第152話 さらに高みへ

 周囲を見渡すと、たった一度の魔法で大勢の仲間が殺され、その理解不能な状況に恐怖し、放心状態になっている自慢の部下達の様子が手に取るように分かる。


 私も同じ気持ちだ。


 魔法士団による魔法攻撃の弾幕から無傷で現れ、突如我々の頭上に出現した太陽は、【土魔法】や【氷魔法】で生成した防壁を容易く破壊し、一瞬で数千人を葬った。


 アレンの実力を見誤っていた。


 冒険者ギルドのやり取りで私と同等、あるいはそれ以上の実力者であると想定はしていた。


 もしかすると、英雄と讃えられるSランク冒険者に匹敵するのではないかと。


 しかし、その想定は甘かった。


 一瞬で数千人の精鋭を屠るなど、Sランク冒険者でも不可能だ。


 Sランク冒険者に近い実力がある私でも、無理なのだから。


 そのように現実逃避をしていると、アレンに動きがあった。


 (また魔法を発動しようとしている…)


 「全隊、散開しろぉおおお! 一箇所に固まれば広範囲殲滅魔法の的にされるぞ! 四方に散り、前後左右から奴を殺しにかかれ!」


 騎士団長の言葉を聞き、騎士や魔法士達が目に闘志を宿し立ち上がる。


 「まだ我々のほうが圧倒的に有利だ! まだ絶望する時ではない! 殺された仲間達のためにも、立ち上がれ! 〈アルバニア王国〉を守護する勇猛な戦士達よ!」


 「「「「「うぉおおお!」」」」」


 騎士団長が全隊を鼓舞し、恐怖に呑まれそうだった者達が息を吹き返す。


 「全隊! 突撃ぃいいい!」


 「「「「「うぉおおお!」」」」」


 騎士団長の号令により、武器を掲げ一斉に突撃する騎士達。


 そして、魔法士団長の指示により、再度魔法攻撃を仕掛ける魔法士達。


 しかし、彼等は知らない。


 この戦いの最中、目の前の化物が成長し続ける異端者であることを。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 視線の先には、雄叫びを上げ決死の覚悟で突撃してくる騎士達。


 そして俺の行手を阻むように、魔法攻撃の弾幕を張る魔法士達。


 先程の単体攻撃魔法だけでなく、俺より規模の小さい焼殺太陽イモレイト・サンなどの広範囲殲滅魔法も混ぜてきた。


 だが、俺を殺すには物足りない。


 魔法攻撃の弾幕の中を散歩するように歩き、俺から迫り来る騎士達の元へ近付いていく。


 さぁ、俺のために無様に死んでいけ。


 「絶対零度アブソリュート・ゼロ


 俺を取り囲むように展開していた騎士達は、絶死の寒波をその身で受け、瞬く間にその生命を散らしていった。


 いや、騎士達だけには留まらない。


 後衛に控える魔法士達も、その寒波に呑まれていった。


 『Lv.78にUPしました』


 『Lv.79にUPしました』


 『Lv.80にUPしました』


 『Lv.81にUPしました』


 『Lv.82にUPしました』


 『Lv.83にUPしました』


 『Lv.84にUPしました』


 『Lv.85にUPしました』


 『Lv.86にUPしました』


 『Lv.87にUPしました』


 『Lv.88にUPしました』


 『Lv.89にUPしました』


 『Lv.90にUPしました』


 『Lv.91にUPしました』


 『【詠唱省略】Lv.8にUPしました』


 『【気配感知】Lv.9にUPしました』


 『【魔力感知】Lv.9にUPしました』


 『【斬撃耐性】Lv.8にUPしました』


 『【刺突耐性】Lv.8にUPしました』


 『【水魔法耐性】Lv.8にUPしました』


 『【土魔法耐性】Lv.8にUPしました』


 『【風魔法耐性】Lv.8にUPしました』


 『【氷魔法耐性】Lv.8にUPしました』


 『【採取】Lv.7にUPしました』


 『【狩猟】Lv.9にUPしました』


 『【調理】Lv.6にUPしました』


 『【伐採】Lv.6にUPしました』


 『【畜産】Lv.6にUPしました』


 『【解体】Lv.9にUPしました』


 『【縫製】Lv.6にUPしました』


 『【鍛治】Lv.5にUPしました』


 『【調薬】Lv.5にUPしました』


 『【陶芸】Lv.5にUPしました』


 『【写本】Lv.5にUPしました』


 『【演奏】Lv.5にUPしました』


 『【跳躍】Lv.9にUPしました』


 『【気配遮断】Lv.9にUPしました』


 『【魔力遮断】Lv.9にUPしました』


 『【探索】Lv.9にUPしました』


 『【運搬】Lv.5にUPしました』


 「あぁ〜最高だ…」


 両手を広げ天を仰ぎながら、独り言を呟く。


 『Lv.80に到達したことを確認しました』


 『これより、ゴブリン・キングからゴブリン・エンペラーへの進化を開始します』


 二度目のレベルアップやスキルレベルアップに興奮していると、懐かしい通知が聞こえてきた。


 Dランクダンジョンでゴブリン・パラゴンからゴブリン・キングに進化して以来だな。


 周囲を凍死した騎士達に囲まれながら、進化に応じて身体が再構築される。


 身体中から耳障りな音が鳴り響く中、まだ生き残っている奴等を見据える。


 (あと…1,000人くらいか?)


 当初10,000人いた軍隊は約9割ーーー約9,000人を殺され、既に瓦解している。


 約9,000人の騎士や魔法士を生贄に、レベルは64から91まで上昇し、複数のスキルがレベル9に到達した。


 残りの約1,000人を殺し終えた時、俺はどこまで成長しているのか。


 『ゴブリン・キングからゴブリン・エンペラーへの進化が終了しました』


 進化を終えた俺は獰猛な獣のような目つきで、残存戦力を皆殺しにするべく、敵陣に向かって歩き出した。


 


 


 

 

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