第74話 急遽、予定を変更

 ブライアンさんの案内で洋服屋に訪れていた。


 「いらっしゃい! ブライアンじゃないか! 今日は奥さんと一緒じゃないんだね。ん? その青年は誰だい?」


 出迎えてくれたのは女性の店主。


 赤色の長髪をシュシュのようなもので一つに結び、ポニーテールにしている。瞳の色は髪色と同じ赤色、目鼻立ちから勝気そうな印象を受ける。


 女性にしては身長も高いので、元いた世界ならモデルとして活躍していてもおかしくないほどだ。


 ただ、スレンダーな印象を受けるモデルと違い、とても大きく揉み心地の良さそうな果実を持っている。


 (この世界の女性は美形で発育の良い人が多いのだろうか?)


 今まで出会った女性が皆そうだった。勿論、男性も体格が良く漢らしくてかっこいいのだが、同性だからあまり興味がない。


 「こいつはアレン、Gランクの新人冒険者だ。今日はアレンの洋服を買いに来たのさ」


 「ブライアンさんのご紹介の通り、私はアレンと申します。よろしくお願いします」


 「冒険者にしては礼儀正しい青年だね。私はエイダ、布地を裁断し縫合して洋服を仕立てる洋服屋を営んでいるよ。それで、どんな服が欲しいんだい?」


 「特にこれといった要望はありません。この革鎧の下に着る一般的な服が欲しいです」


 「何着欲しいんだい?」


 「とりあえず…三着でお願いします」


 「分かったよ」


 エイダさんはハンガーに掛けられた服が所狭しと並べられている店内を歩き回り、白色のチュニックと薄茶色のブレー、白色の下着を手に持って戻ってきた。


 「下着も一応持ってきたよ。それとも、必要ないかい?」


 「お気遣いありがとうございます。下着も購入します」


 「それじゃ、そこの試着室で着替えておいで。違和感があるようなら、サイズの違うものを持ってくるよ」


 「はい」


 試着室に入り、着替えを覗かれないようにカーテンを閉める。


 フード付きの黒色のロングコートを脱ぎ、胸当、籠手、脛当を外す。最後にインナースーツを脱ぎ、エイダさんに手渡された服に着替える。


 「サイズはピッタリだな。それに、インナースーツと違って通気性が良く解放感がある。動きやすいし、特に服に拘りはないから、この服で決まりだな」


 購入することを決めたので、服の上から胸当、籠手、脛当を装備し、試着室から出る。


 「それでいいのかい?」


 「はい。同じものを二着頂けますか?」


 「分かったよ」


 「ハハハ! 良かったな、アレン! これで怪しくて近寄り難い風貌の冒険者から、未来に希望溢れる好青年の冒険者に変わることができた。他のパーティーから勧誘があるかもな!」


 「現状、困っていることはないのでパーティーを組む気はありませんよ。分からないことがあれば、先輩であるブライアンさんに聞けばいいですしね」


 「ハハハ! 嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか!」


 ブライアンさんが俺の肩に腕を回し、本当に嬉しそうに笑う。


 そこへ服を手に取り戻ってきたエイダさんがブライアンさんに注意する。


 「全く…アレンから離れな。あんたのむさ苦しさが移っておっさん臭くなったらどうするんだい」


 「エイダ…酷いこと言うなよ…」


 ブライアンさんは少し傷つきながら、俺の肩に回していた腕を離す。


 「それより、そのアレンの抱えているロングコートとインナースーツは上質なものだね。どこの店で買ったんだい?」


 「えっと…それは…」


 「…何か言えない事情でもあるのかい?」


 「このロングコートとインナースーツ、革靴、面頬は盗賊の拠点にあったものなんです」


 「なるほどね」


 「なっ!? アレン、お前盗賊退治もしてたのか! …いや、今更だったな。アレンの強さなら問題なく迎撃できるだろうな」


 「それで、アレン。そのロングコートとインナースーツを売却する気はあるかい?」


 そうだな…正体を隠す必要も無くなったし、服も着替え含めて調達できたし、高く買い取ってくれるなら売却してもいいか。


 「いくらで買い取りますか?」


 「そうだね…素材は上質そうだけど、所々汚れや傷があるね。これなら…白金貨八枚でどうだい?」


 「いいですよ。その金額から服の購入額を差し引いてもらえますか?」


 「毎度あり!」


 エイダさんがロングコートとインナースーツを持ったままカウンターに向かい、硬貨を手に取り戻ってきた。


 「白金貨七枚と金貨二枚と銀貨五枚だ」


 受け取った硬貨の枚数をしっかりと確認し、マジックポーチにしまう。


 「ありがとうございました。では、失礼します」


 「またな、エイダ。次は嫁と子供と来るからよ」


 「あんたは来なくていいよ!」


 エイダさんの店を出て、エイダさんの言葉に傷つき落ち込んでいるブライアンさんに声をかける。


 「ブライアンさん、予定追加です。この後、雑貨屋と靴屋にも寄りたいと思います」


 「その黒色の面頬と革靴を売却するのか?」


 「そうです。その後、昼食は食べ歩きができるものを食べて荷車の倉庫に向かい、本日二度目の狩場に行きましょう」


 「おう!」


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る