第79話 ハイオーク三匹と戦闘

 負傷した男性冒険者がハイオークから逃亡してきた道を走る。


 【探索】ハイオーク


 (反応は三つ、一箇所に固まったまま動きはなし)


 そして、数秒程でハイオークと負傷した男性冒険者のパーティーが戦った場所に辿り着いた。


 その戦場の中心でハイオーク三匹が何かを取り囲むように固まっており、周囲には飛び散った血痕と地面に突き刺さった武器があった。


 「既に奴等の【異臭感知】の範囲内にいるんだが、こちらには見向きもしないか。なら、今の内に奴等の所持スキルを視させてもらおう」


【ハイオーク】

 ・【体術】Lv.4

 ・【異臭感知】Lv.4

 ・【打撃耐性】Lv.3

 ・【斬撃耐性】Lv.2

 ・【刺突耐性】Lv.2

 ・【精力絶倫】Lv.4

 ・【悪臭】Lv.2


 オークと比べて所持スキルと個数に変化はなし、それぞれのスキルレベルが高いだけの上位種だ。


 下位種であるオークとは何度も戦った。所持スキルに変化がないということは、戦闘方法も大きく変わらないということ。


 あとは、ステータスで張り合えるかどうか。


 まずは【身体強化】は無しで行く。


 俺は背中を無防備に晒すハイオークに向かって駆け出した。すると、三匹のハイオークが顔を上げて、背後に振り返る。


 「ブモォオオオ!」


 迫り来る俺を敵と認識し、その巨体が立ち上がる。相手を怯ませ圧し潰すような雄叫びを上がると、その剛腕を振り上げる。


 俺の身体を地面に叩きつけるために振り抜かれた巨大な拳を回避と同時に間合いを詰めるために【縮地】で加速する。


 そして、ハイオークの目線の高さまで【跳躍】し、その額に向けて全力で拳を振り抜く。


 「オラァ!」


 ドシンッ!


 ハイオークは後頭部から地面に倒れ、その衝撃で周囲に轟音が響いた。


 山林の木々から一斉に羽搏く鳥達。


 (ハハハ! 全力で振り抜いたが、骨が砕ける感触はなかった。中々に頑丈だな。筋力値には自信があったんだが…)


 「「ブモォオオオ!」」


 仲間が地面に叩きつけられたことに激怒する二匹のハイオーク。左のハイオークが両手を組み、俺を叩き潰す意思を込めて振り下ろしてきた。


 すぐに三回ほど後方倒立回転をし、ハイオーク達から距離を取る。直後に地面が大きく揺れたので、屈み地面に手をついてバランスを維持する。


 地面の揺れが収まり、二匹のハイオークがこちらに迫り来る。見た目通りの移動速度なので、こちらから距離を詰める。


 先に接敵したハイオークが筋肉の塊である剛腕を振り抜く。その巨大な拳の側面に拳を合わせて軌道をずらす。


 すぐ横の地面を叩いた剛腕を素早く駆け上がり、頭頂部に向けて全力で拳を振り下ろす。


 ドシンッ!


 膝をつき地面に倒れゆくハイオークの後頭部に着地すると、すぐに前方に【跳躍】する。


 俺を捕獲しようとしたハイオークの顔面が目前に迫る。ハイオークが悪足掻きとして大きく口を開けて、俺を食べようとするので、咄嗟に両手で短剣を握り、眼球に狙い定め投擲する。


 「グ、グモォオォォォ…」


 短剣が眼球に突き刺さったまま悶え苦しむハイオーク。すぐに着地と同時に【跳躍】し、頭頂部に踵落としを叩き込む。


 ドシンッ!


 「さて、ハイオークがどの程度の強さなのかは把握できたし、一気に決着をつけるとしよう」


 立ち膝の体勢で短剣が突き刺さった眼球周りを押さえ、悶え苦しむハイオークに近づき、【跳躍】して短剣を握り、一気に引き抜く。


 「グモォオオオ…」


 短剣を引き抜かれ出血している眼球を押さえながら蹲るハイオーク。


 このハイオークは視界が奪われ、戦闘続行が不可能だろう。


 俺にはこのハイオークの苦しむ姿を楽しむ気持ちもなければ、甚振る趣味もないので、早くその痛みから解放させるように、短剣で首を斬り落とした。


 『【悪臭】Lv.4にUPしました』


 後ろのハイオークの様子を確認するために、背後に振り返ると同時に後方倒立回転で横薙ぎに振るわれた剛腕を回避する。


 「ん? 頭が変形しているな。陥没でもしているのか」


 ハイオークの頭頂部が変形しており、その表情から激痛であることが分かる。


 「グモォオオオ!」


 ハイオークが両手を組み勢いよく振り下ろす。


 俺は前方に駆け出し攻撃を回避し、【跳躍】してハイオークの頭上を取る。


 「もう一度、喰らいやがれ!」


 陥没して変形した頭頂部に拳を振り抜くと、頭蓋骨を粉砕し拳が貫通した。


 残り一匹。


 ハイオークの頭部を貫通した拳を引き抜き、最後の一匹に視線を送ると、左手で顔面を押さえ、右手で斧を所持していた。


 最初に戦ったパーティーの誰かが所持していた武器だと思うが、武器を手にするとは面白い。


 残念なのはハイオークが【斧術】を所持していないことだ。


 短剣を両手に握り、一気に駆け出す。


 「ブモォオオオ!」


 身の丈に合っておらず、技量も伴わない大振りの斧に掴まり、斧腹に乗る。


 ハイオークは斧を振り抜いた場所に俺がいないことに驚き、隙だらけになっている。


 俺は斧腹の上から【跳躍】し、隙だらけの頸部に向かって短剣を振り抜いた。


 全てのハイオークを討伐し終えたので、短剣に付着した血を振り払い、ハイオーク達が固まっていた場所を確認しに向かった。


 

 

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