第134話 善人を装った鬼畜アレン
さて、ベイジル男爵の処遇をどうするか。
女性冒険者や街娘を消耗品扱いする悪趣味については、側から見れば罰せられるべきクズだが、俺も同類なので特に思うことはない。
それに男爵自身を殺しても、冒険者や傭兵と違い、所持スキルの数もレベルも高くなさそうなので、特に興味が湧かない。
それよりは、元Bランク冒険者と現役の傭兵である私兵のほうがまだ期待できる。
(結論、男爵は放置でいいか)
いや待てよ。
スキル的には美味しくないが、貴族であれば身分相応に財産を抱えているだろう。
お金はいくらあっても邪魔にならないし、根刮ぎ奪ってやるか。
「なぁ、次の男爵との取引はいつなんだ?」
「今夜だ」
それはそれは、実にタイミングがいいな。
「ということは、ある程度女を確保しているのか?」
「あぁ」
「その女達は何処にいるんだ?」
「地下牢だ」
では、あとで地下牢に案内してもらうとしてーーー
「男爵と取引があるなら、まだお前を殺すわけにはいかないか」
まぁ俺自身が【変装】でアレクサンダーを装い、ここで待ち伏せするのも一つの手だが…正直面倒臭い。
俺自身、あまり策を巡らせ事に臨むのは得意ではない。寧ろ、実力で物事を決めるほうが単純だし好ましい。
せっかく隷属化したわけだし、ここはアレクサンダーに頑張ってもらおう。
「アレクサンダー、命令だ。今夜の取引相手ーーーベイジル男爵と共する私兵を生け捕りにしろ」
「分かった」
「男爵の捕縛は問題ないだろうが、私兵は生きてさえいれば状態は問わない」
「分かった」
「よし! では、地下牢に案内してくれ」
1階に降り、酒瓶が並べられているカウンターの横にある扉を開けると、地下へと続く階段があった。
階段を降りた先には鉄格子で囲われた牢があり、冷たい床に横たわる女や俯き体育座りする女が10人ほどいた。
服装は様々だが、皆絶望し諦観した表情を浮かべていた。
「ここにいる女達は商品なわけだよな? お前や部下達が手を出すことはないのか?」
「男爵との取引が終わるまでは、手を出すことを禁止している」
「それで全員が素直に従うのか?」
「過去に商品に手を出した奴はいた。そいつは見せしめに、部下達全員の前で嬲り殺した」
「ルールを厳守しなかった奴はこうなるぞと、部下達の前で示したわけだ。じゃあ男爵が購入せず、売れ残った女はどうしたんだ?」
「滅多にないが、売れ残った女は部下達の慰み者になってもらい、最終的には殺していた」
ハハハ! 俺と同類の奴がたくさんいて、俺は嬉しいよ!
「うーん…この女達はどうするかな…」
隷属化から解放し、恋人や家族が待つ居場所に帰すことは簡単だが…ただで帰すのは、俺が納得できない。
俺は正義の味方でも勇者でもないからね。
アレクサンダー達との戦闘で少し気分が昂っているし、ここから解放するためのお礼として、一回くらいなら抱いてもいいよね。
「こんにちは」
「…」
一番手前にいた女に挨拶してみたが返事はなく、生気のない目で見つめられるだけだった。
「貴方もこんな冷たく薄暗い場所で死ぬのは嫌ですよね? もし私のお願いを聞いて頂けるなら、この場所から解放してあげますよ」
俺の丁寧で優しい言葉を聞いて、虚な目に生気が宿った。
「ほ、本当ですか?」
「必ず恋人や家族の元へお帰しすると約束します」
「あ、ありがとうございます!」
「私のお願いを聞いて頂けますか?」
「は、はい! 何でも聞きます!」
はい、言質を頂きました!
「私からのお願いはたった一つです。貴方を一度だけ抱かせて頂けませんか?」
「えっ…」
女は予想外のお願いに理解が追いつかず、ただ私を見つめる。
「どうでしょうか?」
「そ、それは…できません。私には最愛の夫がいるので…」
「確かに最愛の夫を裏切るような行為はできないでしょう。貴方のお気持ちもよく分かります。ですが、ここで貴方が勇気ある決断をできなければ、一生夫の元へ帰ることはできませんよ?」
「…」
「ここから解放されれば、また一緒に買い物をしたり食事をしたり、いくらでも愛を育むことができます。貴方のたった一度の自己犠牲で、幸せな未来を掴むことができるのです」
「わ、私は…」
「ただ私も無理強いはいたしません。あくまでも貴方が決めることです。さぁどうしますか? ここで絶望を味わい一生を終えるか、それとも最愛の夫のためにも、勇気ある自己犠牲で幸せな未来を掴むか」
女は少しの間、自身の中の葛藤と悩み続け、覚悟の決まった目線で俺に返答する。
「…分かりました」
「勇気があり美しい貴方ならそう決断されると確信しておりました。アレクサンダー、ベッドのある部屋に案内しろ」
「…あぁ」
アレクサンダーが俺のことを、畏怖するような視線で見て階段に向かって歩き出す。
鉄格子の牢の中から彼女を1人連れ出し、案内された部屋の前でアレクサンダーを待機させ、恥じらう彼女の身体を貪った。
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