第131話 赤目の闇梟VSアレン

 翌日。


 自然な目覚めで起床した俺は、汗と体液でベトベトになった身体を洗い流すため、浴室に向かった。


 眠気も身体もスッキリしたところで身支度を整え、まだ眠っているディアナを起こしにいく。


 「おい、ディアナ。起きろ」


 一度声をかけた程度では起きないため、2度3度と声をかけ何度も身体を揺すり、なんとか起こそうとする。


 「ん、うーん…はぁ…」


 寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こし、大きく伸びをするディアナ。


 「早く風呂に入って支度をしろ。冒険者ギルドに寄って依頼を確認して、Bランク狩場に向かうぞ」


 「あ、あぁ分かった。ただその前に、アレンに言っておきたいことがある」


 頬を紅潮させ布団で身体を隠しながら、ディアナは俺を見つめる。


 「なんだ?」


 「その…もう少し優しくしてほしい。私は冒険者の中でも体力があるほうだが、アレンのそれは異常だ。これでは私の身体がもたない」


 「あれだけ大きな声で喘ぎ気持ちよさそうに腰を振っていたくせに、おかしなことを言う」


 「お、おい! それは言うな!」


 「すぐに慣れる。我慢しろ」


 ディアナの意見を一蹴し彼女が風呂に入っている間、ソファで寛ぐ。


 ディアナが風呂から上がり身支度を整えている間に、店員が朝食を運んできた。昨夜の夕食時と違い、最初から一皿の量が多かった。


 朝食を済ませた俺達は宿屋を後にし、冒険者ギルドに向かった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「今回は〈キュウキの翼〉の依頼が無いのか」


 掲示板には〈ミスリル・ゴーレム討伐〉の依頼しか貼り出されていなかった。


 既に他の冒険者が依頼を受けたのか、あるいは依頼自体を貼り出していなかったのか。


 それについて特に考えることなく、〈ミスリル・ゴーレム討伐〉の依頼書を手に取り、受付に向かった。


 手続きを終えて冒険者ギルドを出たところで、ギルバートを含めた数人に声をかけられた。


 「おはよう、ギルバート。案内するにはまだ早いと思うが?」


 「アレン、ついてこい」


 「まぁ待て、そう慌てるな。何処へ何しに行くかを教えろ」


 「俺達と戦うため、Bランク狩場までついてきてもらう」


 なるほど。


 俺が襲撃してくるのを待つまでもなく、奴等から仕掛けてきたか。


 俺のことを放置すれば奴等の面目丸潰れだし、わざわざ相手の準備が整うまで待たずに、人数的有利を生かして迅速に始末したほうが楽だよな。


 特に断る理由はないな。


 「ディアナ、今日は別行動だ」


 「なっ!? 私も協力するぞ!」


 「俺は1人で奴等と戦うと宣戦布告したし、正直お前は足手纏いだ」


 「私が足手纏いだと!?」


 「まだお前に死なれては困るし、1人で戦うほうが楽だからな。ディアナ、宿屋で待機していろ。これは命令だ」


 「くっ…」


 「用事が済み次第、お前との勝負の時間は設けるから安心しろ」


 「話は終わったか?」


 「待たせたな」


 「では行くぞ」


 その場にディアナを置いていき、ギルバート達とBランク狩場に向かった。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 ギルバート達の後ろをついて歩き、林の中を進むこと10分。突然、一本も木が生えていない開けた場所に出た。


 そして少し離れた向かい側に、数十人の格好は冒険者の者達が立ち並んでいた。


 ここまで案内してくれたギルバート達も向こう側に行き、先頭に立つ筋骨隆々の大男が喋り始める。


 「お前が俺達〈赤目の闇梟〉に喧嘩を売ったアレンか?」


 「あぁそうだ。お前がボスのアレクサンダーか?」


 「答える必要はないだろ。ギルバートを隷属させ、俺のことを既に聞いているんだろ?」


 「そうだな」


 「ギルバートからDランク冒険者だと聞いていたが…それはあり得ないな。最低でもBランク以上の実力はあるみたいだな」


 まだ戦ってもいないのに、何故あり得ないと一蹴したんだ?


 「何故そう思うんだ?」


 「俺の【心眼】でお前の所持スキルが視れないからだ。上位の実力者になるほど【心眼】や【隠蔽】のレベルは高くなるし、ある程度の強さは分かる」


 そういえば、〈ヴァルダナ〉で行動を共にしたポーターのブライアンさんも同じようなことを言っていたな。


 「それに、あのディアナも倒したんだろ? 俺達と同等の奴が何故Dランク冒険者なのかよく分からねぇが、この人数相手に勝てるつもりか?」


 「ディアナと同等のお前が1人、ギルバートと同等の奴が20人、それ以下が30人ならなんとかなるだろ」


 「舐めた口を叩く野郎だ。ディアナがいれば、まだ善戦はできたかもしれねぇのに」


 「さて、もう話は十分だろ。さっさと戦おう」


 「そうだな…っと、ギルバートの隷属化を解いてもらおう」


 「あぁそうだったな。それで? 隷属化の解放はどうすればいい?」


 「スキル名の後に「解放」と言えばいい」


 「【奴隷隷属】解放。これで問題ないな?」


 「よし、お前ら。奴を殺せ」


 「「「「「おう!」」」」」


 



 

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