第144話 ディアナお勧めの武具屋
俺は自然に目を覚まし、横で静かに寝息を立てているディアナを起こさないよう、静かにベッドを降りる。
リビングに移動した俺は、窓から見える外の景色を見て、頭の上に疑問符が浮かぶ。
地平線の向こう側から太陽が顔を出し、空が徐々に明るくなる夜明けが窓の外に広がっていた。
「おかしいな…まるで時間が巻き戻ったような感じだ」
しかし、現実にそんなことはあり得ないので、可能性としてはーーー
「俺達は日を跨ぐまで寝ていたのか」
男爵の件で俺もディアナも徹夜明けだったし、そのあとに満足するまで性交渉をしていたわけだから、寝過ごすのもおかしくはない。
思考が一段落着いたところで、浴室に向かい身体に纏わりつく寝汗や体液を洗い流す。
バスタオルで髪や身体の水気を拭き取り、朝食が運ばれてくるまで、リビングで寛ぐことにした。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
店員が部屋まで朝食を運び部屋を退室するのを見届けると、まだ眠り続けているディアナをデコピンで起こす。
「痛ッ!」
「いつまで寝ているつもりだ。朝食が届いたから早く風呂に入れ」
「あ、あぁ」
覚束ない足取りで寝室を出て、浴室に向かうディアナ。俺は先にテーブルに着き、朝食を食べ始める。
そのあと風呂から上がったディアナもテーブルに着き、特に会話も無く黙々と食べ続ける二人。
昨日は食事を一口も食べておらず、性交渉と睡眠で体力を消耗していたので、いつも以上に食べてしまった。
何度も部屋まで朝食を運んでくれた店員には感謝しかない。
「さて、腹拵えも済んだことだし、早速出かけるか」
「冒険者ギルドに行くのか?」
「いや、冒険者ギルドは後回しだ。まずは防具を新調するために武具屋に向かう」
「そういえば、ミスリル・ゴーレムの死体を確保していたな」
「いつまでもボロボロの革鎧では見栄えが悪いし、ディアナにオススメの武具屋を紹介してもらう約束だったからな」
「そういうことなら、すぐに出かけよう!」
「そうだな」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
冒険者や市民が多く行き交い、露店で賑わう大通りを進むこと十数分程度。
先頭を歩くディアナが一つの建物を指差し、歩みを止める。
「ここが私がお世話になっている武具屋だ!」
「そうか」
特に建物に目立った特徴は無く、ディアナに続いて店内へと足を進める。
右側の壁には真っ赤な革鎧やミスリル製の全身鎧が飾られており、左側の壁には剣身が白色の短剣やミスリル製の長剣が陳列されていた。
「おう! ディアナの嬢ちゃんじゃねぇか!」
「おはようございます! ダライアスさん!」
強面で体格のいい男ーーーダライアスさんと挨拶を交わすディアナ。
「それで、そっちの兄ちゃんは見たことねぇ顔だが…もしかして、嬢ちゃんの彼氏か!?」
「えっ、あ、ち、違いますよ、ダライアスさん!」
「それじゃあ、そいつとは一体どういう関係なんだ?」
「そ、それは…」
「挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。私はDランク冒険者のアレンと申します。ディアナさんには、冒険者活動のご指導を受けております」
「俺は【鍛治師】のダライアスだ。ディアナの嬢ちゃんが気に入るとは、何かしら光る才能があるようだな」
「まぁそうですね」
「ハハハ! 全く謙遜しないとは大した自信家だな! そういう奴は嫌いじゃねぇ。それで、今日はどんな用事だ?」
「用事は二つです。一つはこのボロボロの革鎧に代わる新たな防具と武器を新調することです。二つ目は武器の買取をお願いしたいです」
「よし! じゃあ一つずついくぞ。この街のBランク以上の冒険者は、ジェヴォーダンの毛皮で製作した革鎧か、ミスリル・ゴーレムの素材で製作した全身鎧を装備する。ここに来たということは、よりランクの高い武具を求めてきたんだろう?」
「はい」
「そこの真っ赤な革鎧がジェヴォーダンの毛皮を鞣して製作した〈孤高赤狼の革鎧〉、隣がミスリル・ゴーレムの素材で製作した〈真銀鉱魔の全身鎧〉だ。どっちにする?」
当初はミスリル・ゴーレムの素材を持ち込みミスリル製の武具で揃えようかと思ったが…防具は無理そうだな。
俺のステータスであれば全身鎧であっても動作に支障は無いと思うが、革鎧より機動力が失われそうだし、動きにくそうだ。
それなら見た目は派手だが、着なれ慣れていて動きやすそうな革鎧がいいな。
だが、その前にーーー
「ジェヴォーダンとミスリル・ゴーレムは同じBランクの魔物ですが、その性質上ミスリル・ゴーレムの素材で製作した防具のほうが丈夫ですか?」
「いい質問だ。結論を言うと、ミスリル・ゴーレムの素材で製作した防具のほうが物理攻撃や魔法攻撃に強い」
やはりそうか。
ミスリル・ゴーレムは物理と魔法両方の耐性スキルを所持しているから、ある程度素材も似たような性質を持つのだろう。
ただ、既にAランク冒険者であるディアナの攻撃を受けてもほぼダメージを負わないので、ここで全身鎧を選択する必要はないだろう。
そもそもの話、敵の攻撃は回避すれば済む話なので、ここは機動力重視の革鎧で決定だな。
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