第28話 何者の仕業?まさか!?
「うーん…持ち運ぶのが面倒だな」
俺は長剣と短剣、槍、斧の四つの武器を両手で抱えながら林の中を歩いている。筋力値が高いおかげで重いとは感じないが、魔物が彷徨いている林の中で両手が塞がっているのは良くない。
「四人の死体がある場所から十分離れたし、この辺に武器を置いておくか」
短剣を木に突き刺し、長剣と槍を木に立てかける。早速、斧を持ち上げ、縦に振り下ろし、横薙ぎに振るう。
高い筋力値と【斧術】のおかげで長剣と同じように振れるので、試しに魔物と戦ってみようと思う。
【探索】ホブゴブリン
まずは【探索】でホブゴブリンを探す。有効範囲は半径50メートルで【熱源感知】や【異臭感知】【気配感知】【魔力感知】よりも広範囲なので、すぐに複数の反応を捉えた。
俺はすぐに駆け出して、見つけたホブゴブリンに向かって斧を振り下ろす。
「グギャ…」
慌てて棍棒で防御しようとしたホブゴブリンは棍棒と一緒に身体を真っ二つに両断されて絶命した。
『【棍棒術】Lv.4にUPしました』
【棍棒術】のレベルが上がったことで、また筋力値が増加した。
「かなり脳筋野郎になってきたな…」
まぁ、いいか。俺は一撃必殺の脳筋戦士ということにしておこう。
気持ちを切り替えて次の反応がある場所へ向かおうとした時、猪の魔物と遭遇した。
猪の魔物は俺を見据えると何度か地面を蹴ると【突進】してきた。俺もすぐに【突進】で距離を詰めて斧を振り抜いた。
猪の魔物は頭部を真っ二つに両断されて絶命した。
「前回は両断することはできなかったが、今回は特に抵抗を感じることもなく両断することができた。あの四人の冒険者を殺したことがとても大きいか…」
うーん…良くないな。今後人間と遭遇したら、経験値として見てしまいそうで怖い。
流石に誰彼構わず無差別に殺す殺人鬼にはなりたくないし、それによって強者の討伐対象になるのは勘弁なので、自制するとしよう。
俺は斧を肩に担ぎながら、再び駆け出した。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「す、凄いな…」
「あぁ、ダッシュ・ボアの頭部が真っ二つに両断されてやがる。俺はこのような殺され方は見たことがない」
「俺も初めて見たぜ。Eランクの奴等の仕業か?」
「それは分からない。ただ、おかしいと思わないか?」
「あぁ、魔物の死体を放置するなんて冒険者がすることじゃない。それに、ダッシュ・ボアの毛皮は革鎧の素材になるから、尚更あり得ない」
「冒険者の仕業じゃないなら魔物の仕業の可能性が高いが…」
「頭部を真っ二つに両断するとなると…スラッシュ・マンティスの前脚であれば、似たようなことはできるかもしれないが…」
「スラッシュ・マンティスはダッシュ・ボアと同じFランクの魔物だ。同格の魔物でこのような芸当はできないだろう」
「じゃあ、誰の仕業なんだろうな」
「…一つ心当たりがある」
「そうなのか?」
「あぁ、お前も見ただろう。冒険者ギルドの掲示板に貼り出されていた緊急討伐依頼を」
「あぁ、見たぜ。それがどうし………まさか! 武器を所持したホブゴブリンの仕業だっていうのか!?」
「それしか考えられない」
「いやいや、ホブゴブリンはFランクの魔物だぞ。お前がさっき同格の魔物ができる芸当じゃないと言っていたはずだが?」
「あぁ、普通のホブゴブリンであれば無理だろうな。しかし、そのホブゴブリンは普通じゃない。武器を所持した特殊個体の可能性もあるだろう?」
「そう言われればそうかもしれないが…そうなると、そのホブゴブリンはとても危険だぞ。Fランク冒険者でも返り討ちに遭うだろうな」
「早急に冒険者ギルドに報告するべきだな」
「同感だ」
二人の冒険者はダッシュ・ボアの死体を運びながら冒険者ギルドに戻っていた。しかし、その道中に四人の冒険者の死体を見つけて、二人は足を止めた。
「こ、こいつらは…」
「緊急討伐依頼のホブゴブリンを殺してやると息巻いていた奴等だ」
「全員頭部を斬り落とされて死んでやがる。それに、武器とポーションや硬貨が入ったウエストポーチが奪われている」
「魔物の仕業ではないな。同業者の中にこいつらを襲った奴がいるかもしれないな」
「随分とこの狩場は物騒になっちまったな。魔物だけじゃなくて同業者にも気をつけないといけないのは気が滅入るぜ…」
「冒険者の
「おう」
♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
『Lv.12にUPしました』
目の前のホブゴブリンの頸部に向かって斧を横薙ぎに振るい、膝から地面に崩れ落ちたホブゴブリンの身体を見下ろしていると、脳内に無機質な声が響いた。
「お! レベルアップだ! 次はどのスキルを選択するか」
俺はスキル一覧を表示し、羅列されているスキルを眺めて、一つのスキルを選択した。
『【隠蔽】Lv.1を獲得しました』
【隠蔽】Lv.1
Lv.1以下の【鑑定】【心眼】【探索】を妨害するスキル。精神値+10
このスキルは早めに獲得するべきだった。
相手に所持スキルを視られるのはとても危険だ。所持スキルの傾向から戦闘方法を予測され、形勢が不利になる。
手札を隠し、相手を疑心暗鬼にさせるのも戦闘においてはとても重要だ。
[ハザール]の森で出会った三人も俺を攻撃してきた四人も【心眼】を所持していなかったので、命拾いしたとも言える。
「【隠蔽】のレベルは優先的に上げるべきだな」
今後のスキルポイントの使い道が明確になったところで、俺は再び魔物を狩り始めた。
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