第48話 聴取

 俺は受付に座っている三人の女性の内、真ん中の女性のところに向かった。


 金色の長髪を白いシュシュのようなもので一つにまとめ、左肩から胸にかけて流している。


 切れ長で青い瞳をしており、右目の下には小さな泣き黒子がある。筋の通った高い鼻、桃色の瑞々しい唇。


 ブラウスの胸元が開いており、谷間が見えている。大きさは制服を押し上げているので、立派な果実をお持ちのようだ。


 その色気に唾を飲み込み、陰部に血液が集まり、硬く勃起しそうになる。ゴブリン種としての本能が彼女を犯し、孕ませたいと訴えてくる。


 それを人間としての理性で抑え込み、小さく深呼吸をして、未だ怯えた表情を浮かべる彼女に話しかける。


 「あの、冒険者登ーーー」


 「失礼、少し貴方にお話があるのですが」


 途中で俺の言葉を遮り、話しかけてくる男。


 身長は俺と同じくらいで、整えられた黒色の短髪、油断なく俺を見据える鋭い眼光と右目にはモノクル。


 体格は屈強な冒険者とは異なり、痩せすぎというわけではないが細身で、【心眼】で所持スキルを視ると、元冒険者というわけではなさそうだ。


 「…どのようなお話ですか?」


 「あそこにある三人の冒険者の死体について、教えて頂けますか?」


 まぁ、そうなるよな。


 「彼等は私のこの身なりが気に入らなかったようで、冒険者登録をしに来た私に、武器と所持品を置いて帰るように言ってきました。それは困るので断ると、反抗的な態度を取る私に我慢できなくなり、襲ってきました。私はただ、返り討ちにしただけです」


 「なるほど。それは、彼から受けた報告内容とは異なりますね」


 男は側に控える男性職員に視線を向ける。


 「どういうことですか?」


 「違います、ギルドマスター! こいつが出鱈目を言っているんです!」


 俺と彼等のやりとりを笑みを浮かべて見ていた男性職員が言い訳を口にする。


 「貴方は私と彼等のやりとりを楽しそうに眺めていた人ですね。ギルドマスター、彼からはどのような報告が?」


 「冒険者ギルドにやってきたアレンという者が三人の冒険者を一方的に殺したと報告を受けています」


 「なるほど。それは虚偽の報告ですね」


 「な、何を言ってーーー」


 男が男性職員の言葉を手で制止する。


 「貴方の言葉を裏付けるものはありますか?」


 「それを言うのであれば、彼の報告内容も裏付けるものはありませんが。なので、私と彼ではなく、受付の女性職員や他の冒険者に聞いてみるのは如何でしょう?」


 「分かりました。では、アデルさん。貴方はどちらの意見が正しいと思いますか?」


 ギルドマスターは一番手前にいた女性職員に質問する。


 アデルさんは俺に視線を向けた後、ギルドマスターの質問に答える。


 「…アレンさんが正しいです」


 「お、おい、アデル! お前ーーー」


 「エイベルさん、今は貴方が発言する時ではありませんよ」


 「し、しかし!」


 「何をそんなに慌てているのですか? 貴方の報告に嘘偽りが無いのであれば、問題ないでしょう」


 「…」


 「では、続けますね」


 その後、他の女性職員と冒険者に同じ質問をしていき、全員が俺の意見が正しいと証言してくれた。


 冒険者ではない俺と殺した三人の冒険者のやりとりを傍観していたことは、これで水に流してやるとしよう。


 「全員の聴取が終わりました。満場一致でアレンさんの意見が正しいことが証明されました。エイベルさん、これはどういうことでしょうか?」


 「それは…その…」


 「ギルドマスターである私に虚偽の報告をしたというわけですか?」


 「ち、違うんです! そんなつもりはーーー」


 「では、目撃者である皆さんが私に嘘をついていると?」


 「そ、そうです! 俺がギルドマスターを呼びに行っている間に、こいつに脅されて口裏を合わせているんです!」


 このエイベルという男は相当往生際が悪いな。


 冒険者ギルドの職員である彼女達や冒険者ギルドに所属している彼等がギルドマスター対して嘘をつくわけがないだろう。


 そんなことをすれば、職員は解雇され、冒険者は証明書ライセンスを剥奪されるだろう。


 たった一つの嘘で背負うリスクは、あまりにも大きい。


 「ギルドマスターである私に嘘偽りを述べるのであれば、相応の対応をしなければいけません。皆さん、分かっていますね?」


 ギルドマスターの言葉に皆が真剣な目で頷く。


 「エイベルさん、皆さんは嘘偽りを述べていないと言っていますが、貴方は如何ですか?」


 エイベルは俯きながら、肩を震わせている。そして、悔しさや苛立ちを吐き捨てるように、声を張り上げる。


 「く、くそ! ふざけやがって! 全部テメェのせいだ!」


 エイベルは俺に憎しみの籠った視線を向ける。そして、三人の冒険者の死体がある場所まで駆け出し、武器を手に取る。


 「ぶっ殺してやる!」


 長剣を握り殺意を剥き出しにして、俺に向かってくるエイベル。


 俺は大剣を握り、【身体強化】を発動し、【突進】で一気に距離を詰める。


 「なっ!」


 一気に距離を詰められ、大剣が目前に迫り驚いているエイベル。その後、大剣がエイベルの身体を真っ二つに両断し、エイベルは絶命した。


 『【心眼】Lv.3にUPしました』


 『【勘定】Lv.1を獲得しました』


 『【記憶】Lv.1を獲得しました』


 


 


 

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