第77話 Dランクダンジョンの特徴

 「あぁ、構わないぜ。ただ、俺は実際にダンジョンに入ったことがないから、あまり詳しいことは分からないが…それでもいいか?」


 「はい」


 「ダンジョンは円柱型の巨大な塔で、高さは軽く城壁を超え、天を貫くほど高いらしい。ダンジョン内には狩場と同じように魔物が生息し、他にも攻略を阻む罠や力と富を与える宝箱があるみたいだ」


 「なるほど。魔物や罠のような命を落としかねない危険性はあるけど、宝箱には相応の報酬がある…富や名声を求めて、ダンジョンに挑む冒険者は多そうですね」


 「そうだな。それと、ダンジョンは大陸中にあり、G〜Sランクのダンジョンが確認されている。ランクが上がるにつれて、ダンジョン内の階層も増えるみたいだ。Dランクダンジョンは四十階層まであるらしいぞ」


 「その場所に腰を据えて、長い時間をかけてダンジョンに挑む必要がありますね」


 「本来はそうなのかもしれないが、ある程度レベルを上げたら、次のダンジョンに挑む冒険者が多いそうだ」


 「まぁそうですね。相応の報酬があるなら、ランクが上のダンジョンのほうが宝箱の中身は良さそうですしね」


 「俺もそう思うな。そして、俺が一番面白いと思ったのが、ダンジョン内に生息する魔物についてだ」


 「Gランクダンジョンはゴブリン、Fランクダンジョンはホブゴブリン、Eランクダンジョンはゴブリン・ファイターやゴブリン・マジシャンが、ランク相応の魔物がいるんじゃないんですか?」


 「違うみたいだぜ。なんと! DランクダンジョンにはDランク相当のゴブリンやホブゴブリンがいるらしい!」


 Dランク相当のゴブリン? 全く想像がつかないのだが…。


 「何故、そのゴブリンがDランク相当だと分かるんですか?」


 「実際に戦った感覚と所持するスキルのレベルが高いからだそうだ」


 「なるほど。そのゴブリンはDランク相当のステータスがあり、【棍棒術】のレベルも3以上あるということですか」


 「面白そうだろ? ハイオークと同等の強さを持つゴブリンがどのような戦い方をするのか気になるよな! ハハハ!」


 「確かに、とても気にーーー」


 「アレン、前方からゴブリン・ファイターとゴブリン・マジシャン、オークが二匹だ」


 「分かりました」


 せっかくブライアンさんにダンジョンの話を教えてもらっていたのに…邪魔しやがって。


 まぁ、狩場で談笑している俺らのほうがおかしいのは分かるけどよ。


 俺は短剣を剣帯に戻し、迫り来るオークに向かって駆け出す。


 「ブモォオオオ…」


 一匹目のオークが振り抜いた拳と俺の拳が衝突し、オークの巨大な拳が粉砕される。拳を押さえ蹲るオークの頭頂部に踵落としを叩き込み、二匹目のオークの巨大な拳を掌で受け止める。


 二匹目のオークが受け止められた拳をそのままに、逆の拳で俺の脇腹にフックを叩き込もうとしてくる。


 そのフックを蹴りで弾き返し、【跳躍】して顔面に膝蹴りを叩き込む。


 二匹のオークが地面に地面に沈んだので、先にゴブリン・マジシャンを倒すために、【雷魔法】を詠唱する。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 バリバリバリィィィ


 雷撃ライトニングがゴブリン・マジシャンの額を貫く。その直後に振り抜かれたゴブリン・ファイターの拳を掌で受け流し、下顎に拳を叩き込み、頭部を鷲掴みにし地面に叩きつけた。


 「アレン、短剣を貸してくれ。俺も解体を手伝う」


 「ありがとうございます」


 ブライアンさんに短剣を一つ渡し、二人で手分けして魔石を取り出す。


 解体作業が終わり、再び歩き出す俺とブライアンさん。


 「グゥオオオ!」


 ワイルド・ベアが右前方から【突進】してくるので、【縮地】で一気に距離を詰めて頭部に短剣を振り下ろす。


 ワイルド・ベアの頭部が縦に真っ二つに両断され、大量に出血しながら絶命した。


 『【爪術】Lv.5にUPしました』


 続いて左前方から三匹のオークが現れる。中央のオークに向かって【雷魔法】を詠唱する。


 「雷霆よ、敵を射抜く矢となれ、雷矢サンダー・アロウ


 ゴブリン・マジシャンと同じように額を雷矢サンダー・アロウで貫かれ倒れるオーク。


 それと同時にすぐに駆け出し、左のオークが振り抜いた拳を【跳躍】して躱し、首を斬り落とす。


 着地と同時に横薙ぎに振るわれたオークの剛腕を体勢を低くして躱し、前方に【跳躍】した勢いを利用し、後頭部から地面に叩きつける。


 次はゴブリン・ファイターとゴブリン・マジシャン、ジャンプ・ディアが二匹ずつ現れた。


 「風よ、敵を両断する鎌となれ、風鎌ウィンド・スラッシュ


 風鎌ウィンド・スラッシュが先頭を走っていたジャンプ・ディア二匹の身体を真っ二つに両断した。


 一匹目のゴブリン・ファイターが振り抜いた拳を掌で受け流し、顔面に拳を振り抜く。

 

 二匹目のゴブリン・ファイターの側頭部を狙った蹴りを腕で受け止め、鳩尾に抉るように拳を叩き込み、下がった頸部に向かって短剣を振り下ろした。


 『Lv.24にUPしました』


 『【棍棒術】Lv.5にUPしました』


 ゴブリン・マジシャン二匹がそれぞれ【土魔法】と【風魔法】で攻撃してきたので、土弾ランド・バレットを拳で砕き、風鎌ウィンド・スラッシュを体勢を低くして躱す。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 「雷霆よ、敵を射抜く矢となれ、雷矢サンダー・アロウ


 【雷魔法】を二回詠唱し、二匹のゴブリン・マジシャンの額を貫く。


 俺は解体作業をしながら考える。


 今朝の激闘によるレベルとスキルレベルの上昇を体験した後だと、今の戦闘が退屈な作業に感じる。


 まだ、【打撃耐性】【斬撃耐性】【刺突耐性】【悪臭】【土魔法】【風魔法】のレベルは上げられそうだが、格下の魔物を倒し続けるのはつまらない。


 他の上位狩場に行き、上位種を倒したほうが合理的だよな…。


 ブライアンさんにはお世話になったから申し訳ないけど、明日か明後日には本屋で職業についての本を読んだら、この街を移動しようかな…。


 

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