第32話 二度目の冒険者との邂逅
俺は三匹目のホブゴブリンを討伐し、ホブゴブリンの死体を引きずりながら、武器を置いてある場所に戻っていた。
道中、レベル上げと槍の扱いに慣れるために、食事を終えた後は魔物をたくさん狩ろうと考えていた。
【探索】で武器を置いてある場所に向かっていると、そのすぐ近くで【熱源感知】【異臭感知】【気配感知】が四つの反応を捉えた。
有効範囲である15メートル先には四人の冒険者がいた。そして、長剣を所持した男性冒険者がこちらを見ているのに気づいた。
俺の周囲には何も反応がないので、あの冒険者は俺を見ているのだろう。この距離で俺に気づくということは、【気配感知】や【魔力感知】がレベル3以上なのは確実だ。
何故、【心眼】を所持しているのに断定できないのか。それは、あの冒険者の所持スキルが視れないからだ。
それに、こちらを見てる長剣を所持した男性冒険者以外の三人も所持スキルが視れない。全員俺と同じように【隠蔽】を所持している。
あの四人の冒険者も俺を捕獲または討伐しに来たのだろうか。それとも、普通に狩猟採集をしていて、この場所を通りかかったのか。
以前、四人の冒険者に襲われたことがある俺としては、安易に彼等に近づくとこができない。
でも、武器だけは回収したい。アランから譲り受けた大切な長剣を捨て置くわけにはいかないから。
俺としては彼等と戦闘する意思はないので、対話から入るべきだろうか?
しかし、また魔物だからと俺の話を信じず、襲われる可能性もある。
何か打開策はないだろうか。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「…アンジェラ、あのホブゴブリンの所持スキルは分かるか?」
「…い、いえ、分かりません」
「は、はぁ! 嘘だろ!」
「となると、魔物であるにも関わらず、【隠蔽】を所持しているということになるな」
「それに、槍を所持しているということは、武器として扱える可能性もあります」
「ホブゴブリンが長剣を所持しているってだけでもおかしいのに、槍まで扱えるってなったら、相当危険じゃないか!」
「槍だけではありません。そこには、短剣も斧もあります。それも扱えるとなると…」
「アドルフ、どうする?」
「…」
「慎重に判断するべきです。…それと、何故、あのホブゴブリンは私達を襲ってこないのでしょう?」
「確かにおかしいな。魔物であれば敵意を剥き出しにして、人間を襲うというのに」
「そんなことどうでもいいだろ! あのホブゴブリンは冒険者を襲って、武器を奪った可能性が高いんだろ! それに、あのローブもウエストポーチもその時に奪ったんじゃねぇか!?」
「クライド、落ち着いてください」
「落ち着いてられるかよ! 理解不能な魔物がいるんだからよ!」
「クライド、落ち着け」
「す、すまない…」
「アドルフ、私達のパーティーのリーダーは貴方です。私達は貴方の判断に従います」
「あのホブゴブリンは俺達の常識では測れない魔物だ。しかし、武器や所持品を見るに冒険者を襲った可能性が高く、今後も被害に遭う冒険者が増えるかもしれない。それを未然に防ぐためにも、俺達があのホブゴブリンを討伐する。いいな?」
「分かった」
「…おう」
「分かりました」
「よし、いくぞ!」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
突然、四人の冒険者が走って距離を詰めてきた。
(やっぱり、こうなるのか…)
以前と同じように逃走したところで、追いかけてきて背後から魔法で攻撃されるだけだろう。
申し訳ないが、俺はまだ生きていたんだ。襲ってくるならば、反撃するまでだ!
俺は向かってくる彼等にホブゴブリンの死体を投げる。彼等が驚いている隙に距離を詰めて、槍を繰り出す。
槍はホブゴブリンの死体を容易く貫き、長剣を所持した男に迫る。しかし、その攻撃は盾を所持した男に防御される。
ガキン!
槍と盾が衝突し、鈍い音が響き渡る。盾を所持した男は二歩三歩と後退る。そして、俺はすぐに槍を手放し、前方に向かって【跳躍】する。
まだ扱い慣れていない槍よりも、扱い慣れた長剣のほうが戦いやすい。地面に突き刺してある長剣を握り、彼等に向かって走り出す。
槍を所持した男がそのリーチを生かして刺突で攻撃してくるが、咄嗟に半身になって躱し、頸部に向かって横薙ぎに振るう。
俺の攻撃を盾を所持した男が防御する。また盾を所持した男が二歩三歩と後退るので、追撃しようとすると、長剣を所持した男が真横から長剣を振り下ろしてくる。
すぐに後方に【跳躍】して攻撃を躱して距離を取ると、白いローブを羽織った女性が【水魔法】を詠唱している。
「水よ、敵を貫く弾丸となれ、
そして、俺も【水魔法】を詠唱する。
「水よ、敵を貫く弾丸となれ、
「ほ、ホブゴブリンが魔法を詠唱したぞ!?」
「クライド! 今は戦闘に集中しろ!」
四人が動揺しているのを無視し、白いローブを羽織る女性を狙う。まずは魔法での攻撃手段を潰すためだ。
駆け寄る俺の前に盾を所持した男が立ち塞がる。それを【跳躍】して飛び越え、彼女に向けて【雷魔法】を詠唱する。
「雷霆よ、敵を貫け、
「水よ、何物も通さぬ壁となれ、
彼女も【魔力感知】所持しているようで、俺が詠唱している途中から【水魔法】を詠唱し、
着地してすぐに駆け出し、再度彼女を狙う。彼女の前に盾を所持した男が立ち塞がり、槍を所持した男が刺突で攻撃しようと槍を引き絞る。
俺は【突進】で加速し、槍を所持した男に肉迫する。
「クライド!」
長剣を所持した男が大声で仲間の名前を叫ぶが、俺は無慈悲に長剣を振り抜いた。槍を所持した男は身体を真っ二つに両断され、血飛沫を上げながら倒れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます