第19話 異世界の住人と交流
「まずは自己紹介から始めましょうか。私は先程もお話しした通り、外見はゴブリン、中身は人間の転生者です」
「私の名前はエイミー。三人とパーティーを組んでいる冒険者よ」
「俺の名前はアランだ」
「俺の名前はブラッドだ。そして、最後の一人がカールだ」
桃色長髪の女性がエイミー、赤髪の青年がアラン、青髪の青年がブラッド、緑髪で意識不明の青年がカール。
「年齢はいくつですか?」
「私達は全員15歳よ」
元の世界では中学三年生〜高校一年生くらいの年齢か。
「この森には何処から来たのですか?」
「この森の近くに[ハザール]という小さな村があるの。そこから来たわ」
「その村は周囲を柵で囲まれていて、入口に大人の男性が二人見張りとして立っていますか?」
「その通りです。何故、村のことを知っているのですか?」
「以前、この森を抜けて村や街を目指していたのです。その時に村を発見しました」
「そうだったんですね」
「はい。それで、この森へは何をしに来たのですか?」
「私達は冒険者ギルドに所属する冒険者です。えっと…ゴブリンさんは知らないかもしれないですが、この世界には冒険者という仕事をする人がたくさんいます」
「その冒険者というのは具体的に何をするのですか?」
「そうですね…ご高齢の方が営むお店の商品補充やペットや迷子の探索、ポーションの原料となる薬草採取、食糧や武器、防具にもなる魔物討伐をするのが冒険者です」
冒険者の仕事内容は異世界モノの小説やアニメと変わらない。ゴブリンに転生してなければ、迷わず冒険者になっていた。
「冒険者の仕事はとても多岐にわたるのですね。ということは、この森には薬草採取や魔物討伐で来たということですね」
「はい」
「その途中でホブゴブリンに遭遇し、殺されそうになったということですね?」
「はい」
しかし、四人パーティーで前衛も後衛も揃っており、鉄製の武器まで所持しているのに負けるというのは…あり得るのか?
「ホブゴブリンは四人パーティーでも勝てないのですか?」
「俺達はまだGランクだからな…」
アランの言葉に俺は興味が湧き、聞かずにはいられなかった。
「Gランクというのは?」
「冒険者には依頼実績に応じた昇格制度があるんだ。Gランクは一番下のランクで最下級冒険者と言われている」
この四人の容姿や年齢、ランクを考慮すると、まだまだ駆け出しってところか。
「その昇格制度について教えてもらってもいいですか?」
「依頼実績を積み重ねて昇格試験を受けることでランクを上げていくことができるんだ。ランクは下からG、F、E、D、C、B、A、Sの八つだ」
「やはり、Sランク冒険者は凄いのですか?」
「あぁ! Sランク冒険者は世間からは英雄と呼ばれて依頼の報酬も高額だから、Sランク冒険者を目指して冒険者になる人もたくさんいるんだ!」
「皆さんもSランク冒険者を目指しているのですか?」
「あぁ、家業を手伝うのはつまらないし、強くてかっこいい冒険者になりたいと思うのは当然だろ」
「確かにそうですね。私も人間に転生していたら冒険者になっていたと思います」
「…」
おっと、気まずくなってしまったか。話題を変えるとしよう。
「皆さんの話を聞いていて、Gランク冒険者ではホブゴブリンに勝てないというのは分かりました。先程のランクの内、どのランクであればホブゴブリンに勝てるのですか?」
「Fランクであればレベルや所持スキル次第で勝てると思うし、Eランクであれば余裕で勝てると思うぞ」
じゃあ、俺の強さを冒険者に置き換えるとF〜Eランク冒険者相当ということか。
「でも、ゴブリンはGランク冒険者で倒せる魔物なのに、ゴブリンさんはホブゴブリンを簡単に倒していたからとても不思議だ」
「それは私も思ったわ」
「俺も思った」
アランの素直な感想にエミリーとブラッドも同意する。
「私は以前にもホブゴブリンを倒したことがありますし、今回はホブゴブリンがエミリーさんに夢中で隙だらけだったので、簡単に倒すことができました」
「そうか…以前も倒したことがあるならおかしくはないのか…」
あまり腑に落ちていないアラン。
「冒険者ギルドに所属している皆さんに聞きたいのですが、この森にホブゴブリンより強い魔物はいますか?」
「いや、いないはずだ」
「私がこれまでに倒した魔物は蛇や兎?、ゴブリン、猿の魔物、犬のような頭部をした魔物、きのこの魔物、ホブゴブリンです」
「それなら、この森にいる魔物は全て倒したと思いますよ。冒険者ギルドの討伐依頼でそれ以外の魔物はありませんから」
そうか…じゃあ、この森で成長できるのはここまでだな。
「周辺に新種の魔物がいる場所はありますか?」
「確か…[ハザール]より少し大きい村があったはずだ。そこには新種の魔物がいたような気がする」
「その村は[シュペール]といいます。猪の魔物や昆虫の魔物がいたはずです」
「教えて頂きありがとうございます。では、村まで戻りましょうか。森を抜けるまでは護衛も兼ねてご一緒しますよ」
「「「ありがとうございます!」」」
アランが意識不明のカールを背負い、俺達は村に向かって歩き出した。
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