第27話 異常

 頭部と胴体が両断され、大量に流血している四つの死体を見下ろす。


 (…俺は…初めて人を殺した…)


 元の世界では法律が制定されており、殺人は重罪であることを誰もが認知していた。


 相手に侮辱され、暴力を振るわれたとしても我慢するのが当たり前。たまに、我慢の限界を超えて仕返しすることはあっても、殺人まで発展することは稀だ。


 俺は中身は人間だと自覚している。他の魔物みたいに誰彼構わず襲うことなんて絶対にしない。


 それなのに、俺は…この四人の冒険者を躊躇することなく殺した。確かに対話に応じようともせず、一方的に攻撃してきた奴等ではあるが、殺すことに躊躇いがないのは不思議だ。


 そして、初めて人を殺したというのに動揺も後悔も一切なく、何も感じない。


 正常な精神の持ち主であれば、一時的に怒りや憎しみに感情が支配されても、我に帰った時に不安や焦燥、後悔が込み上げてくると思う。


 それが無いのは異常だ。


 何が俺の思考を、精神を変えたのか。


 神様が俺を弄り、病気を治してくれた時に何か変わったのか?


 魔物に転生したことで何か変わったのか?


 多種多様な魔物を多数討伐したことで何か変わったのか?


 どこに答えがあるのか分からない。しかし、あの三人とは友好的に接することができたんだ。


 人間と見るや誰彼構わず無差別に殺す殺人鬼ではないので、一先ずは安心だ。


 思考を切り替え、四人の冒険者を殺した時に脳内に響いた無機質な声を思い出す。【槍術】や【斧術】などの新規スキルを獲得し、【身体強化】や【気配感知】などの既得スキルのレベルが上がった。


 ステータス画面を表示し、能力値の増加と新規スキルの詳細説明を確認する。


【ステータス】

 ・名称 ホブゴブリン

 ・性別 雄

 ・種族 小鬼


 ・称号


 ・加護


 ・Lv.11


 ・魔力 182(122+60)


 ・筋力 380(120+260)

 ・頑丈 160(120+40)

 ・敏捷 222(122+100)

 ・知力 170(120+50)

 ・精神 190(120+70)

 ・器用 262(122+140)

 ・幸運 352(122+230)


 【職業】

  剣士


 【スキルポイント】

  残量 0


 【スキル】

 [魔法系統]

  ・【雷魔法】Lv.1

  ・【水魔法】Lv.1

  ・【土魔法】Lv.2


 [戦闘系統]

  ・【棍棒術】Lv.3

  ・【体術】Lv.3

  ・【身体強化】Lv.2

  ・【剣術】Lv.2

  ・【突進】Lv.2

  ・【槍術】Lv.2

  ・【斧術】Lv.2


 [感覚系統]

  ・【熱源感知】Lv.3

  ・【異臭感知】Lv.3

  ・【気配感知】Lv.3

  ・【魔力感知】Lv.2


 [増加系統]

  ・【疾走】Lv.2

  ・【剛力】Lv.2

  ・【絶技】Lv.2

  ・【明晰】Lv.2

  ・【不屈】Lv.2


 [生産系統]

  ・【採取】Lv.2

  ・【狩猟】Lv.3

  ・【農耕】Lv.2


 [補助系統]

  ・【跳躍】Lv.3

  ・【逃走】Lv.1

  ・【心眼】Lv.1

  ・【気配遮断】Lv.1

  ・【魔力遮断】Lv.1

  ・【暗視】Lv.2

  ・【魔力操作】Lv.2

  ・【探索】Lv.3


 [ユニークスキル]

  ・【強欲】Lv.1


 [使用不可]

  ・【毒胞子】Lv.2


【槍術】Lv.2

 長槍や短槍などで戦闘をする際、攻撃動作や防御動作に補正がかかるスキル。筋力値+20


【斧術】Lv.2

 両手斧や片手斧などで戦闘をする際、攻撃動作や防御動作に補正がかかるスキル。筋力値+20


【土魔法】Lv.2

 土属性の魔法を行使できるスキル。魔力+20


【魔力感知】Lv.2

 生物が保有する魔力を感知したり、魔法発動の予兆を感知するスキル。半径10メートル。幸運値+20


【魔力操作】Lv.2

 体内魔力を操作する技量が向上し、魔法の詠唱から発動までの時間を短縮するスキル。器用値+20


【絶技】Lv.2

 器用値が+20増加するスキル。器用値+20


【明晰】Lv.2

 知力値が+20増加するスキル。知力値+20


【不屈】Lv.2

 精神値が+20増加するスキル。精神値+20


【探索】Lv.3

 特定の人類種や魔物などを探索するスキル。半径50メートル。幸運値+40


【採取】Lv.2

 薬草や果実などを採取する技能が向上するスキル。器用値+20


【狩猟】Lv.3

 魔物や動物など獲物を狩る技能が向上するスキル。器用値+40


【農耕】Lv.2

 田畑を耕し、作物を栽培する技能が向上するスキル。器用値+20


 能力値は筋力値と幸運値が350以上と高く、頑丈値と知力値、精神値が200以下と低い。物理と魔法に対する防御力が低いので、同格以上の相手の攻撃は回避一択だ。


 新規スキルは全部で12個。【槍術】【斧術】【土魔法】を獲得したことで物理と魔法の戦闘の選択肢が増えたのは有難い。


 特に【魔力感知】で魔法発動の予兆を感知できれば回避や相殺が可能になり、【魔力操作】で魔法発動を短縮できれば隙が無くなるということ。今後、とても役立つスキルだ。


 そして、【探索】があれば狙った魔物を討伐することが可能だ。


 改めて、ユニークスキル【強欲】は強力なチートスキルだと実感した。これでスキルレベルが上がり、生者からの強奪確率が上がれば、さらに強力なスキルに生まれ変わるだろう。


 さて、彼等から装備と所持品を剥ぎ取るとしよう。


 短剣、槍、斧を一箇所に置いておき、フード付きのローブを羽織る。革鎧はサイズが合うものがなく、汗臭いので放置。


 ローブを羽織っていた奴は小さい革製のウエストポーチを所持していたので、中身を確認すると、緑色の液体が入った小瓶と硬貨が入っていた。


 おそらく、ポーションとこの世界の通貨だと思うが、使用方法や機会がないので、とりあえず腰に身につけておく。


 ポケットを確認すると、鉄製のカード?みたいなものを見つけた。そこには彼等の名前とアルファベットが表記されていた。


 「もしかして、これが冒険者である証なのか!」


 冒険者に憧れがある俺にしてみれば、めちゃくちゃ欲しいものだ。でも、この四人のものは要らないので放置。


 他には何もないので、武器を持ってその場を後にした。



 


 


 

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