第121話 様子を窺っていた女
『【身体強化】Lv.6にUPしました』
『【斬撃強化】Lv.6にUPしました』
『【打撃強化】Lv.5にUPしました』
『【疾走】Lv.6にUPしました』
『【剛力】Lv.6にUPしました』
『【絶技】Lv.6にUPしました』
『【金剛】Lv.6にUPしました』
『【酩酊耐性】Lv.5にUPしました』
『【火魔法耐性】Lv.6にUPしました』
数回地面を跳ねて木幹に衝突したデイモンは、微動だにしなかった。【強欲】の通知が聞こえたことで、致命傷だったのが分かった。
「クソッ!」
デイモンが再起不能になったことを確認し、舌打ちするギルバート。残りは、長剣を所持したギルバートと大盾を所持したサイラスだけだ。
この中で生け捕りにし、【奴隷隷属】でこいつらの詳細な情報を吐かせるのは、リーダーであるギルバートに決めている。
しかし、攻撃役のギルバートを無視してサイラスを仕留めようとしても、隙を狙って攻撃してくるはずなので、正直面倒だ。
そうなると、先にギルバートを行動不能にしてから、サイラスを始末したほうが邪魔者もいなくなるし、楽だな。
狙いをギルバートに定め駆け出す。
俺の片手の短剣をギルバートは両腕に力を込めて受け止めており、もう片方の短剣を捌くことができない。
それをサイラスが受け止めるので、辛うじて戦闘が成り立っている。ただ、2人とも防御するのに精一杯で、攻撃に転じることはできないでいた。
「はぁ…またか」
少し面倒なのが、サイラスのスキルだ。今もギルバート長剣を弾き、手加減した拳打で無力化を狙うと、勝手に意識がサイラスに向いてしまう。
確実にサイラスが何かしらのスキルを発動して、俺の行動を邪魔しているに違いない。
だったら、さらに攻撃力と速度を強化し、2人の陣形を崩してやるか。
ー【身体強化】ー
ー【闘気練装】ー
「オラァ!」
先程よりもキレと威力が増したことで、短剣を受け止めたギルバートは目を見開き、あまりの威力に呻き声を上げる。
「ぐっ!」
素早くもう片方の短剣で長剣を弾き、手加減した一撃を無防備な胴体に叩き込もうと一歩踏み出すが、意識がサイラスに引き寄せらる。
こうなることは分かっていたので、サイラスの構える大盾に強烈な蹴りを叩き込む。
威力を殺しきれず、大盾ごと地面を転がるサイラスからギルバートに視線を向け、一気に無力化を狙う。
首元を狙う攻撃を中断し、脇腹を殴打。思わず蹲るギルバートの後ろ首に手刀を放ち、気絶させた。
ー【奴隷隷属】ー
対象に意識がない場合、強制的に隷属化するので、これでギルバートは俺の言いなりだ。
「さて、攻撃役がいなくなってしまいましたが…これからどうしますか? サイラスさん」
「ク、クソ! ウォオオオ!」
大盾を前面に向け、無謀な突撃をするサイラス。しかし、突然大盾を投げ捨てると、俺の身体が動かなくなる。
この感じは以前、Dランクダンジョンでゴブリン・ジェネラルと戦った時と似た現象だ。
(なるほど、【威圧】か)
動けないことをいいことに、容赦なく顔面や胴体に拳や蹴りを叩き込んでくる。しかし、そこまでダメージを負う程の威力ではない。
「気は済みましたか?」
拳を掴み、抑揚のない平坦な声で問いかける。
「クソ! 離しやがれ!」
この状況でも生意気な口を叩けることに感心し、掴んだ拳を引き寄せ、下顎を拳で強打する。
浮き上がった頭部を掴み、顔面に膝蹴りを叩き込み、確実に殺した。
『【挑発】Lv.5を獲得しました』
『【打撃強化】Lv.6にUPしました』
『【雷魔法耐性】Lv.6にUPしました』
『【風魔法耐性】Lv.6にUPしました』
『【盗聴】Lv.5にUPしました』
よし、制圧完了っと!
あとはこいつらの所持品を回収し、ギルバートを尋問するだけだな。
…ただ、その前に。戦闘中にずっと気になっていたことが1つある。
「それで、貴方はこいつらの仲間ですか?」
反応がある場所へと向き、隠れ潜みこちらの様子を窺っていた何者かに声をかける。
「アハハハ! これは驚いたね! 何で私に気付けたんだい?」
豪快な笑い声とともに姿を現したのは、長身の美女。
身長は180〜190センチメートル、真っ赤な長髪をストレートに伸ばし、褐色の肌をしている。
腕や足は筋肉が盛り上がっており、腹筋もシックスパックに割れている。女性らしい身体つきではないが、防具の上からでも分かるほど、巨乳で巨尻だ。
そして、その体格に見合った大剣を所持しており、纏う雰囲気は猛獣のそれだ。
当然、【心眼】で所持スキルを視ることはできず、【気配感知】や【魔力感知】にも反応がない。
佇まいから実力者だと分かるが…女は1人だった。
(他の感知スキルにも反応が無いし、俺と同じでソロなのか?)
獰猛な猛獣のような女が、果たして味方なのか敵なのか、俺はいつでも戦闘行動を取れるようにしつつ、会話を始めた。
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