第70話 一日で稼いだ大金
荷車の倉庫から冒険者ギルドのロビーに向かう。
まだ、時間帯は太陽が昇りきる前の午前中であり、他の冒険者達も依頼を熟している最中なので、ロビーはとても閑散としている。
ブライアンさんと一緒にテーブルに座り、受付から俺の名前が呼ばれるまで待つ。
「アレン、受付で報酬を受け取り分配した後、魔道具店に案内しようと思うが…疲れが溜まっていたり、お腹が空いていたりはしないか?」
「疲労は全く問題ありません。ただ…お腹はかなり空いています」
「ハハハ! あれだけの魔物を相手にすれば、腹は減って当然だな。魔道具店に行く前に、俺のオススメの店に連れていってやるよ!」
「ありがとうございます。ちなみに、どのような料理を提供してくれるお店何ですか?」
「それは、着いてからのお楽しみだ!」
「分かりました」
「アレンさーん! 受付まで来てください!」
「呼ばれたので、行ってきます」
「おう」
俺の名前を呼んだ受付嬢の元に向かい、自分の
受付嬢は俺の
「こちらが報酬の真銀貨九枚と白金貨二枚になります。お確かめください」
トレイに乗せられた硬貨の枚数を数え、問題ないことを確認する。
「お手数おかけしますが、真銀貨八枚と白金貨十二枚に両替して頂けますか?」
「分かりました。少しお待ちください」
そして、両替をして頂いた後も硬貨な枚数を数え、問題ないことを確認した。
「アレンさん、こちらが以前、冒険者ギルドに所属する冒険者と職員がご迷惑をおかけしたお詫びでございます。この度は大変失礼しました」
受付嬢が謝罪と共に別のトレイに乗せた硬貨を差し出す。
(これが…虹金貨か…)
「確かに受け取りました。では、失礼します」
受付を後にし、ブライアンさんの座るテーブルに戻り、報酬を分配する。
「今回の報酬は真銀貨九枚と白金貨二枚でしたので、こちらがブライアンさんの報酬になります」
「真銀貨四枚と白金貨六枚か…俺が現役の頃でも、一日でこれほどの大金を稼いだことはない。アレン、ありがとう」
「ブライアンさん、それはお互い様ですよ。ブライアンさんのサポートが無ければ、ここまで稼ぐことはできませんから。では、ブライアンさんのオススメのお店に行きましょう」
「おう!」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「ここが俺のオススメの店だ!」
ブライアンさんに促されて店内に入る。
手前には大きな丸テーブルと木幹を輪切りにしたような椅子が並べられていて、奥には店主を囲むカウンター席があるのみ。
早速、カウンター席に座り、ブライアンさんが店主に料理を注文する。
「ビーフステーキ一キログラムを二つ」
「おう」
ん? 聞き間違いか? 一キログラム?
「ブライアンさん、今一キログラムって言いましたか?」
「あぁ、言ったぜ。ここのビーフステーキはとても美味しいから、楽しみにしとけ!」
「分かりました」
少しの間、ブライアンさんと狩場での戦闘について話していると、目の前に料理が運ばれてきた。
「よし、アレン! 一口食べてみろ」
「はい」
ナイフとフォークを使いビーフステーキを一口サイズに切り分けて、口に運ぶ。
「う、美味い!」
「ハハハ! めちゃくちゃ美味いだろ!」
「とても柔らかくて、噛むたびに肉汁が溢れてきて…とても幸せです」
「そこまで喜んで食べてくれるとはな! たくさん食べていってくれ!」
店主、本当にたくさん食べていいんですね?
「おかわりお願いします。すぐに食べ終わると思うので!」
「おう! 任せときな!」
俺はお金のことなど気にせずに、ビーフステーキを無我夢中で食べ始めた。
しかし、十〜十五枚くらい食べ終えた時に、店主から待ったがかかる。
「美味しそうに食べているところすまないが、これでビーフステーキは終わりだ」
「す、凄い食べっぷりだったな…」
「そうですか…とても美味しかったです。また、食べに来ます!」
「おう! 待ってるぜ!」
その後、ブライアンさんが奢ると言ってくれたが、それは断った。
その稼いだお金は俺のためじゃなく、奥さんと子供に使ってほしいと思ったからだ。
お店を後にし訪れたのは、ブライアンさんが知る魔道具を取り扱うお店。
左右に並ぶ棚や中央の机には見たことがない形状をした魔道具が綺麗に並べられている。
盗賊の拠点で見た光源魔道具や着火魔道具、送風魔道具など、様々な魔道具があるようだが、俺の目的の物は見つからない。
「アレン、目的の魔道具は見つかったか?」
「いえ、見つかりません」
「俺も見つけられなかった。ここは店主に聞いて見るべきだな」
「そうします」
カウンターでこちらの様子を伺っていた男性の店主に話しかける。
「すみません。ある魔道具を探しているのですが」
「どのような魔道具でしょうか?」
「自分の姿形を変える魔道具です」
「自分の姿形を変える…ですか。そうですね…自分の思い描く容姿を想像し、魔力が続く限りはその姿を維持する魔道具があると聞いたことはあります。しかし、当店では扱っておりません」
「分かりました。ありがとうございます」
カウンターを後にし、店の外で待っていたブライアンさんのところに戻る。
「どうだった?」
「目的の魔道具は存在するみたいですが、ここには無いようです」
「それは残念だったな。よし! まだ他の魔道具店はあるから、虱潰しに探すぞ!」
「はい!」
ブライアンさんと俺は二軒目の魔道具店に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます