第119話 近寄るパーティー
「グルルル!」
目の前には、純白の翼が特徴的なキュウキが牙を剥き出しにして、俺を威嚇している。
その大きな翼を羽ばたかせ、空を飛ばれると面倒なので、【縮地】で一気に距離を詰める。
キュウキから見れば、少し離れたところにいた俺が一瞬で目の前に現れたように感じるだろう。
目前で俺が拳を振り上げていることに理解が追いつかないまま、頭蓋骨を粉砕されて、絶命した。
『【跳躍】Lv.7にUPしました』
亀裂が蜘蛛の巣のように広がっているが、綺麗な状態の死体を〈収納の指輪〉で回収する。
「あと2匹くらい討伐しておくか」
再度、【探索】で近くにいるキュウキの反応を探り、移動を開始する。
その強靭な顎で俺の頭部を噛み砕こうとするジェヴォーダンを避け、腹部を蹴り上げる。
そして、背後から後頭部を狙う2匹目を躱し、頭部に掌を合わせ、勢いよく地面に叩きつける。
3匹目の下顎を蹴り上げ、今まで隙を窺っていたキュウキの奇襲を【跳躍】して躱し、【空踏】で空中を足場にして急降下し、頭部に拳を振り抜く。
全ての死体を回収し移動していると、2組目の冒険者パーティーを発見した。男だけのパーティーのようだが、キュウキ相手に苦戦しているようだ。
同ランクの者からすれば、地上を駆ける素早さや鋭い爪の攻撃は厄介みたいだ。それに、空中からの急降下で頭部を狙われて、危険な場面もあった。
彼等の所持スキルは【心眼】で視れないため、最低限Bランクくらいの実力はありそうだが…先程のパーティーよりは弱そうな印象だ。
特に手助けしたりもせず、その場を離れる。
周囲を警戒しつつ歩いていると、右前方から飛来するものを後方倒立回転で回避し、地面に突き刺さる飛来物を見る。
地面に紫色の細い針が突き刺さり、小さく細く煙が立ち昇っている。この複数の針による攻撃は、スキルによるものだろう。
(確か…【毒針斉射】だったか)
針が飛来してきた方向から姿を現したのは、老人のような人面をした獅子の魔物ーーーマンティコアだった。
実際にこの目で見ると、立派な鬣や巨体、特徴的な尻尾は凶悪だし、捕食者とは真逆の表情を浮かべる顔が、より一層恐怖や不気味さを掻き立てる。
「こんな気持ち悪い魔物は初めてだ」
蠍のような尻尾を上に向かって伸ばし、再度一斉に毒針を飛ばしてくる。それを容易く躱すと、【突進】で噛みつこうとしてくる。
軽く【跳躍】し空中で身体を捻りながら、その気持ち悪い顔面に蹴りを叩き込み、吹き飛ばしてやった。
『【暗視】Lv.6にUPしました』
『【毒針斉射】Lv.6を獲得しました』
蹴り飛ばした死体を回収すると、戦闘音を聞きつけて、それぞれ別方向からジェヴォーダンが現れた。
「こいつらは群れず、単独行動だと本で読んだが…タイミングが良すぎないか?」
我先にと襲いかかってくる奴等の噛みつきを飛び退いて躱し、1匹ずつ仕留めていく。
1匹目を拳を振り抜き地面に沈めると、2匹目の噛みつきを背中を転がるように飛び越える。
3匹目の噛みつきを回避し、横顔に蹴りを叩き込む。背後から襲ってきた2匹目は、横顔に裏拳を叩き込み、吹き飛ばした。
『【弱体看破】Lv.7にUPしました』
パチパチパチ
拍手の音が聞こえた方向を見ると、拍手をしている金髪の優男と野蛮そうな外見の仲間がいた。
「凄いね。Bランク魔物を3匹同時に相手取って、余裕で勝利するなんて」
「ありがとうございます」
「いいよいいよ、礼なんて。私が勝手に君のことを褒め称えただけだから。それより、君はパーティーを組んでいないのかい?」
「私は単独行動です」
失礼だと思いながら、ジェヴォーダンの死体を回収しつつ、優男の言葉に返答する。
俺の返答を聞き、優男と仲間達が周囲に視線を巡らせる。
「…どうやら本当のようだね。君の名前とランクを聞いてもいいかな?」
「私はアレンと申します。ランクはDです」
「ん? すまない、私の聞き間違いかもしれないが、今Dランクと聞こえたが?」
「聞き間違いではありません。私はDランクーーー中級冒険者です」
一瞬優男と仲間達は、何を言っているんだこいつは? という表情を浮かべたが、すぐに大笑いしだした。
「アハハハ! アレンは冗談が上手いな。Dランク冒険者がジェヴォーダンを、それも複数相手にして生き残れるわけがないよ。それで、本当のランクは?」
「本当ですよ」
そう言って、ウエストポーチから冒険者の
彼等は
「…本当にDランクのようだけど、先程のアレンの実力を見た後では、それを信じることは難しいな」
「私もそう思います。それで、まだ貴方達の自己紹介がまだなんですが?」
「おっと、それは失礼したね。私は〈滅殺の光剣〉のパーティーリーダー、ギルバートだ」
「パーティーメンバーのサイラスだ」
「同じくデイモンだ」
「デニスだ」
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