第124話 赤目の闇梟の情報
「やっと落ち着いたな」
地面にうつ伏せに倒れる彼女を見ながら独り言ちる。
BランクパーティーやAランク冒険者との連戦に時間がかかり、この後の事後処理も考えると、今日はあまり魔物を討伐できないかもしれない。
「よし! 気持ちを切り替えてっと」
まずはディアナを起こし魔物の邪魔が入らないよう、周囲を警戒させる。
「おい! 起きろ!」
彼女の後ろ髪を掴み上げ、少し強く頬を叩く。何回か叩くとゆっくりと目を開け、こちらを見つめる。
「さっさと立ち上がって周囲を警戒しろ」
「…お、お前はーーーい、いえ、分かりました。はっ!? な、何だ!? 身体が勝手に動いてしまう!」
ディアナは自分の意思や身体が勝手動いてしまうことに戸惑い、それでも手放した大剣を拾い上げ、周囲を警戒し始める。
「隷属化するとあんな感じになるんだな。自我はあるようだが、命令に意思決定や身体は逆らうことができないようだ」
ま、俺にとっては好都合だ。
自我も無くただの人形になってしまっては、苦しみ踠く表情が見れないからな。ただ単に犯すのはつまらない。
次に〈滅殺の光剣〉のリーダーだったギルバートを起こす。
「おい! 起きろ!」
先程の彼女と同じように起こすと、理解の追いついていない彼に命令をする。
「さっさと立ち上がれ。そして、お前の元仲間だった奴等から所持品を回収するのを手伝え」
「き、貴様はーーーはい、分かりました。な、何だ今のは!? 口が勝手にーーー」
戸惑いながら立ち上がり、所持品を回収しに行くギルバート。
俺も回収に向かい、特徴のない両刃斧と大盾を〈収納の指輪〉に入れ、少数の硬貨をマジックポーチに入れる。
そして、3人の死体を一箇所に集めて燃やし始める。
手伝ったギルバートが殺意の篭った目で見てくるので、「跪け」「俺の質問に答えろ」と命令し、聞きたかったことを尋ねる。
「お前達の拠点について教えろ」
「ハ! 誰が貴様なんかーーー私達の拠点は、浮浪者や犯罪者、孤児が身を寄せるスラム街にある。ク、クソ! 何故口が勝手に」
「はぁ…質問の答え以外の発言を禁ずる。それで、お前達の所属する組織の名前は?」
「〈赤目の闇梟〉」
「その組織の活動内容は?」
「主に冒険者を狙い、所持スキルや容姿が優れている者を捕縛し、貴族や奴隷商に売却している」
「人数とボスの名前は?」
「人数は50人。ボスの名前はアレクサンダー」
「1人1人の強さはどれくらいなんだ?」
「Cランク冒険者相当が30人、Bランク冒険者相当が20人」
おいおい、凄いな!
一犯罪組織が保有していい戦力じゃないぞ。
「随分と戦力の高い犯罪組織のようだが、その理由は?」
「ほとんどが現役の冒険者だから」
まぁそうか。〈ヴァルダナ〉で壊滅させた〈執拗な毒蛇〉のNo.2だって、冒険者稼業と犯罪稼業を両立していたらしいからな。
上位の狩場を保有する街となれば、犯罪組織の奴等の実力も高くなると考えたほうがいいな。
「それだけの実力者を纏めるボスは強いんだろ? どれくらい強い?」
「強い。現役のAランク冒険者」
ディアナと同等の実力者か。彼女が相手にしてくれないと愚痴っていた同ランクの者には、アレクサンダーも含まれているのかな?
ディアナと戦ってAランク冒険者の強さは大体分かったし、そこまで大きな差がないのであれば、アレクサンダーも敵ではないかな。
さて詳細は聞けたが、まだ拠点を襲撃するつもりはない。夕方まで時間はあるし、ミスリル・ゴーレムの依頼も達成したいからな。
「ギルバート、ついてこい」
「はい」
そして、周囲を警戒していたディアナにも声をかける。
「ディアナ、お前もついてこい」
「はぁ!? ふざけーーーはい。クソ!
まただ! 一体私はどうなっているんだ!」
耳障りなので、ディアナには「私語厳禁」と命令しておいた。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
道中キュウキ1匹、マンティコア3匹、ジェヴォーダン1匹を倒し、鉱山前に到着した。
「あれがミスリル・ゴーレムとガーゴイルか」
鉱山の麓を鈍い光沢と輝きを放つミスリル・ゴーレムが鈍重な動きで歩き、空中を石像ーーーガーゴイルが飛んでいる。
それじゃ、早速戦ってみようか。
っと、その前にーーー
「ギルバート、ディアナ。自衛目的の戦闘を許可する」
積極的に戦闘に参加するのはダメだが、ここで死なれても俺が困るため、自衛目的の戦闘のみ許可した。
命令を言い終えると、目の前のミスリル・ゴーレムに向かって駆け出し、大きく【跳躍】する。
最初に試すのは打撃。
同ランクのジェヴォーダンやキュウキは一発で倒せたが、こいつはどうなのか?
特に強化もしていない素の筋力で、ミスリル・ゴーレムの頭部に拳を振り抜く。
周囲一帯に響き渡る衝撃音とともに、ミスリル・ゴーレムが地面に倒れる。
俺は濛々と立ち昇る土煙の向こう側を注視していた。
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