第122話 予想外の展開
「何故、隠れ潜みこちらの様子を窺っていた貴方の存在を把握していたかは、教えられません。それで、もう一度聞きますが、貴方はこいつらの仲間ですか?」
「そんな雑魚どもの仲間だって? そんなのこっちから願い下げだよ!」
…少し面倒という程度で大した苦戦もしなかった奴等ではあるが、Bランク冒険者相当の実力はあったと思う。
そんな上級冒険者を雑魚呼ばわりするこの女は、どれほどの実力者なのだろうか?
こちらから自己紹介をして、せめてランクだけでも聞いてみるか。
「私はアレン、Dランク冒険者です。貴方は
?」
先程の奴等もそうだったので、冒険者の
彼女は俺の
「私はディアナ、Aランク冒険者さ」
彼女ーーーディアナの
まさか同じ上級冒険者でも上位に位置するAランク冒険者だったとは。それなら、この上位狩場で単独行動をしている理由にも説明がつくな。
「それにしても、この狩場で単独行動していて、Bランクパーティーを1人で倒せる程の実力があるのに…実力にランクが伴っていないのは何で?」
まぁ当然そう思うよな。
「それはここに来るのが初めてだからですよ」
「…確認だけど、そのランクってことは今までの狩場にCランクやBランクの狩場が無かったんだろ?」
「そうですね」
「へぇ…じゃあ、どうやってそこまで強くなれたんだい?」
容姿や所持武器を見るに脳筋って感じだけど、意外と鋭い質問をしてくるな。
まぁ、正直に答えるつもりはないけど。
「勿論、教えることはできません」
「ま、素直に教える馬鹿はいないか。なら、少しアレンの実力を試させてもらうよ!」
肩を竦ませたと思ったら、急に殺気を剥き出しにして、目前に迫っていた。
(なるほど、【縮地】か)
それに白く揺らめくような靄が身体中を覆っているため、【闘気練装】も発動しているようだ。
俺は上段から振り下ろされる大剣を短剣で受け止めることなく、後方に飛び退いて躱した。
地面には蜘蛛の巣状に亀裂が入り、土煙が舞う。
「アハハハ! 今の一撃を躱すとはやるねぇ!」
土煙の向こうから豪快に笑いながら、大剣を肩に担いだディアナが出てくる。
「さぁ! まだまだいくよ!」
心底楽しそうに猛攻を仕掛けてくるディアナ。それに反して、俺は回避に専念する。
何故回避するのかというと、ディアナの大剣を【鑑定】したからだ。【鑑定結果】は〈真銀鉱魔の大剣〉という名称だったので、この大剣はミスリル製なのだ。
もしかしたら、Aランク冒険者の筋力とミスリル製であれば、〈毒刃刺殺の短剣〉が破壊させるかもしれない。
そのように考えたため、現状に繋がるわけだ。
ただ、このままだと面白くないので彼女のご希望通り、俺の力を示すことにした。
ー【闘気練装】ー
鋭く振り下ろされる大剣の側面に拳を合わせ、軌道を逸らす。素早くディアナの懐に入ると、脇腹に拳打を側頭部に回し蹴りを叩き込む。
数回地面を跳ね、すぐに態勢を立て直すディアナ。しかし、大剣を地面に突き刺し、地面に膝をついたまま動かない。
少しその状況が続くと、ディアナは徐に立ち上がる。そして、その真っ赤な髪を掻き上げると、豪快に笑いだす。
「アハハハ! 今のはめちゃくちゃ効いたよ! まさかこの私が地面を転がり、一瞬意識が飛ぶなんてねぇ!」
何だかよく分からないが、ディアナの表情は純真無垢な子供のように無邪気だった。
「満足して頂けましたか?」
「あぁ…これほどのダメージと高揚感はいつぶりかな? Bランクの奴等は相手にならないし、同じAランクの奴等は戦おうともしない。…心底つまらなかった」
「…」
「でも、それも今日で終わりさ! 今目の前に私よりも強い奴がいる! こうして巡り会えたのは運命だ!」
なるほど。ディアナは戦いに生き甲斐を見出す生粋の戦闘狂というわけだ。
しかも、ディアナと同じAランク冒険者が他にもいるらしいので、今後が楽しみだな。
さて、ディアナをどうするかだが…。
「では満足して頂けたようなので、私はこれで」
殺して所持スキルを奪うことに後ろ髪は引かれるし、体格も大きく筋肉質ではあるが美女だし、無理矢理犯すのも悪くないが…。
ディアナの無邪気さや戦闘狂なところを気に入ったので、見逃すことに決めた。
こんな気持ちを抱いたのは、転生して初めてかもしれない。
「ハハハ、アレン。つれないことを言うな。私はお前と行動を共にすると決めたんだ」
ん? 今何て言った?
思わず振り返り、ディアナに言葉の意味を尋ねる。
「それはどういうことですか?」
「言葉通りの意味だよ。アレンと共に狩場やダンジョンで魔物を討伐する。そうすれば、私は何度でもアレンに勝負を挑むことができるからな」
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