第43話 移動

 「それじゃ、新規スキルの確認をしようか」


 今回、五人の冒険者を倒して、獲得した新規スキルは【弓術】Lv.3と【豪運】Lv.2、【遠視】Lv.3の三つだ。


 早速、詳細説明を確認する。


【弓術】Lv.3

 長弓や短弓などで戦闘をする際、射程距離や命中精度に補正がかかるスキル。器用値+40


【豪運】Lv.2

 幸運値が+20増加するスキル。幸運値+20


【遠視】Lv.3

 前方30メートル先まで視界が明瞭になるスキル。幸運値+40


 今、【職業】は【剣士】を選択していて、メインの武器を大剣、サブの武器を長剣にしているから、弓を使う予定はない。


 この先、希少な弓を獲得できる機会に恵まれれば、その時は弓を使ってもいいかもしれない。


 【遠視】は今後の魔物討伐に非常に役立つスキルだ。遠く離れた先にいる魔物を発見しやすくなるからな。


 【探索】で居場所を特定し、【遠視】で対象を視認、先制攻撃という流れになるだろう。


 スキルの確認を終えて、五人の冒険者の所持品を漁る。しかし、所持品は皆同じで、ポーションや硬貨、冒険者の証明書ライセンスのみだ。


 薬草採取や魔物討伐時に多くの荷物は邪魔になるだけだし、必要最低限の物しか所持しないのは分かるけどな。


 あと、一つ問題がある。


 十四人の冒険者達を返り討ちにし、所持品を奪ってきたので、量が多い。ポーションは四十二本、硬貨は百枚以上ある。


 流石に量が多すぎるので、整理することにした。アンジェラから【回復魔法】を獲得したので、ポーションの必要性はそこまで高くない。


 なので、一つのウエストポーチをポーション用とし、ウエストポーチに入る量の限界の六本を所持することにした。


 もう一つのウエストポーチは硬貨用とした。ウエストポーチに手持ちの硬貨が全部入ったので、一安心だ。


 五人の死体をアドルフのパーティーやオーガストの死体がある場所まで運ぶ。オーガストの死体はまだ大丈夫だが、アドルフのパーティーの死体は蛆が湧き、腐敗が進んでいる。


 このまま放置していても魔物の餌になるので、特に気にしない。


 武器も回収し、木の根元に突き刺しておく。


 彼等の死体は適切に埋葬していないが、遠目に見れば、戦死した者の墓標に見えるだろう。


 事後処理も含めて一段落ついたので、腰を降ろし、空を見上げる。


 冒険者ギルドは俺の討伐依頼を出しているみたいだし、これからも冒険者達に狙われるのは面倒だ。


 それに、ここの魔物は苦戦することなく勝てるようになったので、ここの狩場に拘る必要はない。


 そろそろ、ここの魔物よりも強い魔物と戦い、自身が成長するためにも、狩場を移動するのが最善だろう。


 街道沿いに進めば、[ヴァルダナ]という村か街があるみたいだし、そこを目指すとしよう。


 まぁ、[シュペール]を通り過ぎるわけにもいかないので、大きく迂回する必要はあるが。


 まだ、太陽は高く昇り空も明るいので、善は急げと立ち上がり、移動を開始した。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 太陽が地平線の向こうに沈みかけている夕方頃、一組のパーティーがとある場所で立ち止まっていた。


 全員の顔色が蒼白に染まり、込み上げてくる恐怖に思わず唾を飲み込む。


 「え、エイブラム達が死んでいるということは…」


 「…あぁ、例のホブゴブリンに殺されたんだろう」


 「…そのホブゴブリンにアドルフとオーガスト、エイブラムの三人のEランク冒険者が敗北したのか…」


 「ここはFランクの魔物しかいない低位の狩場なのに、一変して危険地帯になっちまったな…」


 「俺達のような下級冒険者では手に負えない。Dランク以上の中級冒険者が村に訪れることを願うしかないだろうな」


 「それは難しいだろうな。中級冒険者が態々小さな村と低位の狩場に来るわけがない」


 「そうだな…」


 「それじゃ、冒険者の証明書ライセンスを回収して、冒険者ギルドに戻るぞ」


 「「「おう」」」


 その後、彼等は冒険者ギルドに戻り、受付嬢にギルドマスターを呼ぶように伝える。


 「…エイブラム達の件か?」


 「はい。エイブラム達の死体を見つけました。近くにオーガストの死体もあったので、例のホブゴブリンに敗北したのだと思われます」


 「そうか…」


 「ギルドマスター、一時的に冒険者が狩場へ行くのを制限してはどうでしょうか?」


 「それはできない。冒険者は自身で責任を負わなければならない。それに、俺達が止めたとしても、反発する者は出てくる。そうだろう?」


 ギルドマスターが目の前にいる彼等に視線を向けるが、彼等は視線を逸らし、問い掛けに答えることはない。


 「で、では、どうするのでしょうか?」


 「明日、領主様の元へ報告しに行き、騎士団を狩場に派遣してもらえるように要請してくる」


 「分かりました」


 「まぁ、派遣されるとしても少数だと思うがな」


 「そうなのですか?」


 「あぁ、騎士は冒険者のランクでいうと、D〜Cランクの強さがある。例のホブゴブリンはEランク冒険者を倒せる実力があるのだろうが、中級冒険者相当を複数人相手にして、勝てる可能性は低いだろう」


 「じゃあ、後のことは任せたぜ」


 「あぁ、任せておけ。皆、狩場では十分注意して行動してくれ!」


 ギルドマスターは冒険者ギルドを出ていく冒険者達の後ろ姿を見送った後、執務室に戻っていった。


 


 


 


 


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