第36話 忠告を聞き入れない冒険者
早朝。
とある冒険者が掲示板に貼り出されている依頼を眺めていた。
その冒険者は依頼内容が書かれている羊皮紙を手に取ることなく、受付に向かう。
「おい、俺に相応しい依頼はないのか?」
「それは…」
「何故、言い淀む? そういえば、緊急討伐依頼が貼り出されていたな。その依頼のような特別な依頼はないのか?」
「特別な依頼はありません…」
「ちっ、聞いて損したぜ」
その冒険者が踵を返し、一歩を踏み出そうとした時、受付嬢が大きい声で制止する。
「ま、待ってください!」
その冒険者は振り返り、受付嬢に制止した理由を尋ねる。
「なんだよ? 特別な依頼の存在でも思い出したか?」
「いえ、特別な依頼はありません」
「ちっ! だったら、呼び止めるんじゃねぇよ」
その冒険者は受付嬢の言動に苛立ちながらも踵を返そうとすると、受付嬢が言葉を続ける。
「昨日、緊急討伐依頼を受けたアドルフさんのパーティーが戻ってきませんでした。討伐対象であるホブゴブリンに返り討ちに遭ったのか、冒険者ギルドで注意勧告している同業者を襲う冒険者の仕業なのか、分からない状況です」
「なるほど、それは面白そうだな」
その冒険者は期待感が募り、笑みを浮かべる。
「オーガストさん、十分に気をつけてください。Eランク冒険者が率いるパーティーを倒せる者がいるかもしれないので」
「余計なお世話だ。アドルフは俺と同じEランク冒険者ではあるが、パーティーを組まないといけない軟弱者。俺のほうが強いからな」
「で、ですが!」
「おい、冒険者でもない奴が口を出すんじゃねぇよ。まぁ、アドルフ達の死体を見つけたら、冒険者の
「はい…」
オーガストは冒険者ギルドを後にし、狩場へ向かう。
「どんな奴かは知らないが、俺を楽しませてくれることを期待しよう」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
俺は降り注ぐ太陽の光で目を覚まし、【水魔法】を詠唱する。
「水よ、生成、
喉を潤し、頬を叩いて、気合いを入れる。
「よし! まずは食糧を調達して空腹を満たす。その後、レベル上げのために、魔物を狩りまくるぞ!」
俺はアランから譲り受けた長剣を握り、【探索】を発動する。
【探索】猪の魔物
反応を捉えた場所に向かって、全力で駆け出す。猪の魔物との距離が10メートルまで近づいた時、【異臭感知】で俺に気付く猪の魔物。
「今、俺に気付いたところで、もう遅いぞ!」
【突進】で走る速度を上昇させ、猪の魔物がこちらの攻撃に対応する前に長剣を振り抜く。
「お! 長剣でも頭部を真っ二つに両断できるみたいだな。それだけ、筋力値が高くなったってことだな」
頭部を真っ二つに両断され、大量の血を垂れ流している猪の魔物に齧り付く。
グチャ…グチャ…グチャ…。
肉を引きちぎり、口元から血を滴せながら、勢いよく喰らっていく。
魔物に転生したためか、獣の匂いや血生臭い匂い、口内に付着する剛毛などに不快感を覚えることなく食べることができる。
「まだ、一匹しか食べてないから、全然空腹が満たされない」
二匹目の反応がある場所に駆け出す。途中で蟷螂の魔物を発見したので、【雷魔法】を詠唱し、
そして、二匹目の猪の魔物を先程と同じように倒すと、レベルが上がった。
『Lv.14にUPしました』
「さて、スキルポイントを消費して、どのスキルを選択しようかな」
この狩場に来て、魔物以外にも八人の冒険者を殺したことで、たくさんのスキルを獲得した。
既得のスキルもレベルが上がったし、差し迫って獲得しなければいけないスキルはないのだが、このスキルはあったほうがいいだろう。
俺は一つのスキルを選択した。
『【魔力回復量増加】Lv.1を獲得しました』
続いて、詳細説明を確認する。
【魔力回復量増加】Lv.1
一分間に回復する魔力量が増加するスキル。増加する魔力量はステータスの魔力値の1%。魔力+10
例えば、ステータスの魔力値が100であれば、一分間に回復する魔力量が+1増加するというわけだ。
今後、ステータスの魔力値と【魔力回復量増加】のレベルが上がれば、魔法が撃ち放題になるというわけだな。
二匹目の猪の魔物を食べながら、現在のステータスを確認する。
【ステータス】
・名称 ホブゴブリン
・性別 雄
・種族 小鬼
・称号
・加護
・Lv.14
・魔力 282(182+100)
・筋力 500(180+320)
・頑丈 280(180+100)
・敏捷 302(182+120)
・知力 230(180+50)
・精神 270(180+90)
・器用 342(182+160)
・幸運 412(182+230)
【職業】
剣士
【スキルポイント】
残量 0
【スキル】
[魔法系統]
・【雷魔法】Lv.1
・【水魔法】Lv.2
・【土魔法】Lv.2
・【回復魔法】Lv.2
[戦闘系統]
・【棍棒術】Lv.4
・【体術】Lv.3
・【身体強化】Lv.2
・【剣術】Lv.3
・【突進】Lv.3
・【槍術】Lv.2
・【斧術】Lv.2
・【盾術】Lv.2
[感覚系統]
・【熱源感知】Lv.3
・【異臭感知】Lv.3
・【気配感知】Lv.3
・【魔力感知】Lv.2
[増加系統]
・【疾走】Lv.2
・【剛力】Lv.2
・【絶技】Lv.2
・【明晰】Lv.2
・【不屈】Lv.2
・【金剛】Lv.2
・【魔力回復量増加】Lv.1
[生産系統]
・【採取】Lv.2
・【狩猟】Lv.3
・【農耕】Lv.2
・【調理】Lv.2
[補助系統]
・【跳躍】Lv.3
・【逃走】Lv.1
・【心眼】Lv.1
・【気配遮断】Lv.1
・【魔力遮断】Lv.1
・【暗視】Lv.2
・【魔力操作】Lv.2
・【探索】Lv.3
・【隠蔽】Lv.2
[ユニークスキル]
・【強欲】Lv.1
[使用不可]
・【毒胞子】Lv.2
能力値は増加しているし、筋力値は500に到達した。ただ、俺の実力はEランク冒険者に一対一で勝てる程度。
まだまだ最強への道のりは遠いので、レベル上げを頑張るとしよう!
俺は次の獲物を探しに駆け出した。
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