第83話 GランクからDランクに昇格

 宿屋に戻り、冒険者達で賑わう店内を進み、空いているテーブルに座る。すると、すぐに看板娘の彼女がこちらに駆け寄る。


 「ご来店ありがとうございます! 本日の料理はホーン・ラビットの野菜炒め、キャベジの塩漬け、黒パンです。飲み物はどうしますか?」


 「水でお願いします」


 「分かりました!」


 彼女が料理を運ぶためにテーブルを離れ五分程待つと、料理が運ばれてきた。


 「今日は他のお客さんが食事を終えているので、たくさんおかわりしてくださいね!」


 「分かりました」


 早速、キャベジの塩漬けから食べ始める。特にホーン・ラビットの野菜炒めは食欲がそそられる味付けで、一瞬で食べ終えてしまった。


 (うーん…やっぱり、黒パンは美味しくないな。野菜炒めは白飯等と一緒に食べたい)


 少し食事に不満を抱きながら、それでも空腹には勝てず、おかわりをお願いする。


 その後、彼女からストップがかかるまで、おかわりをし続けた。


 「たくさん食べて頂きありがとうございます! この後は宿泊されますか?」


 「ん? 私は三日前に宿泊の手続きをしていますが?」


 「えっ!? …私は記憶力に自信がありますが、お客さんは初めて見ますよ?」


 俺は三日前に彼女に五日間宿泊することを伝えているはずだが…俺を初めて見る?


 うーん…あ! そうか! 服を購入して着替えたから、あの時とは格好が違う。それに、魔道具で変身して素顔を晒しているから、別人だと思われても仕方ないか。


 「私が最初にここを訪れた時はフードを深く被った怪しい風貌だったので、別人だと思われても仕方ないですね」


 「…あ! そうだったんですね! とても印象が変わったので、気づきませんでした」


 「雰囲気がガラリと変わったので、気づかないのは仕方ないですよ。では、私はこれで失礼します」


 二階へ続く階段を上り、宿泊部屋に向かう。


 剣帯、胸当、籠手、脛当を外し、机の上に置く。服をベットの上に放り投げると、シャワーを浴びに浴室に向かった。


 温かいお湯とボディーソープで日中の狩りで掻いた汗を流す。


 タオルで身体を拭き、ベッドに入る。


 眠る前にスキル一覧を表示し、羅列されているスキルを眺める。


 「お! このスキルは今までスキル一覧に表示されていなかったな」


 俺はそのスキルの詳細説明を確認した後、スキルポイントを消費して、そのスキルを選択した。


 『【闘気練装】Lv.1を獲得しました』


【闘気練装】Lv.1

 闘気を練り上げ、肉体強度を高めることで、物理攻撃力や物理防御力が強化されるスキル。スキルレベルの上昇に伴い、肉体の強化度合が上昇する。筋力値+10、頑丈値+10


※解放条件:【体術】Lv.5


 スキルの選択を終えると、瞼を閉じ眠りについた。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 翌朝。


 窓から差し込む太陽の光で目を覚ます。


 寝ぼけ眼を擦りながら、寝汗を流すためにシャワーを浴びる。


 タオルで身体を拭き、服を着る。


 胸当、籠手、脛当、剣帯を装備し、ウエストポーチとマジックポーチも忘れずに身につける。


 忘れ物がないことを確認すると、部屋を後にする。


 「おはようございます」


 「おはようございます! 朝食は食べますか?」


 「お願いします。それと、あと二日宿泊する予定だったんですけど、今日この街を出立します」


 「分かりました。では、二日分の代金はお返ししますね。また、この街に寄ることがあれば、ここに泊まってくださいね!」


 「はい。その時はお世話になります」


 彼女は一度テーブルを離れると、朝食と一緒に硬貨を持ってきた。


 「本日の料理はキャベジとオークの肉をパンで挟んだサンドウィッチ、野菜スープです。それと、金貨六枚のお返しです」


 「ありがとうございます」


 硬貨の枚数を確認し、朝食を食べ始める。


 また、彼女からストップがかかるまで食べ続け、お世話になった宿屋を後にした。


 冒険者ギルドに入りロビーを見渡すと、テーブルに座るブライアンさんを発見した。


 「おはようございます、ブライアンさん」


 「おはよう、アレン。昨日は疲れただろ? 体調は大丈夫か?」


 「問題ありません。それより、ブライアンさんこそ大丈夫でしたか? その…頬に掌の跡がついてますけど」


 「嫁を心配させたのは俺が悪いからな、仕方ねぇよ。それで、昨日言いかけていたことはなんだ?」


 「職業について書かれた本がある本屋を教えて頂きたいなと思いまして」


 「どの職業に就くか迷っているのか?」


 「というよりは、どのような職業がどれだけあるのかを知りたいって感じです」


 「なるほどな。ただ、俺は本屋になんて行ったことねぇからな。大通りを歩いている奴に聞いて回るしかねぇな」


 「そうですね」


 「ちょうどいいから、俺も職業について勉強するか。それじゃ、行くぞ」


 「すみません、少し待っていてもらえますか? 証明書ライセンスの交換をしてきますので」


 「お! もう昇格か?」


 「はい」


 「たった三日で昇格とは凄いな! ここで待ってるから、行ってこい!」


 早速受付に向かい、受付嬢に証明書ライセンスを差し出しながら、用件を伝える。


 「証明書ライセンスの交換をお願いします」


 受付嬢は証明書ライセンスを確認すると、新しい証明書ライセンスをカウンターの上に置く。


 「こちらの金製のプレートがDランク冒険者の証明書ライセンスになります」


 おぉ! これで俺もDランク冒険者の仲間入りだ!


 「ありがとうございます」


 受付を離れ、ブライアンさんの元へ戻る。


 「お待たせしました」


 「気にするな。それで、ランクは?」


 「Dランクです」


 「ハハハ! すぐに追いつかれちまったな。まぁ、それだけの実力があるから、当然だな。よし! それじゃ行くか!」


 「はい!」


 俺とブライアンさんは冒険者ギルドを後にすると、ちょうど目の前を通りかかった男性に声をかけた。




 

 

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