第66話 三箇所目(右方)も殲滅

 「オラァ!」


 ワイルド・ベアの死体を【跳躍】で飛び越え、【突進】してくる一匹目のジャンプ・ディアの頭部に大剣を振り下ろす。


 地面に沈んだ一匹目のジャンプ・ディアの剛角を掴み、右から【突進】してきた二匹目のジャンプ・ディアを蹴り飛ばす。


 蹴り飛ばした感触からして、頭蓋骨を粉砕された二匹目のジャンプ・ディアが三匹目と四匹目を巻き込んで、吹き飛ぶ。


 左から【突進】してきた五匹目のジャンプ・ディアの剛角を大剣を横にして受け止め、下顎を蹴り上げ頭部を鷲掴みにし、地面に叩きつける。


 散乱するワイルド・ベアとジャンプ・ディアの死体を【跳躍】で飛び越え、六匹目のジャンプ・ディアの頭部に大剣を振り下ろす。


 七匹目と八匹目のジャンプ・ディアが左右から【突進】してくるので、左から迫り来る七匹目のジャンプ・ディアとの距離を【縮地】で一気に詰めて、頭部に拳を振り下ろす。


 後ろに振り返り、八匹目のジャンプ・ディアの【突進】を剛角を掴み、押し留める。


 そのまま側頭部を蹴り抜き、八匹目のジャンプ・ディアは頭部を真横に捻られ、絶命した。


 九匹目のジャンプ・ディアが【跳躍】したと同時に俺も【跳躍】し、頭部に踵落としを打ち込み、空中から地面に叩きつけた。


 地面に着地し、十匹目のジャンプ・ディアの【突進】を半身なって躱し、頭部を斬り落とした。


 『Lv.22にUPしました』


 『【跳躍】Lv.5にUPしました』


 「レベルが上がった…あぁ、とても楽しいな!」


 RPGやMMORPGを一度でも経験したことのある人は分かると思うが、レベルがあるならLv.MAXまで上げたくなるのがゲーマーだ。


 レベルが上がった時の興奮は忘れない。


 俺は今、実際に身体に傷がつき、一歩間違えれば命を落とす危険がある中で、戦っているのだ。


 ゲームで俯瞰的にレベル上げをしていた時よりも、今のほうが圧倒的に興奮している。


 常に死と隣り合わせ、生存本能が強く刺激される。


 まだまだ魔物はいる。


 もっと強く! さらに強く!


 三匹目と四匹目のジャンプ・ディアが【突進】してきたので、それぞれ片手で剛角を掴み、へし折ってやった。


 二匹のジャンプ・ディアは剛角をへし折られた激痛で怯み、その隙に三匹目のジャンプ・ディアに拳を振り下ろし、四匹目のジャンプ・ディアの頭部を脇に挟み、力任せに頭部を真横に捻り、殺した。


 俺は視線を土壁ランド・ウォールと反対方向に向け、大剣を強く握り直し、駆け出した。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 一匹目のオークが振り抜いた巨大な拳を半身になって躱し、首を斬り落とす。そして、首を斬り落としたオークの右肩を足場にして【跳躍】し、二匹目のオークの頭頂部に大剣を振り下ろす。


 三匹目の巨大な拳を左手で受け止め、右手で握っていた大剣を手首に突き刺す。


 「グモォオオオ…」


 大量に出血する傷口を押さえ、激痛に悶えるオークを見ながら、独り言を呟く。


 「大剣は大振りで一撃の威力は絶大だが、速度を活かしきれない。そもそも、筋力値には自信があるから一撃の威力を高めるよりも、速度を活かして手数を増やしたほうが殲滅力は上がるかもな」


 俺は大剣を手放し、再度【身体強化】を発動し、四匹目のオークの巨大な拳を掌で受け止めた。


 巨大な拳を力任せに手前に引き、四匹目のオークの頭部が下がる。そのまま下顎に拳を振り上げ、衝撃により頭蓋骨が粉砕した。


 五匹目のオークの巨大な拳を右手で受け止め、左手で肘の骨を粉砕する。そして、膝をつく五匹目のオークの頭頂部に手を置き、後ろから来る六匹目のオークの顎に狙いを定め、蹴り抜く。


 五匹目のオークの頭頂部に拳を振り下ろしとどめを刺すと、七匹目のオークの巨大な拳を半身になって躱し、剛腕を掴み上げる。


 七匹目のオークを背負い投げで地面に叩きつけ、眼下にある顔面に拳を振り下ろす。


 後ろから振り抜かれた巨大な拳を躱し、八匹目のオークの顔面に膝蹴りを打ち込む。


 地面に着地すると同時に後方に【跳躍】する。先程、俺がいた場所は九匹目と十匹目のオークの巨大な拳が地面に叩きつけられていた。


 【縮地】で一気に距離を詰めて【跳躍】し、九匹目のオークの側頭部に回し蹴りを打ち込む。


 地面に着地すると同時に十匹目のオークが振り抜いた巨大な拳を背中を仰け反るようにして【跳躍】し、剛腕に両手をつき、両肩に着地する。


 そして、頭頂部に拳を振り下ろし、とどめを刺す。


 残りは大量に出血している手首を押さえる三匹目のオークと顎の骨を粉砕されて気絶している六匹目のオークのみ。


 激痛と気絶により戦闘続行できない二匹のオークに無慈悲にとどめを刺す。


 『【精力絶倫】Lv.5にUPしました』


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 この【集敵】による激闘も最終局面。


 残りはゴブリン・ファイター五匹とゴブリン・マジシャン五匹。


 ここは一気に決着をつける。


 「風よ荒れ狂い、何物も斬り刻む風鎌の渦巻く暴風に束縛し、血と肉を神に捧げる供物とせよ、風鎌螺旋スラッシュ・スパイラル


 ゴブリン・ファイターとゴブリン・マジシャンを一匹残らず巻き込み、天高く昇る暴風を血に染める。


 吹き荒れる暴風が徐々に勢いを弱め終息した時、周辺は真っ赤に染まっていた。


 ゴブリン・ファイターやゴブリン・マジシャンはワイルド・ベアのようの剛毛も無ければ、オークのような筋肉の鎧もない。


 それに、骨格も小さく、筋肉や脂肪の量も少ない。


 そのため、俺の知力値でも腕や足を斬り落とすことができ、四肢欠損状態になっている。


 運悪く首を斬り落とされた個体もいるようだし、この出血量で生存している確率は低いだろう。


 念の為、生き残りがいないか確認する。


 『Lv.23にUPしました』


 何匹か苦しみ悶えながらも生きていたのでとどめを刺し、その場を後にした。




 


 

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