第147話 騎士団長の登場

 『【飛翔】Lv.6にUPしました』


 『【毒針斉射】Lv.7にUPしました』


 『【跳躍】Lv.8にUPしました』


 午前中から陽が暮れる夕方頃まで、ディアナと一緒に魔物を討伐しまくった。


 俺の今日の戦果は、キュウキ五匹、マンティコア五匹、ジェヴォーダン五匹、ガーゴイル五匹、ミスリル・ゴーレム五匹。


 一日でこれだけ大量に討伐できるのも、ステータスが大幅に伸びたからだ。


 どの魔物も一撃で倒せるので、心を無にして戦っていた。


 そして帰り際に、今回は魔法も有りの状態で勝負をした。


 既にディアナ自身の口から「いつでも抱いていい」と言質を取っているので、勝負する必要はないのだが、対人戦闘の技術向上のために勝負を持ちかけた。


 「クソッ! 今回も負けてしまった…」


 大通りを歩く道中、ディアナは心底悔しそうに本音を漏らした。


 「ディアナ、お前が俺に勝つことは不可能だ。…いや、ディアナに限らずだな。それでも俺に勝ちたいなら、努力し続けることだな」


 「当たり前だ! お前のその鼻っ柱をへし折るまで私は絶対に諦めない!」


 生粋の戦闘狂であり絶対に諦めないその不屈の精神は、非常に好ましい。


 俺も見習わなくてはいけないところだ。


 「ただ、一つ違和感がある。私との勝負で手加減しているのは分かるが、その手加減した状態でも、明らかに前回より威力が上がっている。それは何故だ?」


 「それはたまたまだ。勝負の前にスキルレベルが上がったからだ。お前だってそれは分かるだろ?」


 「あぁそういうことか。チッ、運のいい奴だ」


 「お前だけが成長していると思うな」


 本当はユニークスキル【強欲】のおかげなんだけどな。


 ディアナの違和感については、タイミングよくスキルレベルが自然上昇ししたと誤魔化したが、俺は魔物や人類種を倒せば倒すほど、スキルレベルが上昇する。


 結果、成長速度が比較にならないほど段違いなのだ。


 荷車の倉庫に到着し、いつも通り担当職員に許可を頂き、素材検分兼解体所に足を踏み入れる。


 指定された場所に〈収納の指輪〉から討伐した魔物の死体を放出すると、報酬を受け取るため、冒険者ギルドのロビーに向かった。


 ロビーでディアナと一緒に名前を呼ばれるのを待ちつつ、明日以降の予定について考える。


 既にBランク魔物が所持するスキルは、ある程度レベルを上げられた。そろそろAランク以上の狩場かダンジョンに向かいたいところだ。


 武具も新調できたことだし、タイミング的にはちょうどいい。


 あとは当初考えていた、もう一つの狩場ーーーG〜Cランク狩場でゴブリン種に混じり、狩場で活動する冒険者達を殺すつもりでいたが…。


 (ここで格下相手に遊んでいていいものか…)


 いや、それはないよな。


 俺の目標は世界最強。


 何者にも侵されない揺るぎない力を手に入れるため、このようなぬるい場所で足踏みしてる場合じゃない。


 魔物や人類種相手に遊ぶことは、あとでいくらでもできる。


 それよりも今は、まだ見ぬ強者ーーー異世界人や魔王達を越えることが最優先だな。


 そこまで思考していたところで、ロビー内にいた冒険者達が一斉に静かになる。


 何事だ? とロビーを見渡すと、冒険者ギルドの出入口に立つ金属鎧を装備した集団。


 その中にいる二人の顔には見覚えがありーーー


 「団長、あいつです」


 俺達に偉そうな態度を取った騎士の一人が俺を指差して、先頭に立つ大柄な男に報告する。


 他の騎士とは違い、上質な金属鎧を装備した男が俺達の元へ歩き始める。


 その男ーーーおそらく騎士団長は俺とディアナを一瞥し、丁寧な口調で質問し始めた。


 「私はエドウィン。ここ〈アルバニア王国〉の王都を守護する騎士団の騎士団長を務めている。二人の名前をお伺いしてもよろしいか?」


 どういう意図があるのか、それともこれが騎士団長の素なのか分からないが、こちらも席を立ち、軽く頭を下げつつ挨拶をする。


 「私はアレンと申します。Dランク冒険者です」


 「私はディアナ。Aランク冒険者だ」


 ディアナは挨拶を終えると、すぐに座り直した。


 「ディアナはこの王都でも数少ないAランク冒険者だから知っているが…アレン、君は本当にDランク冒険者なのか?」


 騎士団長が疑いの眼差しを向けて来るので、冒険者の証明書ライセンスを取り出し、騎士団長に手渡す。


 「…本当のようだな」


 騎士団長は俺に証明書ライセンスを返し、質問を続ける。


 「昨日の早朝、何者かにベイジル男爵とその使用人が殺害された。その屋敷の一室で放心状態の女性を発見した後、私の部下が窓から入ってきた君達を見たようなのだ」


 「…」


 「そして、その女性をディアナが抱え窓から飛び降り、アレンが私の部下を無力化し逃亡した、と報告を受けている」


 「…」


 「今日の午前中、私の部下が君達を発見し詰所へ連行しようとしたところ、それを拒否し、私を連れて来るように言ったそうだ」


 「…」


 「ふむ…沈黙か。せっかく私が来てやったのだ、何か言うことはないのか?」


 

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