第139話 男爵に仕える初老の執事

 アレクサンダーを始末し、側に置いてあった大剣を〈収納の指輪〉で回収する。


 それ以外に回収するべきものは見当たらなかったので、気絶しているベイジル男爵を叩き起こす。


 「おい! 起きろ!」


 「…ん、ぅーん…はっ! わ、私は何をーーー」


 「ベイジル男爵、混乱している暇はない。さっさと住居まで案内しろ」


 「は、はい! っとその前に…この拘束を解いて頂けますか?」


 「ディアナ、解いてやれ」


 「あぁ」


 立ち上がったベイジル男爵の拘束を解き、男爵の私兵二人とアレクサンダーの死体を放置して、〈赤目の闇梟〉の拠点を後にした。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 暗闇に支配されたスラム街。


 その道中を光源を持つ男爵の後に続き、俺とディアナは周囲を警戒しつつ進む。


 「ディアナ、貴族の居住区画って知ってるか?」


 「勿論だ。城壁ほどではないが石壁で隔てられていて、入口の門には騎士が二名見張りについている」


 「貴族以外は入れないのか?」


 「基本的にはそうだ。ただ、大商会の会長であったりAランク冒険者以上であれば、立ち入ることを許される」


 「てことは、俺だけ入れないのか。見張りの騎士は殺すか?」


 「それは絶対ダメだ!」


 「アレン様、入口の門から入らずとも中には入れます」


 「そうなのか?」


 「はい。貴族の居住区ーーー上街に住む者だけが知っている裏口があるのです」


 「見張りの騎士達は知らないのか?」


 「知りません」


 「騎士達が把握できていないと危険だろ。誰かがそこから侵入し、何を仕出かすか分からない」


 「大丈夫です」


 大丈夫だと言い切る男爵の後をついていくと、特に目立った所が無い石壁の前で立ち止まる。


 「アレン様、ディアナさん。念の為、周囲に怪しい者がいないかご確認頂けますか?」


 「いいだろう」


 「あぁ」


 各種感知スキルや【探索】を使用し、こちらを監視している者や尾行している者がいないか、確認する。


 「怪しい奴は見当たらない」


 「私もだ」


 「分かりました」


 俺達の返答を聞き、慣れた手つきで石壁のある箇所を押す男爵。すると、触れた箇所が奥に凹み、少し横の石壁が音もなく自動でズレた。


 「このような仕掛けがあるのか」


 石壁がズレて開けた場所を通り上街に入ると、石壁が自動で元の場所へ戻る。


 (確かにバレにくい仕掛けだが、ある程度【跳躍】のレベルが高かったり【空踏】を所持していれば、簡単に乗り越えられる高さだけどな)


 大きな屋敷が建ち並ぶ道を進み、ある屋敷の前で案内をしていた男爵が立ち止まる。


 「ここが私の住む屋敷です」


 他の屋敷と比較しても小さいほうだ。おそらく身分の位によって、大きな屋敷が与えられるとかそんなとこだろう。


 それに〈赤目の闇梟〉の拠点のほうが大きかったしな。


 男爵の後に続いて門を通り、屋敷の中へ入る。


 「お帰りなさいませ、旦那様」


 夜もだいぶ深い時間帯なのに、執事服を綺麗に着こなし仕える主に頭を下げる初老の男性。


 「今帰った。後ろにいるのは私の大事なお客様だ。もてなしは不要だ」


 男爵の見事な対応に感心していると、執事の爺さんが当然の疑問を投げかける。


 「承知いたしました。ですが、旦那様の護衛の二人はどうなされたのですか?」


 それを聞き一瞬男爵の肩が跳ねたが、すぐに冷静さを取り戻し返答する。


 「前々からあの者達の実力には疑問を抱いていた。なので奴等は解雇し、今回新たに私兵をスカウトしたのだ」


 「旦那様のお手を煩わせてしまい申し訳ありません。ですが、旦那様の一番側にいる私めが、素性の分からぬ者を旦那様の側に置くわけには参りません」


 主に意見してでも主の安全を優先したい執事の爺さんは、俺達のことを鋭い目つきで射抜く。


 「ですので、今夜はお帰り頂けますか? 後日改めて、旦那様の護衛に相応しいか見定めさせて頂きます」


 これは厄介なことになったな。


 それにこの爺さん、【心眼】で視る限りだとCランク冒険者相当の実力がある。


 既に殺した私兵の二人よりは実力は低いが、【体術】や【剣術】も所持しているので、対人戦闘の心得はある。


 貴族に仕える執事は、事務処理や給仕の能力に長けている者だと思っていたが…バリバリ戦闘も熟せるようだ。


 「私の大切なお客様に対して無礼だぞ! 分を弁えろ!」


 出過ぎた真似をする爺さんに対して、厳しい言葉で叱責する男爵。


 それでも、この爺さんは引く気がないらしい。


 それを見て男爵は拳を握り肩を振るわせる。


 本気で怒っているのか?


 それとも…。


 男爵が振り返り口を開こうとした時、俺とディアナに向けてナイフが飛来する。


 それと同時に一歩で俺の懐に入り、短剣で首元を狙ってくる。


 素早く短剣を振るい武器を破壊すると、靴先の刃で鋭い蹴りを放ち、俺の側頭部を狙う。


 それも短剣で弾くとまたナイフを投擲し、距離を取る爺さん。


 だが、その後すぐに爺さんの首が飛ぶ。


 投擲されたナイフを弾き、【縮地】で爺さんの目の前に瞬間移動していたからだ。


 『【調理】Lv.4にUPしました』


 『【伐採】Lv.4にUPしました』


 『【革細工】Lv.3にUPしました』


 『【銀細工】Lv.3にUPしました』


 『【金細工】Lv.3にUPしました』


 『【縫製】Lv.3にUPしました』


 『【縫製】Lv.4にUPしました』


 『【植栽】Lv.5を獲得しました』


 『【剪定】Lv.5を獲得しました』


 『【彫金】Lv.5を獲得しました』


 『【彫刻】Lv.5を獲得しました』


 『【描画】Lv.5を獲得しました』


 『【交渉】Lv.6にUPしました』


 『【清掃】Lv.2にUPしました』


 『【清掃】Lv.3にUPしました』


 『【清掃】Lv.4にUPしました』


 『【舞踏】Lv.2にUPしました』


 『【舞踏】Lv.3にUPしました』


 『【舞踏】Lv.4にUPしました』


 『【歌唱】Lv.2にUPしました』


 『【歌唱】Lv.3にUPしました』


 『【歌唱】Lv.4にUPしました』


 『【洗濯】Lv.2にUPしました』


 『【洗濯】Lv.3にUPしました』


 『【洗濯】Lv.4にUPしました』


 『【作法】Lv.5を獲得しました』


 『【教育】Lv.5を獲得しました』


 『【給仕】Lv.5を獲得しました』

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