皇居跡地とヤリサー

《注意:かなり文字数が多いです。途中で人物紹介あり》


 ローズ・アブソリュートの匂いが、アロマポッドから立ち込めている。

 目を背けた俺の視界にはもう、壁と柱とウンベラータの鉢植えしか入っていない。


「やあっ・・・助手くんのクセにはげしっ、生意気だよお・・ひぐぅっ!!」


 鍛え上げられた2匹の筋肉が激しくぶつかり合う、容赦のない音。

 何で俺がこんな出歯亀・・出歯ガラスみたいな事をせにゃならんのだ。

 しかし内容を我がカミに、後で報告せざるを得ない以上、簡単に逃げるわけにもいかない。


「あ・・♡ちゅぱちゅぱ上手だよ。

 ふふっ、ままのみるく、おいしいでちゅかー?いーこいーこ♪」


 ・・思えば1950年代の皇居前広場でも、アベック達がそういう事をしていた。オリンピックの開催が近くなると警備が強化され、連中も去っていったようだ。


 天皇や皇族は、憲法上の「国民」には含まれないため、人権や自由も制限される。

 無論、恋愛を繰り返す自由も。自由を謳歌する者たちは、そうした事を一度でも想z・・


「にゅふふふ。上手にちーちー出来たねえ♪

 ぷるぷるで固いゼリーの、ダマが出来ちゃってるよ?

 はむっ・・じゅるり。くちゅくちゅ。おお濃厚、しかも、この苦味の少なさは初めてだよぉ・・」


 だああ、いい加減にしろお前ら!!考え事に全く向かない環境だな、ここは!


 観測はもういいだろう。衝撃波を出さない程度の速度で、壁をすり抜けて離脱。

 摩天楼の隙間をすり抜けながら風を切り、緑が待つ方へ。

 皇居周辺の森で、因幡兎たちと情報交換をしてこようか。

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


 ーー時は過ぎ夕刻。兎たちとの話も落ち着いた暮れ6つに、また例の魔窟に戻ってきた。

 慎重に頭だけを、壁に透過させて様子を伺う。

 背後から見ると「巨大カラスが壁尻してる」という、間抜けな構図だろうなあ。


 連中の激戦もあれから落ち着いたようで、各々が白いバスローブを纏い(一人だけはダボダボの実験用白衣と縞パンを着用)、大テーブル上の料理をつついている。

 デリバリーのシーフードパエリア、生ハム入りシーザーサラダ、ミネストローネ、チーズケーキなど。


 ・・これ、40階に運んでくる方も大変だろうな。

「外国人は日本人ほどには、タワマンを重視していない」って昔誰かが言ってたけど、本当だろうか?


「まあ、配達員が来る前に片付けが間に合って良かったっすね。

 あちこちに仕込んでおいたペットシーツが汚れや水気を吸収して、いい仕事してくれましたし。」


 金色短髪でマッチョな男が、エールを傾けながら言う。


「備えあれば憂いなしだねえ。

 この乙女の白衣にも、数多の装備ぎみっくが詰まってるのさ♪」


 白衣を翻し、ちんまい体型の女が一回転してみせる。立食形式とはいえ、行儀悪いやつだ。


「あはは白ちゃん、ここに乙女きむすめなんて一人もいないでしょーが。

 ヨナくんだって、さっき卒業しちゃったのにねえ。」


 ゆるふわウエーブ髪で(やや)ぽっちゃり体型の女が、パエリアの小皿を持ちながら、にこやかに否定する。


「・・いや先生、僕男ですから!

 ・・ハジメテだったのに、あんな事やこんな事を全部一気に・・助手先輩、ちょっと恨みますよ・・うう・・」


 ぱっと見「男の娘」にも見える、小柄で華奢な男性が、コップ一つを両手持ちし、露骨にしょげている。


「ふーむ。『段階を踏んでロマンチックに進展したい』ってキモチ、男の人にもあるんだねえ。でも元々はヨナくんが、びっち女子に惚れちゃって、テクを磨きたいって言ってきたんだよ?

 ・・まあ、進展スピードが超音速だったのは、ウチの仕様みたいなものだからね。郷に入れば従えって事で!」


 褐色で引き締まった体型の黒髪ポニテ女が、フライドチキンを持ちながら答える。


 監視対象が5人もいると、時々記憶が混線するんだよなあ。

 整理も兼ねて、軽くケダモn・・人物紹介してみるか。


「しっかし助手くんはこれで良かったの?ヨナくんを誘わなければ、竿役は自分ひとりのままで、疑似ハーレムを維持できたのに。独占ハメ比べって、男の夢じゃないの?

 まあ、ヨナ君はきゅーとで猫可愛がりしたくなるし、参入には大賛成だけどね!」

 薄緑髪サイドテイルで、ちんまい体型の白衣女。


 HNハンドルネーム白ちゃん、本名は雨宮瑠奈あまみやるな

 人智を超えた力を持つ「超人世代」の一人で、薬学・製薬の天才。

 頭の悪い喋り方をしているが「国内最高クラスの頭脳」の一角で、若干14歳のときに大学院卒し、既に相応の収入も得ている。


「だよねえ。助手くんは一晩で10戦以上出来るんだし。或いは、女を他の男に抱かせるNTRせねとらせ属性持ち?

 どっちみち、の幅が広がるから、私も歓迎かな♪」

 茶髪ゆるふわウエーブ髪で、ややぽっちゃりした女。


 HN先生、本名は硯由宇佳すずりゆうか

「超人」かどうかは不明だが、別名義で官能作家をしている。一応、文学の天才といえるだろうか。

 しぶとさや粘り強さで、学問も執筆もこなし、家事能力もそこそこ。まあ、外見からは想像できない事情も抱えているが・・・それは他の奴にしても同じか。


「ヨナが年上お姉さんたちに気に入られて、連れてきた俺も一安心っすね。

 ・・まあ、俺と白ちゃん先輩、先生の3人だけの頃なら、それで良かったっすけど。体力チートの姉御まで加わるとなると・・自分が満足するより、相手を満足させられないのが、実際ツライんすよね。

 俺も天才3人相手じゃ、超疲れるし。んでヨナが、えっちの特訓が出来る場所を探してたので、渡りに船かなって。」

 金色短髪でやや強面なマッチョ。


 HN助手くん。本名は狭霧恭也さぎりきょうや

 一応は「超人」の一角で、ランクB+ビープラス相当。筋肉増強によって、攻撃を弾く能力を持つ。

 近年増殖している遺伝性疾患「殴り病」の患者で、攻撃的な性格。暴力と言論戦を好むが、家事の腕前だけは5人の中で最強だったりもする。


「むー。ボクは助手くん以外の男に抱かれるのは、かなり抵抗あるんだけど・・まあ、ヨナくんは露骨に『男!』って感じじゃないし、まあいいかな。

 ファンクラブの娘たちが相手なら、わんこそば感覚で無尽蔵に食べられるけど♪

 特に拳闘ファイトのあとは、体が火照ってしょうがないんだよねー。暴力欲や食欲の次は愛欲。人間のさがだよね♪」

 引き締まった褐色肌に、つややかで武人のような黒髪ポニテ女。


 HN姉御、本名は鐘堂千早しょうどうちはや

 まさに「超人」の見本で、国内で上位3人クラスのSSダブルエスランク闘士ファイター。速度も破壊力も、人智の及ぶ所ではない。

 巨大な道場、鐘流つりがねりゅう本家の娘。その腕を活かした動画配信で収入を得て、実家に経済貢献している。

 このタワマンの宿泊料は、ある依頼をこなして得たあぶく銭から払ったらしい。上記の4人は、名栗なぐり高校に在籍。


「(ボソッ)それ、ケダモノの習性じゃないですか・・・

 でも、こんな豪華で、眺めのいい場所に泊まれるのなんて、人生初です!姉御先輩には、改めて感謝してます!

 ・・その、僕で出来る事は、精一杯頑張りますから!無理言って加入させて頂いた以上、皆さんの役に立ちたいんです!」

 赤みがかったサラサラの黒髪。ぱっと見「男の娘」にも見える、小柄で華奢な男性。


 HNヨナ、本名は浅川吉良あさかわきら

 多分、普通の人間。この中では最も、常識も良識もある方。彼だけは進学校の戸鳴となり学園高等部・特進科の生徒。ある程度多言語会話が出来て、成績優秀。


 この5人が、天賦研究会のメンバー。表向きは言論サークル。

 実体は、身内だけでひっそり、合意前提で楽しむヤリサー。

 ただ良識は捨てず、一般社会に迷惑をかけないように、ルールもきっちり決めている。


 ・・まあ、どれだけ平和裏だろうと刑法上の「公然わいせつ罪」には問われるだろうが。





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