第42話 冷酷
俺は拠点に戻る途中で足を止め、深く溜め息を吐いた。
視線の先に俺の拠点を取り囲むように五人の冒険者何いたからだ。
これで四度目だ。
いい加減にしてほしいとは思うが、俺が魔物である限り、逃れられない運命なのだろう。
ここの狩場に来てから三度も冒険者の襲撃に遭い、全てを返り討ちにした。冒険者ギルドも戻らない冒険者達がいることで、狩場の異変には気づいているのだろう。
もしかしたら、俺の存在を把握していて、逐次冒険者という戦力を投入しているのかもしれない。
俺はただ、魔物を倒してレベルを上げたいだけなんだがな。襲撃してきた冒険者達も戦闘が避けられないから、仕方なく殺してしまっただけだし。
そうは言っても、俺は魔物だからな。誰も俺の言葉を信じる奴はいない。ただ、これからはただ殺すのではなく、情報も聞き出してみよう。
それで、戦闘が避けられるなら、一石二鳥だしな。
視線の先にいる冒険者達がこちらに気付き、臨戦態勢に入っている。俺は【心眼】で所持スキルを視ながら、彼等に向かって歩き始めた。
彼等との距離が10メートルまで近づいたところで歩みを止め、彼等に質問を投げかける。
「貴方達もアドルフさんやオーガストさんみたいに、私を討伐しに来たのですか?」
俺の言葉を聞いて、彼等は目を見開き驚いている。しかし、すぐに弓を所持した男性冒険者が我に返り、俺の質問に質問で答える。
「…何故、魔物であるお前が人間の言葉を喋れる?」
「それは、私が元人間で魔物に転生した転生者だからです。まぁ、もう信じてもらおうとは思っていませんけど」
「人間が魔物に転生しただと?」
「はい。この世界とは別の異世界で私は死にました。そして、この世界に魔物であるゴブリンとして転生したのです」
「そうか…その話の真偽は置いておくとして、お前がアドルフのパーティーとオーガストを殺したんだな?」
「そうです」
「…何故、殺した?」
「アドルフさんのパーティーは一方的に襲いかかってきたので、反撃しました。オーガストさんは純粋な殺し合いを求められたので、それに応じたまでです」
「「「「「…」」」」」
「冒険者に襲撃されたのは三回、私に戦闘の意思はありませんでしたが、魔物である私の言葉を信じず、結果的に殺すことになってしまいました。今も私に戦闘の意思はありません。それでも、戦闘は避けられないでしょうか?」
「…無理だな」
「そうですか。魔物である私と冒険者である貴方達とは、これから先も相容れることはないのですね。…肝に銘じておきます」
最後の言葉を言い終えると同時に、【突進】で距離を詰めて、弓を所持した男を狙う。
この五人の中でスキルレベルが高いのがこいつだ。まずはこいつから殺す。
弓を所持した男はギリギリで反応し、後方に【跳躍】する。
(逃がさない)
「雷霆よ、敵を貫く槍となれ、
バリバリバリィィィ
「なっーーーぐぁあああ!」
弓を所持した男は
『【弓術】Lv.3を獲得しました』
『【豪運】Lv.2を獲得しました』
『【跳躍】Lv.4にUPしました』
『【逃走】Lv.2にUPしました』
『【遠視】Lv.3を獲得しました』
俺は残りの四人の冒険者を見据える。そして、怯えた表情浮かべる彼等に向かって駆け出す。
「ら、雷霆よ、敵を貫け、
「雷霆よ、敵を貫け、
【魔力感知】で魔法発動の予兆を感知し、相手の詠唱途中から同じ魔法を詠唱し、相殺した。
「そ、そんな!」
「水よ、敵を両断する鎌となれ、
「み、水よ、敵を両断する鎌となれ、
相手に魔法を相殺されたことを気にも止めず、【突進】で距離を詰めて、大剣を振り下ろす。
盾を所持した男が俺の攻撃を受け止めるが、威力が高くて体勢を崩しかけている。しかし、長剣を所持した二人の男達が俺に斬りかかってくる。
一度、後方に【跳躍】して距離をとり、【雷魔法】を詠唱する。
「雷霆よ降り注ぎ、敵を悉く屠れ、
「ま、まずい!」
「し、しまっーーーぎゃあああ!」
長剣を所持した男達は
そして、
「み、水よ、敵を貫く弾丸となれ、
「土よ、敵を貫き、突き上げろ、
その隙だらけの頸部に向かって、大剣を振り抜く。
『【雷魔法】Lv.2にUPしました』
麻痺状態で身体が動かせない二人にとどめを刺すべく駆け出す。すると、盾を所持した男が間に入り、二人を守る。
【身体強化】と【突進】を発動して、大剣を横薙ぎに振るい、盾を弾き飛ばす。盾を失い、諦めた表情を浮かべる男を真っ二つに両断する。
『【探索】Lv.4にUPしました』
『【隠蔽】Lv.3にUPしました』
邪魔者がいなくなり、無防備に背中を晒す二人に近づき、一人の首を斬り落とす。
『【狩猟】Lv.4にUPしました』
絶望した表情を浮かべる男の頭部を掴み、質問する。
「冒険者ギルドは私を討伐するために、討伐依頼を出しているか?」
男は力なく頷く。
「街道に沿って進めば、[シュペール]以外の村や街はあるか?」
再度、男は頷く。
「その村、あるいは街の名前は?」
「ヴ…ヴァル…[ヴァルダナ]…」
「分かりました」
俺は男の首に大剣を突き刺した。
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