第49話 登録
「アレンさん、今回は[ヴァルダナ]の冒険者ギルドに所属する職員と冒険者が大変ご迷惑をおかけしました。彼等に代わり、謝罪させて頂きます」
「謝罪は受け取りました。しかし、冒険者ではない私に対し、無理矢理難癖を付けて、冒険者である彼等が暴力を振るうのはおかしいと思います」
「アレンさんの言う通りでございます。今後、二度と同じようなことが起こらないように、ギルド職員と冒険者に周知徹底させます」
「お願いします」
「それと、謝罪の意味も込めまして、アレンさんに虹金貨一枚をお支払いしたいと思います」
虹金貨は硬貨の中で一番価値の高い硬貨だ。この迷惑料には、口止めの意味も含まれていそうだな。
冒険者が一般人に暴力を振るったと吹聴すれば、冒険者ギルドの印象は悪くなり、信用が無くなる。
魔物が存在している以上、冒険者ギルドが無くなることはないだろうが、市民や商人、貴族から発注される依頼には影響があるかもしれない。
俺も冒険者活動をしていくわけだし、ここは素直に受け取ろう。
「受け取らせて頂きます。私は被害者ですが、冒険者を殺したという印象は広めたくありませんので、お互いに他言無用でお願いします」
「そうですね。そのほうがお互いのためにもなるでしょう」
ギルドマスターはわざとらしい笑顔を浮かべながら了承する。
「それと、あそこの死体についてはーーー」
「私共のほうで処理させて頂きますので、お気になさらず」
「ありがとうございます」
「では、私はこれで失礼します。冒険者の皆様、この死体を処理するのを手伝って頂けませんか? 報酬はしっかりと支払いますので」
ギルドマスターが周囲の冒険者に声をかけ始めたので、俺は受付嬢に向き直る。
「冒険者登録をお願いします」
「は、はい! 分かりました」
受付嬢は慌てつつも、一枚の羊皮紙を手に取り、カウンターの上を滑らせる。
「記入する箇所は名前、性別、年齢、戦闘方法、職業の五つです。もし、代筆が必要であれば、お申し付けください」
「では、代筆をお願いします」
「分かりました。では、お名前を教えてください」
「アレン」
「性別を教えてください」
「男」
「年齢を教えてください」
「…冒険者は何歳以上と規定はありますか?」
「十五歳以上となります」
「それは良かった。ちょうど、十五歳になったばかりですので」
「成人したばかりなのに、Fランク冒険者三人を倒せるほどの実力をお持ちなのですね」
「それなりに実戦の経験はありますので」
「そうなんですね。では、戦闘方法を教えてください」
「魔法と剣術」
「現在の職業を教えてください」
「【剣士】」
「以上となります。続いて、冒険者の説明に移りますが、よろしいですか?」
「お願いします」
「冒険者は薬草採取や魔物討伐、護衛などを通して、民の安全と生活を守る者達のことです。そして、冒険者は依頼実績に応じて、八つのランクに分けられます」
「G、F、E、D、C、B、A、Sの八つですか?」
「はい、そうです。そして、一般的にGランクは最下級冒険者、F〜Eランクは下級冒険者、D〜Cランクは中級冒険者、B〜Aランクは上級冒険者、Sランクは最上級冒険者、または英雄と呼ばれています」
「なるほど」
「ランクが上がるにつれて、依頼達成による報酬額も高くなりますが、依頼の難易度も高くなります。上級冒険者にもなりますと、高ランクの魔物との戦闘により、戦死率が高い傾向にあります。なので、Sランク冒険者になれる方はほんの一握りです」
ハイリスク・ハイリターンというわけだな。ただ、俺の場合は高額な報酬以外にも、高ランクの魔物が所持するスキルも獲得できるため、リターンのほうが大きい。
これから魔物討伐に精を出し、レベルとスキルレベルを上げて、高ランクの魔物を討伐できるように頑張ろう!
「ちなみに、Sランクのその上のランクはあるのですか?」
「…何故、そのような疑問を?」
「もし、高ランクの魔物の中にSランク冒険者では対処できない魔物がいた場合、それに対処できる戦力はあるのかなと思いまして」
「Sランクのその上のランクにSSランクがあります。各国の冒険者ギルドに所属している数多の冒険者の中で、たった四人のSSランク冒険者がいます。しかし、SSランク冒険者になれる方は滅多にいないので、冒険者登録の際はあまり説明しません」
英雄と呼ばれるSランク冒険者よりも強いであろうSS冒険者がどれほど強いのか気になるな。そして、その中には転生者は含まれるのだろうか。
転生特典として、チートを三つ貰っているのだから、転生者が含まれていたとしても、おかしくない。
まさか…全員が転生者ということはないだろうな。その場合、俺は嫉妬のあまり発狂するだろうな。
「最後に注意事項です。掲示板に貼り出されている依頼にはランク制限はありません。Gランク冒険者がAランク冒険者に推奨される依頼を受けることも可能です。ですが、依頼書に書かれた期限内に依頼を達成できなければ、違約金を支払わなければいけないので、注意してください」
「分かりました」
「自身の力量と依頼内容を照らし合わせて、依頼実績を積み重ねていくのも冒険者には必要なことなので、頑張ってください」
「はい、頑張ります」
「では、こちらが冒険者の
「分かりました」
俺は受付嬢から
異世界モノのお約束で少し時間はかかってしまったが、無事に冒険者登録できたので、良かった。
帰り際に受付嬢にオススメの宿屋を聞き、冒険者ギルドを後にした。
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