第65話 ゴブリン・パラゴンに進化

 俺は奥からこちらに走り寄ってくるゴブリン・ファイター五匹とゴブリン・マジシャン五匹に向かって駆け出していた。


 しかし、その途中で無機質な声が脳内に響き、思わず足を止めた。


 『Lv.20に到達したことを確認しました』


 『ゴブリン・ファイター、ゴブリン・ソードマン、ゴブリン・ランサー、ゴブリン・アクサー、ゴブリン・シールダー、ゴブリン・アーチャー、ゴブリン・マジシャン、ゴブリン・パラゴン、全部で八つの進化先を確認しました』


 『現在までの戦闘経験を考慮し、ゴブリン・パラゴンへの進化を開始します』


 「進化するのは嬉しいけど、まだ戦闘の最中なんだよな…仕方ない、まずは土壁ランド・ウォールで時間を稼ぐか」


 「土よ、何物も通さぬ壁となれ、土壁ランド・ウォール


 【土魔法】を詠唱し終わると同時に、身体中から骨が軋む音が聞こえ始める。


 バギバキバキ、ボキボキボキ


 耳障りで痛々しい音が鳴っているが、痛みは全くない。


 今の俺の心を支配するのは戦闘による興奮状態をさらに高める高揚感だ。


 『ホブゴブリンからゴブリン・パラゴンへの進化が終了しました』


 「さて、進化した状態を確認したいが、今は戦闘中だ。お楽しみは宿屋に戻ってからにしよう」


 俺は目前の土壁ランド・ウォールを【跳躍】で軽く飛び越える。


 土壁ランド・ウォールに足止めされているゴブリン・ファイターとゴブリン・マジシャンの集団に向けて、落下の勢いを利用し、大剣を振り下ろす。


 振り下ろされた大剣により、ゴブリン・マジシャン二匹が絶命し、着地と同時に頭部を踏み潰され、ゴブリン・ファイター一匹が絶命した。


 『【土魔法】Lv.4にUPしました』


 『【風魔法】Lv.4にUPしました』


 『【体術】Lv.5にUPしました』


 ゴブリン・マジシャン三匹がすぐに【土魔法】と【風魔法】で攻撃をしようとするが、【魔力感知】で魔法発動の予兆を感知し、【縮地】で距離を詰める。


 一匹目のゴブリン・マジシャンの身体を大剣で真っ二つに両断し、すぐに土壁ランド・ウォールの側面に向かって【跳躍】し、隙を晒している二匹目のゴブリン・マジシャンの首を斬り落とす。


 三匹目のゴブリン・マジシャンの土矢ランド・アロウを手で掴み、粉砕する。


 慌てる三匹目のゴブリン・マジシャンに大剣を振り下ろすと、右からゴブリン・ファイターが振り抜いた拳を掌で受け止める。


 そのまま大剣を手放し、裏拳で一匹目のゴブリン・ファイターの頬を強打する。


 勢いよく土壁ランド・ウォールに向かって吹き飛ぶ一匹目のゴブリン・ファイターを無視し、二匹目のゴブリン・ファイターの蹴りを体勢を低くして躱す。


 二匹目のゴブリン・ファイターの軸足を足払いで崩し、地面に倒れたところで顔面を踏み潰す。


 三匹目のゴブリン・ファイターが振り抜いた拳を半身になって躱し、後ろにいた四匹目のゴブリン・ファイターの側頭部に向かって、回し蹴りを打ち込む。


 三匹目のゴブリン・ファイターの蹴りを左手で受け止め、後ろ足を反時計回りに回転させ、右手で頭部を鷲掴みにする。


 鷲掴みにした頭部を手前に倒し、顔面を俺の膝頭に強打する。


 鈍い音を響かせ、三匹目のゴブリン・ファイターは地面に沈んだ。


 「これで二箇所目の制圧完了」


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 最後の場所に向かうと、魔物達が土壁ランド・ウォールに張り付いていた。


 「土壁ランド・ウォールの損壊具合からして、中にいるブライアンさんに魔物達の攻撃は届いていないな」


 一先ず安心すると、魔物の集団に向かって駆け出し、手前のワイルド・ベアの頭部を斬り落とすと、【跳躍】して土壁ランド・ウォールに飛び乗る。


 『Lv.21にUPしました』


 「土よ、敵を貫き、突き上げろ、土槍衾ランド・ランス


 土壁ランド・ウォールから土槍衾ランド・ランスを形成し、魔物達を遠ざける。


 「水よ、十字槍の雨を降らせ、地上に血濡れた墓標を築け、十字槍雨ランス・レイン


 俺の魔力を消費して、多数の水製十字槍が形成される。そして、降り注ぐ雨のように十字槍が魔物達を襲う。


 幾度のレベルアップにより、知力値も増加している。


 水製の十字槍は魔物達の身体を貫通はしてないが、深く突き刺さっている。


 「雷霆よ降り注ぎ、敵を悉く屠れ、雷雨サンダー・レイン


 雷雨サンダー・レインが水製の十字槍を媒体として魔物達を麻痺させ、行動不能にする。


 しかし、油断はできない。


 時間経過と共に麻痺状態から解放されるので、今の内にできるだけ、とどめを刺す必要がある。


 素早く地上に降り、ワイルド・ベアからの首を斬り落としていく。


 二匹目…三匹目…四匹目…五匹目…。


 すると、麻痺状態から解放された魔物達が動き始めた。


 勿論、これだけ暴れているのだから、標的は俺だ。


 「グゥオオオ!」


 六匹目のワイルド・ベアが【突進】してくるので、頭部に拳を振り下ろし、地面に沈める。


 七匹目のワイルド・ベアがその剛腕を振り下ろし、鋭い爪で攻撃してくるので半身になって躱し、大剣で首を斬り落とす。


 八匹目のワイルド・ベアが俺に噛みつこうとしてきたので、頭部を足場にして【跳躍】し、九匹目のワイルド・ベアの頭部に大剣を振り下ろす。


 十匹目のワイルド・ベアが九匹目の死体を強引に乗り越えて、【突進】してくる。


 その時、背後から八匹目のワイルド・ベアも迫っているのに気付き、八匹目と十匹目が衝突する瞬間に、【跳躍】して躱す。


 「「グゥオオオ…」」


 お互いに衝突し、左右に頭を振り、蹌踉めく二匹のワイルド・ベアとの距離を【縮地】で一気に詰めて、二匹共とどめを刺す。


 「…ワイルド・ベアは殲滅した。次はジャンプ・ディアだ!」


 



 


 

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