第136話 性交渉を賭けた勝負

 『【闇魔法耐性】Lv.7にUPしました』


 『【光魔法耐性】Lv.7にUPしました』


 『【地穿水砲】Lv.6にUPしました』


 今日の討伐結果は、ガーゴイル5匹、ミスリル・ゴーレム7匹。


 ちなみにディアナは、ガーゴイル5匹、ミスリル・ゴーレム3匹だ。


 陽もだいぶ傾いてきて、他のパーティーも狩場を後にする中、俺とディアナは少し距離を開けて向かい合っていた。


 今からするのは、今夜の性交渉を賭けた戦い。そして戦闘方法は、【身体強化】と【闘気練装】のみ使用可能な近接格闘。


 ディアナは〈真銀鉱魔の大剣〉を地面に突き刺しているし、俺も〈毒刃刺殺の短剣〉を剣帯から抜くことはしない。


 「必ずお前を倒してやる!」


 「まぁ頑張ってくれ」


 ディアナは気合い十分だが、俺はやり過ぎないように注意しないといけない。


 「では、行くぞ!」


 律儀に宣告してから駆け出すディアナ。


 俺は特に何もせず、待ち構える姿勢。


 目前に迫るディアナの身体は、白く揺らめくような闘気に覆われており、容赦なく俺の頬目掛けて拳を振り抜く。


 その拳を掴むと、ディアナは俺の腕を掴み背負い投げる。


 投げ飛ばされながらも空中で体勢を整え、着地と同時に顔を上げると、既に目の前にディアナが迫っていた。


 頭上に振り下ろされる拳を掴むと、何故かもう片方の手で俺の腕を掴み、顔面に鋭く重い蹴りを受けた。


 木幹に衝突し倒れる俺。


 ディアナの筋力値よりも頑丈値が高いおかげで、ダメージはほとんどない。ただ、以前戦った時よりも物理攻撃の威力が高かった。


 (【身体強化】によるものか?)


 立ち上がりディアナに視線を向けると、違和感を覚えた。それは、先程俺を蹴り飛ばした足にのみ、闘気が集中していたからだ。


 そのような闘気の使い方は初めて見る。


 【闘気練装】はスキルレベルが上昇すると、肉体の強化度合が増すスキルだ。


 おそらくディアナの【闘気練装】は俺よりも高いんだろうが、部位集中により闘気の密度を上げ、限定強化することで攻撃の威力を上げたんだろう。


 流石だな。


 俺とディアナでは経験値に差がある。


 しかし、問題はない。


 これからの勝負で戦闘技術は学習すればいいし、そのような小細工を使おうともステータスに差があれば、俺を倒すことはできない。


 さて、早速その戦闘技術を学ばせてもらおう。


 ー【技能模倣】ー


 今この時に役立つスキルを発動し、仕切り直してディアナとの戦闘を開始した。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「あぁ…負けてしまった」


 「当然の結果だな」


 「くっ…そのムカつく顔に一撃叩き込んでやったというのに」


 「そうだな。全くダメージは無かったが」


 「お前の頑丈さは異常だ。生身を蹴り飛ばした感触ではなかった。まるで金属鎧の上から蹴った感触だった」


 「これで分かっただろ? 実力の差が」


 「だが! 私は諦めない!」


 「お好きにどうぞ」


 ディアナと話しながら大通りを歩き、荷車の倉庫に向かった。


 担当のギルド職員に許可を貰い、指定された場所に俺とディアナが討伐した魔物の死体を放出していく。


 といっても、前回のように様々な魔物の死体があるわけではなく、ミスリル・ゴーレムの死体だけだが。


 「凄いな! これだけのミスリル・ゴーレムを討伐してくるとは。ところで、ミスリル・ゴーレムは全てギルドに売却するってことでいいのか?」


 「どういう意味ですか?」


 「見たところ、アレンはミスリル製の武器や防具を所持していないみたいだし、これだけの素材があれば、武具屋に持ち込み武具を製作してもらったほうがいいと思ってな」


 確かに。衣服は着替えがあるから問題ないが、革鎧はボロボロだしな。


 「ありがとうございます。では、ミスリル・ゴーレム一匹は武具製作用でこちらで確保しておきます」

 

 「了解だ」


 素材検分兼解体所を後にし、受付から名前が呼ばれるまでロビーで待機する。


 「明日は先に武具屋に寄るべきだな」


 「オススメの武具屋があるのか?」


 「私がこの大剣の整備などをお願いしている店がある。紹介してやろうか?」


 「そうだな。特に行きたい店があるわけでもないし、お願いするよ」


 「ハハハ! 任された!」


 「アレンさーん!」


 名前を呼ばれたので受付に向かい、冒険者の証明書ライセンスをカウンターの上に置く。


 受付嬢は証明書ライセンスを手に取り、驚いた表情をする。


 「ほ、本当にDランクなんですね」


 「はい」


 「今受付嬢の間でアレンさんは有名ですよ。Dランク冒険者なのにBランクの魔物をたくさん討伐してくるって」


 「それは光栄ですね」


 「おそらくギルドマスターの耳にも入ると思うので、アレンさんなら昇格間違いないですよ!」


 「ありがとうございます」


 「すみません、話が長くなりました。こちらが今回の報酬になります。お確かめください」


 トレイに乗せられた虹金貨9枚と真銀貨8枚を受け取り、その場を後にする。


 「ディアナ、お前の報酬だ」


 「てっきり私の報酬もお前のものだと、言い張ると思っていた」


 「金に困っていれば、そうしたかもな」


 ディアナに硬貨を渡し、宿屋に帰った。


 

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