第125話 【奴隷隷属】の獲得条件
濛々と立ち昇る土煙の中で立ち上がる黒い影。土煙が晴れると、頭部に幾つもの亀裂が入り、所々欠損しているミスリル・ゴーレムが佇んでいた。
高レベルの耐性スキルを備えているため、同じBランクの魔物でも耐久力に違いがあり、打撃一発では仕留められないようだ。
まぁだったら、【身体強化】と【闘気練装】によるバフを発動した状態ならどうだろうか?
ー【身体強化】ー
ー【闘気練装】ー
巨腕を振り上げるミスリル・ゴーレムの頭部まで【跳躍】し、拳を鋭く振り抜く。
大きな衝撃音とともに頭部が粉砕され、その巨体がゆっくりと地面に倒れる。
ドシンッ!
『【水魔法耐性】Lv.7にUPしました』
『【光魔法耐性】Lv.6を獲得しました』
バフで強化した状態であれば、打撃一発で倒せるようだ。1発目は金属塊を殴ったような確かな感触があったが、2発目は拳に伝わる感触が軽かったような気がする。
でも殴った感触からして、ディアナのほうが硬かった。ミスリル製で各種耐性スキルを備えているが、所詮はBランク。
Aランク冒険者であり、おそらく各種耐性スキルも備えているディアナのほうが強いのは明らかだ。
「おっと、危ない」
ミスリル・ゴーレムの死体を回収しようと一歩踏み出すと、頭上から急速に接近する気配を捉える。
咄嗟に飛び退くと、先程までいた場所に水の砲弾が衝突し、地面が大きく揺れる。
「全く…どんな威力してんだよ」
上を見上げると、1匹のガーゴイルが飛んでいた。今の攻撃は、間違いなく奴のスキルによるものだろう。
【心眼】でガーゴイルの所持スキルを見ながらーーー
「そうそう、【地穿水砲】ってスキル。今の攻撃はそれだろう?」
言葉が通じるわけではないが、頭上にいるガーゴイルに問いかける。返事の代わりに、先程と同じ水の砲弾が放たれる。
ずっと空中を旋回し、こちらの様子を窺っている。【跳躍】で届く高さなので打撃で倒してもいいが、耐性スキルの無い魔法攻撃で仕留めるとしよう。
「
勢いよく放たれた
『【地穿水砲】Lv.5を獲得しました』
先程倒したミスリル・ゴーレムの死体とガーゴイルの魔石を回収する。そのまま鉱山へ登ることはせず、付近の奴等を討伐することにした。
ここでも同様、幾つかのパーティーと遭遇した。
特に物理と魔法の両方に耐性のあるミスリル・ゴーレムに悪戦苦闘しており、その隙にガーゴイルに襲われているパーティーもいた。
そろそろ陽が沈む時間になり、後ろで俺に憎々しげな視線を送り続ける2人を引き連れて、初日のBランク狩場を後にした。
『【斬撃耐性】Lv.7にUPしました』
『【刺突耐性】Lv.7にUPしました』
『【土魔法耐性】Lv.7にUPしました』
『【氷魔法耐性】Lv.7にUPしました』
『【爪術】Lv.7にUPしました』
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
陽が傾き夕暮れの空の下、Bランクの魔物が跋扈する林を歩く3人の男女がいた。
先頭を歩くのは、この中でランクが一番低いDランク冒険者でありながら、格上の狩場を散歩するように歩くアレン。
後ろに続くのは、アレンに敗れ隷属化されたBランク冒険者のギルバートとAランク冒険者のディアナ。
ギルバートはアレンに畏怖の感情を抱いていた。
Bランクの魔物をたった1人で容易く倒す実力を見込み声をかけたが、何故か場の空気が張り詰め、戦闘行動に入ったアレンに呆気なく敗北した。
そして無理矢理起こされ、奴の命令に逆らえない自分の状況を理解すると、自分は奴の隷属化を受けていることが分かった。
【奴隷隷属】…基本的にスキルは、反復行動とスキルポイントで習得、あるいはレベル上げを行う。
しかし、【奴隷隷属】は基本的なスキルとは異なり、ある条件を満たすと獲得できるスキルなのだ。
その条件とは、人類種を100人殺すこと。
一般的な冒険者であれば自衛や依頼人の護衛のために、盗賊や野盗を数人程度殺したことがあるくらいだろう。
このスキルの所持率が高いのは、対人戦闘を主とする傭兵や犯罪組織に属する暗殺者が多い。
Dランク冒険者の
ギルバートは拭えない違和感を抱えつつ、アレンの後をついていく。
一方ディアナも隷属化の違和感に気づき、アレンに命令されて周囲を警戒してる時に、【奴隷隷属】の結論に辿り着いていた。
上級冒険者の中でも上位のAランク冒険者であれば、あまり知られていない情報でも知っている。
まさか自分がそうなるとは思っていたかったが、それと同時にアレンは、既に多くの者達の命を奪っているのかと、憤慨した。
隣を歩く男のパーティーを1人で倒し、Aランク冒険者の私を軽く捩じ伏せ、Bランク狩場で一番厄介なミスリル・ゴーレムを打撃で瞬殺する力があるのに…。
これ以上被害者を増やさないためにも、現状を打破し、アレンを捕える必要がある。
ディアナは打開策を考えつつ、アレンの後をついていく。
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