第145話 武具の新調と売買

 「決めました。防具はジェヴォーダンの革鎧でお願いします」


 「おう、分かった」


 「今手持ちはミスリル・ゴーレムの素材しかありませんが、このあと狩場に行く予定ですので、その時にジェヴォーダンの素材を持ってきます」


 「見たところ早急に防具が必要な感じがするが、素材は持ち込みにするのか?」


 「そうするつもりでしたが…在庫があるのですか?」


 「Bランク狩場で一番厄介なミスリル・ゴーレムに比べれば、ジェヴォーダンは討伐しやすいからな。素材や既製品の在庫もあるから問題ないぞ」


 「では、素材の持ち込みはやめます」


 「金のほうは大丈夫か?」


 「念の為、聞いておいてもいいですか?」


 「真銀貨七枚だ」


 「問題ありません」


 「分かった。じゃあまずは、既製品の中からサイズの合うものを探してみよう。無ければ、寸法を測って一から製作するとしよう」


 そのあと奥とカウンターを行き来し、既製品をカウンターの上に並べる。


 俺はそれを手に取り、慣れた手つきで装備していく。既に何度も狩場へ向かう前に自分で装備していたので、胸当や籠手、脛当、革靴を装備するのに迷いはない。


 装備し終えるとその場で軽くジャンプしたり、仮想敵を想像し近接格闘の動作を確認したりして、違和感がないかを確かめる。


 五つの防具一式を試着し、一番身体にフィットして違和感の無かったものを選ぶ。


 「三つ目の防具一式が一番良かったので、それを購入します」


 「おう。じゃあ次は武器だな。兄ちゃんは短剣を扱うみたいだし、ここは順当にミスリル製の短剣がいいだろうな」


 「そうですね…武器も魔物の素材によって、その性質に違いはありますか?」


 「おうよ! ミスリル・ゴーレムの素材で製作した武器のほうが壊れにくいし、魔法攻撃もぶった斬れるからな!」


 「それはいいですね。少し持ってみてもいいですか?」


 「あぁ構わないぜ」


 ミスリル製の短剣を手に取り、握った感触や振った時の重さを確かめる。


 「問題ないですね。これを二本購入します」


 「おう! 毎度あり!」


 早速ジェヴォーダン製の真っ赤な防具一式を装備し、剣帯に収めてある〈毒刃刺殺の短剣〉を〈真銀鉱魔の短剣〉に変える。


 「ほう…その指輪には収納機能があるのか。どこで入手したんだ?」


 「迷宮都市〈マイソール〉のDランクダンジョンで入手しました」


 「なるほどな。…気をつけろよ。収納魔道具や収納アイテムを所持しているのは、貴族や極一部の冒険者だけだ。その指輪の能力に気づかれたら、力づくでも奪う奴等が現れる。慎重に行動しろよ」


 それは願ってもない話だ。


 そういう奴等は皆殺しにして、俺の糧とするだけだ。


 「ご忠告痛み入ります。それでは、代金のほうですがーーー」


 「それについては提案がある。アレンはミスリル・ゴーレムの素材を所持しているんだったな?」


 「はい」


 「それを見せてもらってもいいか?」


 「少し店内が窮屈になりますが…いいですか?」


 「問題ない」


 ダライアスの承諾を受け、〈収納の指輪〉からミスリル・ゴーレムの死体を取り出す。


 そのままでは店内に入り切らないので、カウンターに背中を預け上体を起こした状態にする。


 「こ、これは…凄いな。ここまで綺麗な状態の素材を持ち込んだ奴は初めてだ」


 「頭部のみ破壊して他の場所には一切傷をつけてませんので。他の冒険者の方よりも倒し方は綺麗だと自負しています」


 「だが、ディアナの指導を受けているとはいえ、格上の魔物をこんな風に倒せるものなのか? Aランク冒険者でも不可能な芸当だと思うが?」


 「ダライアスさん。こいつはランクこそDランクだが、既にAランクの私よりも遥かに強い。色々と規格外な奴なんだ」


 「…そんなことがあり得るのか?」


 「一般的に冒険者のランクや傭兵の順位は、本人の実力に比例するものだが…アレンにはその常識が通じない」

 

 「アレンは冒険者になってどれくらい経つ?」


 「まだ一ヶ月も経っていません」


 「な! そうだったのか!?」


 「一ヶ月足らずでDランク冒険者に昇格し、Aランク冒険者のディアナよりも強い、か…」


 「まぁ私のことは置いておいて、話を戻しましょう。それで、このミスリル・ゴーレムの死体をどうするのですか?」


 「あ、あぁ。武器と防具の代金は要らない。代わりに、このミスリル・ゴーレムの死体を譲ってほしい」


 「ですが、これだけで武器と防具の代金に足りるのですか?」


 「代金としては足りないがこれだけのミスリルがあれば、ミスリル製の武器も防具も多く製作することができる。その利益を考えれば、十分お釣りがくる」


 「それであれば、お譲りします」


 「ありがとよ」


 「では、次は武器の買取をお願いします」


 「あぁ。状態を見てからにはなるがな」


 「勿論です」


 ミスリル・ゴーレムが邪魔なのでカウンターの中に入らせてもらい、〈収納の指輪〉から武器を取り出し、カウンターの上に置く。


 大剣と短剣、長槍、両刃斧、大盾が一つずつ。


 ギルバートとパーティーメンバーだった仲間達とベイジル男爵の私兵二人、アレクサンダーから回収したものだ。


 ダライアスはそれぞれの武器を手に取り、注意深く隅々まで武器の状態を確認する。


 「大剣以外はキュウキやジェヴォーダンの牙で製作されたものだが…刃毀れなどが目立つし、状態は良くないな。このミスリル製の大剣は手入れが行き届いていて、状態は悪くない」


 さて、一体いくらになるかな?


 「大剣以外は真銀貨四枚、大剣は真銀貨五枚で買い取らせてもらう」


 「それで大丈夫です」


 「了解だ」


 


 


 

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