故郷で罪を犯し、落ち延びてきたり。
それが、
より良い福祉制度のある地域に、人が集まりやすくなる・・
そんな男を、彼氏にするのは容易いだろう。
でも、今日のサギ君のように、共に歩いてトラブルに巻き込まれたり。
えっちを断った日に、暴力で脅されたり。
或いは店員に、尊大な態度を取ったり。
そんなリスクが高そうな相手じゃ、付き合えないだろう。
やっぱりアタシの初カレは、もっと思慮深い人がいいなあ。
帰宅後、こってり絞られた(だろう)サギくんと、チャット通話。
『先輩、荷物を最後まで運べず、申し訳ありませんでしたあああ
m(_ _;)m』
『全くもう・・まあ、まだ軽食を奢る前だったし、今回は許したげる。
でも、格闘都市特別法のある場所では、君と一緒には歩かないからね!
(# ゚Д゚)』
『すみません、殴り病患者とはいえ、一度スイッチが入ると、自分でも止められなくて。
この体質があるから、闘技を戦えますが・・・人の迷惑にもなるわけで。
もっと周りを見て動きます_| ̄|○』
『君もアタシも〈超人世代〉。お互い、厄介な体質を持つよねえ。
そういや、刀で刺された傷は、大丈夫そう?
(・・?』
『明日は普通に登校しますよ。
第一、刺されたくらいで学校を休むなんて、軟弱にも程があります。
拳闘も学問も手を抜かないのが、真の文武両道でしょう
(-д☆)キラッ』
『そいつは文武両道じゃなくて。
脳筋って言うんだよおおお!!
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン』
脳みそを使わない時間。
研究中に
会話を打ち切ったら、夜の帳が降りていた。
さあ、泡沫上がる地へ。
弟くんとの、約束を果たしにいこうか。
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