中学生処刑日記《政府公認》

 警告【不快発言】

 ここからバトル有&文字数多め

 =============

 ★鐘堂千早しょうどうちはやView★

「にゃはは、好き放題に言ってくれちゃってさあ!」

 連中の位置から約10km離れた市街地。

 グレーの迷彩服を着た褐色少女が、盗聴装置から漏れ聞こえてきた連中の会話を聞いて、額に青筋を浮かべている。

 笑顔だが、目は全然笑っていなかった。


「陸士長さんには、直々に戦い方の助言も、激励も貰ったけど。あんな外道共、頼まれるまでもなく肉片にしてやるもんね。」


 ボクの近くには、のホログラム画面がしており、現在の敵軍データ、位置情報、地形図などの詳細が記され、リアルタイムで変化している。

 その脇と50m上空には、反重力装置を使った2台のカメラが、重厚で強固なボディに陽光を反射させてしている。

 ボクは荒廃した道路の上で、倒壊寸前の数多の建物をバックにして、カメラ目線の構えを取る。


「ハイ!というわけで政府公認、千早の処刑人エグゼキューター日記も第4回。

 今回は殺人や性暴力の犯人、元自衛隊の死刑囚3人が乗った戦車を、鉄クズにしちゃる!という内容でお送りしまーす。

 いやー。陸士長さん達ガチギレされてましたねー。真面目な自衛隊の方々はとんだ悪評を受けてしまいました。

 汚名は返上できずとも、法的制裁は加えられる!という事で、いつものいってみましょう!」


 左腕に仕込んだ生体チップをトンと叩き、処刑人エグゼキューター画面を召喚する。

 例の死刑囚3人を含む、何人かの詳細情報が表示される。「申請」のボタンをタップ。

 すると画面が切り替わり、政府の承認が表示され、無機質で冷徹な電子音声が。


『処刑人ID00698 鐘堂千早。対象群の処刑執行を許可します』

「ハイよろこんでーーっ!!」


 カメラ目線でポーズを取ったボクは「皇祖皇宗こうそこうそう諸聖霊しょしょうりょう、お見守りください」と小さく呟き、砂埃の中を颯爽と歩きだす。

 敵陣まで、あと約10km。


 戦車砲の「照準装置あり」の射程は約2km。一応、最初の8Kmは安全圏か。

 ただ、物理的には20km以上の射程距離。狙いの正確さは落ちるが、位置情報を元にして、こちらに一方的に撃つことは可能。


「ここは遮蔽物の多い商店エリアだからね。敵陣から離れているとはいえ、警戒するに越したことはないか。・・・〈闘気充填とうきじゅうてん〉!」


 周辺の空気が‘ボウッ’と揺れると、ボクの周囲に、が貼られ、膨張して体全体を包み込む。

 目には見えないものの、これで威圧感が増したことは、ド素人にすら分かるだろう。


 ーー闘気操作。これは超人世代の出生と共に研究されるようになった力で、誰にでも宿っているとされる。超人以外でも訓練次第で扱え、各人の個性が反映され、様々な事に応用できるもの。

 幕末の儒学者が「純然たる天地正大の気(オーラ)は、神州日本にのみ結集している」と言ったらしいけど。天皇さまが去られた事で、この「気」が、日本の一般市民にも配分されるようになった・・・という説もあるが、ボクにも分からない。


 そうしてひび割れた道路を歩いていると、傾いた廃ビルの中で、何かがキラリと光ったのが見えた。静音モードであっても微かに聞こえる金属音、うごめくような気配。

 ーーボクが通り過ぎた後、背後から仕掛ける気か?


 なら先に炙り出す。気配を探り、他には何もない事を確認。

 近くの瓦礫を拾い、窓が割れている隙間に、フルパワーで投擲。

 手と瓦礫が離れる瞬間に闘気を爆発させ、カタパルトのように射出する!


 ーードグオ゙ォォォォォン!!!


 ビル内部に轟く音を挙げて着弾。

 危険を感じ取ったのか、黒くて四足の影が、3匹飛び出してきた。

 奴らはを掃射しながら、こちらに向かってくる。


「〈闘気防御ほいよっと〉!」


 硝煙と火花を上げつつ降り注ぐフルメタル・ジャケットを、

 2体を無視し、まずは1体目。

 1つ目モノアイ機械猟犬メタルハウンドの顔、カメラ部分に狙いを定めてーーー


「〈闘気正拳突きはああっ〉!!」


 闘気でガードした拳を叩きつける。

 メ゙リッとした感触と共に強化ガラスが粉砕され、内部のカメラも破砕。

 勢いはそれでも殺せず、吹っ飛んだ猟犬は壁に衝突し、煙を吹き出して沈黙した。


 この間にガードしきれなかった銃弾は、闘気の膜で止められてはいるが・・・

 地味に痛く、こりゃうっ血して捻挫が出来ているだろうな。

 素早く手を動かして残りの銃弾を弾きつつ、2体目を蹴り一発、3体目を拳一撃で処理し終わった後。


『ドオオン・・』

 次の瞬間、遥か遠くから破裂音が聞こえ、空を切り裂いた何かが山なりの軌道を描き、こちらにに向かってくる気配。

 ・・陸士長さん。奴らの戦術、予測どおりです。


 思い出した助言に感謝しつつ、瞬速で道路の逆車線に移る。

 から、少し遠い建物に。ガラスを割って、素早く内部へ転がり込む。次の瞬間


『ズガッシャアァアン!!!』

 逆車線にある、廃ビルの上部から爆破音が轟き、一帯の地面が揺れる。

 爆砕された廃ビルの飛礫が、ボクの避難した建物にも激しくぶつかる。

 匍匐体勢を取って闘気を纏い、侵入してきた瓦礫をいなす。

 ビルの上のフロア部が倒壊して、轟音を立てて落下。更に地面が大いに揺れる。


 ・・・機械兵をけしかけ、足止めさせて砲弾を打ち込む。

 当たらなくても、建物を倒壊・爆破させて二次コラテラルダメージ狙い・・か。

 陸士長さんの戦術予測が当たって、どうにか切り抜けられたね。


 さて、を見ながら考える。

 いくつかのルートがあるけど。出来ればも考えて、それなりにを選んでいきたいけど。


 ・・うーむ。爆裂音や轟音ばっかで耳がキンキンするよお。

 ゆっくり進んでたら耳が保たない。

 銃弾で部分はまだ我慢できるが、受け続けるのはウザいし・・

 ちょっとペース上げていきますか。


 指針を決めたボクは建物から出て、地形が変わって、瓦礫まみれになった道に出る。

 砂煙が上がっているので、ゴーグルとマスクを着用。

 気配探知もそこそこに、再び敵陣を目指して、速度を上げて前進。


「何か、横スクロールのアクションゲームみたいだねえ。

 ・・・ビデオゲームの経験ゼロだけど。にゃはは。」


 ★三悪人View★

「むう。私めが設置した機械兵団と罠が、次々と潰されてイマスナ。

 興味深い。これが超人の底力というもの。データを収集シマスゾ。」


「ゲヒッ、何余裕かましとんじゃあ!

 仕留められずとも、手傷くらいは追わせねえと。

 熊を全滅させた噂、ありゃあ嘘じゃねえな。

 早くブチ犯してえなあ、超人のってどんな感じだろうな、グヒョォ!」


「攻め手を緩めるな。

 超人だろうと、結局は年端もいかぬ小娘。

 大爆破の様子を何度も見せ、視覚に恐怖と圧力を刻み込んでやれ。

 撃ちまくる轟音で、更に聴覚も潰してやれ。

 正常な精神状態のままで、我々の元には辿り着かせぬぞ。

 ・・・む。また動きがあったな。戦車火砲パンツァー・フォイエル!!」


 大きく角度がつけられ、銃身が加熱している120mm滑空砲が、またしても火を吹いた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る