恋愛はコスパが悪いけど

 ★雨宮瑠奈あまみや るなView★


 ーーこうしてちーちゃんは、機能不全を起こしている国家の為に貢献し、多額の税収を収め、投げ銭すぱちゃと有名税を得たのでした、まる。


 まあ、騒がしい人たちが周りに集まってきちゃうという、弊害もあるけどねえ。

 ・・で、とりあえずさあ。


「ギャハハハ、誕プレが地球儀って、マジうけるんですけどwwww」

「あははー。まあまあ、やっちの彼ピもない知恵絞って考えたんだし〜。それに、インテリアくらいにはなるんじゃないかなあ〜。」

「いやいや、部屋のコンセプトと合ってないじゃんww、やっちの部屋ってコテコテのガーリー仕様だしwww」


 ーー今はアタシの周りの方が、よっぽど騒がしいけどな、チクショー!!


 時は放課後。

 アタシは「薬学研究部」の部長(幽霊部員2名は不在)として、みんなからのお薬相談に乗る時間なのだけど。

 コイツら、もう本来の相談(選択肢が豊富になった、アフターピルの選び方について)は終わったんだから、駄弁ってないでとっとと帰りなさいっての!


 1年生では多少有名な、モブ3人衆の2人。

 茶髪ヤンキー系の茂部出景子もぶで けいこ

 量産系ぴえんの脇谷久美わきや くみ

 不在なのが腹黒清楚系、やっちこと引館益代ひきたて やくよ


 あーもう。ギャルっぽい連中は、どうも昔から苦手だぜ。

 アタシみたいな、ちんまいナードのガキンチョなんか、揶揄の対象だったもんなあ。

 まあ最初に通った高校は10歳のとき、飛び級で1年のみで卒業できたし、嫌な思いが増える前に逃げてやったけどな!


「そーいやさあ、瑠奈ちの方はどーなん?レンアイとかセフレとかそっち方面さあ。」


 うわ、こっち来ちゃったよ。

 うーむ。「全くの未経験」ではないけど、コイツらには話したくないんだよなあ。


「うーん。アタシは昔から研究ばっかで、灰色の青春だったからなー。

 でもまだ15歳なんだし、いい人が見つかれば考えるけど・・・」


「ま〜刹那的なカンケイであっても、丁寧さとか気遣いとか、カラダの相性って大事だよね〜。

 恋愛はただでさえコスパが悪いし〜あたしは太パパと濃厚に楽しんで〜ついでに稼いで〜

 弾幕青年隊のぉ、ミバ様推しに使ってる〜ミバ様しか勝たんし〜」


「ギャハハ、クミはやっぱそーだよな。

 ウチは大学生のカレピと別れたばっかでさあ。優しいのはいいけど、カネはさほどでもないし、夜は淡白で飽きちゃったしー。

 でも名栗高校ウチの粗暴な男子よりは、優良物件だったなー。別れないで、こっそりセフレつくりゃ良かったかなー。」


 はあ、高1でただれてんなーコイツら。

 名栗高校このがくえんもさあ、別に偏差値が低いわけじゃないんだよ。

 特進科の生徒たちは、戸鳴となり学園や戸鳴女子高のような進学校と比べても、遜色のない頭脳が揃ってるから。

 あとは普通科も、いわゆる底辺高校よりもかなり優秀だし。

 家政科の卒業生も。名家の使用人や、料理人、ホテルマンなどに就職しているね。


「も〜、自分から地雷抱えるん〜?

 でもそうやってストレス発散したほうが、本カレ相手のときに、余裕を持てそうだよね〜」


 ・・・そうだよ。偏差値は低くないんだ。

 ただ粗暴で血の気が多い男と。

 貞操のゆるい女が、多く在籍してるだけなのさ!

 で、アタシに来る相談の内容も「ケガの対策」「避妊や中絶」とかが多いんだよ!


「にゃはは・・アタシはまだ『普通の恋愛』っていうの?

 よく知らないからさ。みんなみたいにトガッちゃう前にさ、少しくらいは知っておきたいなーって。」


「瑠奈ちはメイクの基礎もできてるし、頭脳もカネもメーセーもあるじゃん。

 その気になれば行けるっしょ!(バンバンバン!)」


 ちょ、背中を叩いてくるんじゃねーよ、肩パンを暴力と認識してねえDQNがよお!!

 ・・なんて、口に出せたらいいのになあ。


「だよね〜少しでも経験を積めば分かるよ〜

 レンアイはコスパもタイパも悪いし、今のジダイには合ってないってね〜」


 ・・それについては、ちょっと調べた事があるんだ。

「恋愛のコスパが悪い」のは有史以来、変わっていないと思う。


 デジタル技術が未熟だった90年代以前。

 その頃は、何をするにもアナログで不便で。

「コスパの悪さ」という視座が、意識されていなかった時代だろう。


 でも、今は何をするにも「便利な時代」。

「コスパの悪い行為」が、悪目立ちしてしまう世の中。

「ファスト映画の倍速再生」では、文化が発展できないように。

「普通の恋愛」もまた、この時代では発展できないのかもしれないなあ。


 でも、アタシは知りたい。

 自分が、を機に歪んでいても。

 との事があっても。

 俗物になってもいいから、普通ってやつに触れたいんだよ。


 ・・あ。化学室の入口に、男女ふたりが立っている。

 どうやら、次の相談者さんがお出ましのようだ。

 二人にその事を告げる。


「じゃあね瑠奈っち、今度はウチらが恋愛相談に乗るからさ!」

「し〜ゆ〜あげ〜ん。パパ客候補なら、いつでも見立ててあげるよ〜」


 はあ、最後まで勝手な事を。

 でも恋愛先人の知恵なら、少しは聞いてもいいかな?


「はいお待たせしました。今回はどんなご要件で・・・」

 顔面にクレーターが出来ている男の方が、おずおずと答える。


 ・・・あ?えーと。

 、だあ?!


 だああ、アタシャ性病科でも産婦人科でもねェんだよ!

 こんな相談ばかり来るとか、責任者でてこいやゴルァア!!

 この町にいると、格闘とスケベの話題ばかり聞くよなあ。涙。


 ーー放課後、マジックアワーを家路につく。

 道端では、相変わらず武闘家たちが殴り合っている。

 まあ、夜間の闘技ふぁいとは禁止だし、これがラストバトルだろう。

 しかし、ですくわーくの日のはずが、精神的に疲れた。

 いきつけの弁当屋で、サバ味噌弁当と海藻サラダを買っていこう。


『おかえりなさいませ御主人様!ご飯はお済みですか?

 お風呂は湧いていますよ!』


「ただいまだぜ、らいむ君!

 着替えたら、買ってきた弁当を食うからさ!

 つーかさ。聞いてくれよおー・・・」


 ロボ執事くんとふたり。

 ロボットは食事をしないけど、それでも落ち着ける空間だ。

 一人暮らしの寂しさも、少しは薄まるから。


 さあ、明日は戸鳴となり町にある、名栗大学に行く日だ。

 高校とは、まるで違った1日になるだろう。


 今日はおやすみなさい。Zzz・・・・

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