第73話 武器と防具を新調

 俺は直立不動となり、デイモンさんに胸当や籠手、脛当を金具やベルトを動かして、調整してもらっている。


 「よし! 最後にこの革靴を履いて、感触を確かめてくれ」


 「分かりました」


 革靴のサイズは俺の足の大きさにぴったりで、その場で軽く跳躍したり、歩き回ってみても違和感は全くない。


 「どうだ?」


 「革靴は全く違和感がないですね」


 「それはよかった。次は胸当、籠手、脛当の感触を確かめてくれ」


 「はい。では、ブライアンさんとデイモンさんは少し離れていてください」


 「おう」


 「店内には商品が並べられているから、あまり激しく動くなよ」


 「勿論です」


 二人が俺から離れたのを確認すると、仮想敵としてオークを想像し、鳩尾に正拳突き、左右の脇腹にフック、下顎に掌底、側頭部に回し蹴りを打ち込む。


 オークの振り抜く拳撃を半身になって躱したり、横薙ぎに振るう剛腕を体勢を低くして躱したり、回避行動も違和感がないか確かめる。


 「ふぅ…胸当、籠手、脛当が戦闘行動を阻害する感覚はないですね」


 「それじゃ、防具はこれで決まりだな」


 「はい」


 「…ブライアン、アレンは本当にGランクの新人冒険者か? 素人の俺でも疑問を抱くくらいに、アレンの動きは凄かったぞ」


 「冒険者の証明書ライセンスはGランクだが、実力は中級冒険者に匹敵するほどだ。今日も早朝からEランク狩場で魔物を討伐してきたばかりだからな」


 「まじかよ!? とんでもない逸材だな。お前が気にいるわけだ」


 「デイモン、次は短剣だ」


 「おう」


 デイモンは武器が陳列されている商品棚から一つの短剣を持ってきた。


 「これは一般的な革鎧を斬り裂き、金属鎧を貫くワイルド・ベアの鋭い爪を加工して製作した〈狂熊剛爪の短剣〉だ。ほれ、持ってみろ」


 「…今まで大剣を使っていたので、とても軽く感じます」


 「その背中に背負っている大剣に比べれば軽量だが、斬れ味と頑丈さは負けてないと思うぜ」


 実際に短剣を振るって確かめてみる。


 大剣とは違い一撃の威力は無くなったが、俺の筋力値と短剣自体が軽量なので、取り回しが鋭く早くなった気がする。


 それに、一撃の威力は手数でカバーすればいいので、俺はこの短剣を購入することに決めた。


 「武器も防具も購入します」


 「毎度あり!」


 「アレン、短剣は一つでいいのか?」


 「私は一つだけ購入する予定でしたが、もう一つあったほうがいいですか?」


 「そのほうがいいだろう。戦闘中に破損した場合には予備となるし、【二刀流】を所持しているなら、単純に手数が増えるしな」


 「確かにその通りですね。デイモンさん、同じ短剣をもう一つ購入します」


 「分かったぜ。〈狂熊剛爪の短剣〉二つと防具一式購入してくれるなら、剣帯をサービスしとくぜ!」


 「ありがとうございます」


 「それと、その大剣と長剣はどうする? 売却するなら買い取るし、これからも使う予定があるから整備してやるが?」


 「そうですね…特に使う予定はないので、売却します」


 「おう! じゃあ、少し大剣と長剣の状態を見せてもらうぜ」


 「どうぞ」


 「…大剣のほうはあまり状態が良くないな。所々、刃毀れしている箇所もある。長剣は状態が良い。しっかりと手入れされていたのが分かる」


 大剣はオーガストを殺して奪ってから、整備などせずに使っていた。だから、状態が悪くても当然だ。


 しかし、長剣はアドルフを殺して奪ってから、あまり使う機会がなかった。特に整備もしてないけど、状態が良いということはアドルフがしっかりと手入れをしていたからだろう。


 「それじゃ、この大剣と長剣の買取額は白金貨一枚と金貨三枚だ」


 「分かりました」


 「それで、その短剣二つと胸当、籠手、脛当の防具一式で白金貨五枚と金貨四枚になる」


 「では、購入額から買取額を差し引いて、白金貨四枚と金貨一枚を支払えばいいですね?」


 「お、おぉ…計算が早いな」


 俺はマジックポーチから白金貨四枚と金貨一枚を取り出し、デイモンさんに渡す。


 「アレン、武器と防具の整備が必要になったら、俺の店に来い。すぐに新品同然に修復してやるからよ!」


 「分かりました」


 「ブライアン、お前もたまには俺の店に顔を出せよ」


 「気が向いたらな。あまりむさ苦しくて厳ついお前を見るのは嫌なんだがな」


 「ったく! それは俺のセリフだ!」


 「行くぞ、アレン」


 「では、失礼します」


 「おう! またな!」


 デイモンさんの店を出ると、ブライアンさんがこの後の予定を聞いてくる。


 「まだ昼頃だな。アレンはこの後どうするんだ?」


 「洋服屋に寄りたいと思います。その後はステータスを確認して、また狩場に行こうかなと」


 「ハハハ! 若い奴は羨ましいな! 早朝にあれだけ暴れたのに、まだ暴れ足りないのか?」


 「そんなことはないですけど…」


 「なら、俺も一緒に行っていいか?」


 「別にいいですけど、疲労は大丈夫ですか?」


 「全く問題ないぜ。魔物と戦闘したのはアレンだけだし、俺はほとんどその場から動いてないしな。それに、稼げる時に稼がないとな」


 「分かりました。では、洋服屋に寄り服を購入した後、昼食を食べてから狩場に行きましょう」


 「ビーフステーキをあれだけ食べたのに、昼食も食べるのか?」


 「余裕で食べれます」


 「ハハハ…食べ盛りってやつか。よし! 洋服屋も俺が案内してやるよ!」


 「お願いします」


 俺とブライアンさんは談笑しながら、洋服屋に向かった。

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