第90話 階段の途中にある部屋

 俺を殺し、装備や金品を奪おうとした四人の男達を始末した。


 魔法職の男の顔面に突き刺さっている短剣を回収し、身につけているウエストポーチから硬貨を全て奪う。


 「火よ、燃え盛れ、燃焼バーニング


 新たに獲得した【火魔法】で死体を燃やす。


 同様に他の三人からも硬貨を奪い、死体を燃やす。武器は持ち歩くのが面倒なので、この場に置いていく。


 ゴブリンや他の冒険者が有効活用してくれるだろう。


 そして、【探索】で二階層への入口を探しつつ、先程の戦果について考える。


 四人の男達を殺して獲得した新規スキルは全部で五つ。中級冒険者四人分と考えると少ないような気もするが、被っていたスキルが多かったのだろう。


 その証拠に既得スキルのレベルアップはそれ以上だった。


 やはり、魔物よりも人間を殺したほうがスキルレベルも上がるし、それにより能力値も増加するので、美味しいと言える。


 今後も殺意を向けてくる者達や盗賊など、殺すことに理由が必要ない奴等は積極的に殺したほうが最短で強くなれるだろう。


 さて、スキル一覧を表示し、戦闘に役立つスキルがないか確認する。


 「ん? このスキルは役立ちそうだな。詳細説明を見るに、前回のスキル選択の時は見落としていたか」


 スキルポイントを消費してスキルを選択する。


 『【空踏】Lv.1を獲得しました』


 続いて、詳細説明を確認する。


【空踏】Lv.1

 足場の無い空中で屈み、一度だけ【跳躍】できるスキル。方向は自由自在。筋力値+10


※解放条件:【跳躍】Lv.5


 一度だけという制限があるが、空中での立て直しや方向転換が可能になるのは有難い。


 「お! 二階層への入口発見!」


 すぐに駆け出し、道中にいたスライムを【雷魔法】で、きのこの魔物を【火魔法】で倒し、入口に到着した。


 『Lv.26にUPしました』


 『【毒胞子】Lv.4にUPしました』


 早速、上に続く階段を上っていくと、途中で扉を発見した。階段はまだ上に続いているので、この扉の先が二階層ということはないと思う。


 もしかしたら、罠である可能性も考慮し、警戒しつつ慎重に扉を開ける。しかし、いきなり矢が飛来するでもなく、部屋の中央には青白く輝く魔法陣があるのみだった。


 「転移系の罠の可能性もあるか…」


 あるいは、ダンジョンの入口に転移するパターンか。


 今は試すのが怖いので、あとで近くの冒険者に聞いてみよう。


 そのまま階段を上り続けると、所々に木が4〜5本密集して生えている草原フィールドだった。


 周囲で冒険者パーティーと戦う魔物を見ると、ホブゴブリンやハイコボルト、ビッグ・スライムなど、おそらくFランクの魔物だと思われる。


 一階層と同じように冒険者達は入口付近で魔物と戦っている。ちょうどいいので、先程の魔法陣について聞いてみよう。


 近くの魔物と戦闘していないパーティーに声をかける。


 「すみません」


 「…何の用だ?」


 男性冒険者二名と女性冒険者二名のパーティーに声をかけたのだが、皆こちらの一挙手一投足を注視し、警戒心を露わにしている。


 先程の襲撃でダンジョン内は無法地帯ということは理解したので、この警戒心の高さも理解できる。


 「階層を上る階段の途中に魔法陣がある部屋があったのですが、あれは何ですか?」


 「…その魔法陣の上に立てば、一瞬でダンジョンの入口に転移できる」


 「なるほど。それだけですか?」


 「あとは、その部屋で休憩したり、そのまま2〜3日泊まり込む奴等もいる」


 「教えて頂きありがとうございます」


 足早に彼等の元を離れ、奥へと向かう。


 「グギャ!」


 ホブゴブリンが棍棒を振り上げながら迫ってくるので、俺も初めて使用するスキルを発動した。


 ー【闘気練装】ー


 発動すると、全身を白色の靄が包む。


 この肉体強度が強化された状態で魔物を攻撃するとどうなるのか、とても気になるな。


 ホブゴブリンが振り下ろす棍棒を両腕を交差して受け止める。棍棒は真っ二つに折れ、ホブゴブリンが「グギャ!?」と驚く。


 隙だらけの顔面に拳を振り抜くと容易く貫通してしまった。


 「おぉ! 凄いなこのスキル!」


 【身体強化】のように具体的に数値化されていないが、この強化具合は凄い。それに、時間制限もないから、日常生活以外はこの状態で活動したほうがいいな。


 「プギィ!」


 【突進】してきたダッシュ・ボアを片手で受け止め、逆の手で拳を握り振り下ろす。


 ホブゴブリンとダッシュ・ボアがドロップしたのは、それぞれ金貨五枚。


 やはり、魔物のランクが上がり階層が上がると、報酬も増えるようだ。


 「階層が上がるほど、周囲の冒険者に気をつける必要があるな」


 報酬が上がれば狙われる可能性は高くなるし、俺は単独だから、さらに恰好の獲物として狙われる可能性が高くなる。


 必然的に襲撃してくる冒険者の質も高くなるが、俺的にはリスクを承知の上でそいつらを返り討ちにし、さらに強くなれるのだから嬉しい限りだ。


 「ん?」


 左前方から飛来する梟の魔物。〈シュペール〉の林で夜に奇襲してきた魔物だ。


 目前まで迫った梟の魔物を短剣で真っ二つに両断し、硬貨を回収した。


 『【暗視】Lv.4にUPしました』


 

 

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