第126話 一日最高報酬額、更新
街へ戻り、冒険者ギルドに向かって大通りを歩いている最中、ギルバートとディアナに注意をしておく。
「ギルバート、ディアナ。命令は2つだ。1つは隷属化について一切他言無用。2つめは私語の解禁だ。あぁそれと、何か怪しい言動や行動があった場合、お前達だけでなく周りの者達も殺すことになるから、慎重にな」
「「…」」
「おいおい、私語は解禁したはずだが? 返事くらいしたらどうだ?」
「…分かりました」
「必ずお前を捕まえ、牢に叩き込んでやる」
「ディアナは威勢がいいな」
冒険者ギルドの横に建てられた荷車の倉庫に向かい、担当のギルド職員に声をかける。
「初めまして、私はアレンと申します。魔物の死体を出したいので、中へ入れてもらえますか?」
「魔物の死体を出す? あぁ、収納魔道具の類を持っているのか?」
「はい」
「そりゃ凄いな! この街の冒険者でも所持している奴は極一部だ。運が良かったな、兄ちゃん。さぁ、入ってくれ」
許可を得たので中に入り、指示された場所に魔物の死体を出していく。
「どれどれ…キュウキ3匹、マンティコア4匹、ジェヴォーダン11匹、ガーゴイルの魔石4個、ミスリル・ゴーレム4匹。しかも、素材の状態がめちゃくちゃいい! これだけ良い状態なのは、初めて見るな」
「これで全部なので、失礼します」
「おう! また頼むぜ!」
素材検分兼解体所から冒険者ギルドのロビーに移動し、受付から名前が呼ばれるまで、依頼掲示板を眺めることにした。
ギルバートやディアナには行動制限をしてないが、素直に俺の後ろをついてきた。
ただ2人とも上級冒険者なので、それなりに知り合いがいるようで、それぞれが他の冒険者に声をかけられていた。
「おう、ギルバート! ん? サイラスやデイモン、デニスの姿が見当たらないが?」
ギルバートは一度アレンの方へ視線を向け、尋ねてきた知り合いに言葉を返す。
「あいつらは先に飲みに行っている」
「なるほどな。今日の戦果はどんな感じだ?」
「確か…ジェヴォーダン2匹、マンティコア1匹ってところだな」
「俺達は今日は鉱山でミスリル・ゴーレムと戦ったんだが…あいつは厄介すぎるな。鉄壁すぎて倒すのに時間がかかるんだよ」
「…本来ならそうなんだろうな」
「ん? 本来なら?」
「いや、気にしないでくれ。それで、明日はどうするんだ?」
「明日は鉱山には行かない。比較的倒しやすいジェヴォーダンを狙うとするよ」
「そうか。頑張れよ」
「おう! そっちも頑張れよ! またな!」
一方ディアナはーーー
「ディーアナッ! 今日も1人で狩場に行っていたの?」
ディアナに抱きつく小柄な女性。
「あ、あぁ…そうだ」
「ん? なんか元気ない? もしかして怪我したの!?」
「ハハハ! 私がBランク狩場で怪我をするわけないだろう! ほらこの通り!」
「うーん…目立った怪我も無いし、大丈夫そうだね。ディアナが強いのは知ってるけど、女の子なんだから怪我には注意しないとダメよ!」
「傷は戦士の勲章だぞ?」
「もう! ディアナはそればっかり! 戦士である前に1人の女の子なんだから、気をつけて!」
「わ、分かったよ」
「ねぇディアナ! 今度一緒に買い物しようね! 次会った時、声かけるから!」
「楽しみにしておく」
「またね!」
ギルバートとディアナのやり取りを【盗聴】で聞いていたが、怪しい言動はなかった。
まぁ釘は刺しておいたし、俺の実力を目の当たりにしている2人なら、周囲を巻き込むのを避けるのは当然か。
意外だったのはギルバートだな。
犯罪組織に所属している奴が真っ当な交友関係を築いているとは。裏表を上手く使い分けているのかな?
「アレンさーん!」
名前を呼ばれたので受付に向かい、カウンターに自分の
受付嬢が俺の
「失礼ですが、この数の魔物をどうやって討伐されたのですか?」
「1人で倒しました」
「他の上級冒険者の方とパーティーを組んだりせずに…ですか?」
「そうです」
「うーん…」
Dランク冒険者が格上の魔物を1人で数十匹討伐したと言っても、信じることは難しいか。
俺がどのような手段で、あるいは違法な手段で手に入れたのか、受付嬢は考えているのだろう。
仕方ない、証人を連れてこよう。
先程の場所で佇む2人を連れて受付に戻る。
「私の実力はこの2人が証言してくれます」
受付嬢は戸惑いながら、2人に質問する。
「えっと…Bランク冒険者のギルバートさんとAランク冒険者のディアナさんですね。アレンさんがBランクの魔物を1人で討伐してきたと仰っているのですが、それは本当ですか?」
「間違いない」
「こいつの実力だけは本物だ」
「分かりました。お二人がそう仰るのであれば、信じましょう。こちらが今回の報酬になります。お確かめください」
受付嬢から差し出されたトレイには、虹金貨13枚と真銀貨6枚、白金貨5枚が並べられていた。
Dランクダンジョンの報酬を軽く上回る額に、表情には出さず内心でほくそ笑む。
「失礼します」
ニヤけるのを我慢しつつ、2人を連れて冒険者ギルドを後にした。
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