第98話 背後から迫るNo.2の凶刃

 2階の廊下からこちらを見下ろす筋骨隆々の大男ーーーカーティスは、ゆっくりと階段を降りながら、野太い声で話しかけてきた。


 「随分と派手に暴れ回ってくれたなぁ…俺の手足となる奴等を全員皆殺しにしやがって。お前は何者だ?」


 「これから殺す奴に名乗る必要はあるのか?」


 「生意気な野郎だ。だったら、何故うちを襲った? 傭兵ギルドで依頼でも受けたか?」


 ん? 傭兵ギルド? 聞いたことがないな。冒険者ギルドと何か関係があるのか?


 「その傭兵ギルドっていうのは初耳だが…この拠点を襲撃したのは、ダンジョン内でお前の部下が俺を殺そうとしたからだ」


 「傭兵ギルドを知らない? まぁ、それは本当かどうか怪しいが。ダンジョン内で活動しているということは、お前は冒険者なんだろ?」


 「あぁ」


 「ただの冒険者が殺されそうになったからといって、犯罪組織の拠点を襲撃するなんて…くくく、くははは! 中々気合いが入ってるじゃねぇか!」


 「おい、もう話は終わりでいいか?」


 「まぁ待て。こいつらを皆殺しにできる、その戦闘力は評価に値する。今回の損失もお前がうちに入れば、寧ろプラスになる。どうだ?」


 「断る」


 「そうか…残念だ。ここでお前を殺すしかなくなった」


 と言い終わると同時に、その見た目からは想像できないほどに素早い動きで、距離を詰められる。


 「死に晒せぇ! オラァ!」


 振り下ろされる巨大な両刃斧。


 それを片手の短剣だけで受け止める俺を見て、カーティスは目を見開く。


 「筋力には自信があったんだがな…こうも簡単に受け止められるとは、驚いたな」


 「そうか? 俺はその図体にしては軽い攻撃に、逆に驚いているよ」


 「ハハハ! 煽るのがうめぇじゃねぇか! だったら、これでどうだ!」


 (急に力が強くなったし、【身体強化】を発動したのか? まぁそれでも、俺の筋力値の方が高いようだな)


 「その程度か?」


 「くそ! 何故押し込めねぇ!」


 「次はこっちの番だな」


 「くっ!」


 俺の言葉に動揺したのか、一度後方に【跳躍】し、距離を取るカーティス。すると、すぐに雄叫びを上げて駆け出し、両刃斧を振り下ろす。


 先程と同様に短剣で受け止めるが、カーティスも分かっていたようで、一撃の重さよりも返しを早くし、手数で押し込めようとしてきた。


 絶え間なく何度も金属音が鳴り響く。


 俺は余裕で捌いているが、カーティスには焦燥と疲労が見える。このままでは、【身体強化】の有効時間も切れるだろし、すぐに均衡は崩れるだろう。


 しかしもう面倒臭いので、渾身の一撃を強引に弾き返し、首を斬り落とすために短剣を横薙ぎに振おうとした時、【熱源感知】と【異臭感知】が背後から迫る反応を捉えた。


 咄嗟に逆の短剣を背後に回し、何者かの攻撃を防ぐ。そして、すぐにカーティスを蹴り飛ばし、何者かに集中する。


 「驚きました。私の奇襲に反応するとは」


 男性なのか女性なのか、判別のつかない声で話しかけてきたのは、黒いローブを身に纏い、深くフードを被った全身黒一色の人間だった。


 「なるほど。貴方がこの組織のNo.2ですか」


 まさか【気配感知】や【魔力感知】に一切反応がなく、忍び寄る足音すら聞こえないとは…。


 「ご存知でしたか。知られた以上は殺すしかありませんね」


 俺の短剣を弾き、鋭く重そうな蹴りで側頭部を狙ってくる。靴先から鈍く輝く刃が見えたので、咄嗟に頭を後方に反らせ回避する。


 反撃しようとするが、回し蹴りが迫っていたので、腕を交差させ防御する。


 (力はカーティス以上か…)


 左右に動きながら、狙いを読ませないように迫り来るNo.2。俺と同じように両手に短剣を携え、猛攻を仕掛けてくる。


 短剣では仕留めきれないと判断したのか、拳や靴に仕込まれた暗器による攻撃も追加された。


 (【体術】もかなりの熟練者だな)


 急に猛攻を辞めて距離を取るNo.2。


 「まぁ、理由は分かっているんだけどな」


 背後から迫る攻撃を【跳躍】して回避する。カーティスが振り下ろした両刃斧が床を破壊する。


 左にカーティス、右にNo.2を見据え、先に実力の劣るカーティスを始末しようと、【身体強化】を発動し距離を詰める。


 カーティスは両刃斧を構え、真横からはナイフが飛来してくる。それを【突進】で加速し回避し、タイミングをずらされたカーティスが強引に両刃斧を横薙ぎに振るう。


 それを短剣で受け止め、再度飛来するナイフをもう片方の短剣で弾き、カーティスの太腿に串刺しにする。


 「うぐぅあああ!」


 太腿に刺した短剣を抜き、両刃斧を握る手首を斬り落とし、流れるように喉元に短剣を突き刺した。


 『【斧術】Lv.5にUPしました』


 『【魔力感知】Lv.5にUPしました』


 『【金剛】Lv.4にUPしました』


 『【酩酊耐性】Lv.4にUPしました』


 『【測量】Lv.2にUPしました』


 『【製図】Lv.2にUPしました』


 『【設計】Lv.2にUPしました』


 『【木材加工】Lv.2にUPしました』


 『【石材加工】Lv.2にUPしました』


 『【建築】Lv.2にUPしました』


 『【心眼】Lv.5にUPしました』


 『【遠視】Lv.4にUPしました』


 『【勘定】Lv.3にUPしました』


 『【記憶】Lv.3にUPしました』


 『【交渉】Lv.4を獲得しました』

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