第17話 雷魔法との相性
翌日。
天高く昇った太陽の光が森を照らし、差し込み光で目を覚ます。
木を支えに立ち上がり、寝ぼけ眼を擦りながら川辺に向かって歩く。
川辺に辿り着き、川の冷水を手で掬い、顔を洗う。そして、川の中に顔を突っ込み、冷水で喉を潤す。
「ぷはぁ! スッキリした!」
眠気が解消され、頭の中の靄が晴れるようだ。
「だいぶ異世界生活には慣れてきたが、ある程度強くなった今となっては、とても自由で過ごしやすい」
異世界に魔物として転生した直後は右も左も分からず、不安感で肩に力が入っていた。
今でも生活拠点である森の地形を把握しているわけではないが、出会す魔物も一通り把握できたし、以前より森の中を探索する足取りは軽い。
元の世界のように学校や会社に所属しているわけではないので、長時間拘束されることもないし、人間関係に悩むこともない。
まぁ、スマホや布団などの生活必需品や自動車や新幹線などの移動手段、小説やゲームなどの娯楽がないので、過ごしやすいかは人によって意見が別れることだろう。
それでも、いつかはこの世界の住人達の生活様式は見てみたい。
近くに村はあるが、行く勇気はない。大勢の村人に袋叩きにされるのがオチだからだ。
できれば、この森の中で2〜3人程の集団に接触するところから始めたい。
色々と思考しながら木々の間を通り抜け、食糧調達のために森の中を探索する。
【熱源感知】と【異臭感知】が反応を捉えた場所に行き、猿の魔物三匹と交戦する。
顔面目掛けて振り抜かれた拳を掌で受け止め、胸部を拳で強打する。
側頭部に迫り来る蹴りを腕で防御し、こちらも蹴りで軸足を粉砕する。体勢が崩れたところを拳でとどめを刺す。
最後の一匹が振り抜いた拳に拳を合わせて粉砕する。粉砕された拳を抑えながら後退るところに、跳躍して頭部目掛けて拳を打ち込む。
絶命した猿の魔物三匹を一箇所に集め、木の根元に腰を降ろして食事を始める。
グチャ…グチャ…グチャ…。
「ふぅ…満腹だ。それじゃ、食後の運動も含めてレベル上げを頑張るか!」
頬を叩いて気合を入れ、再び探索を開始する。流石に満腹なので走ることはできない。
蛇を鷲掴みにして頭部と胴体を引きちぎる。兎?の突撃を半身になって躱して拳を振り抜き、地面に叩きつける。
きのこの魔物を【雷魔法】で奇襲すると、レベルが上がった。
『Lv.9にUPしました』
ついに、レベル二桁が目前になった。
「レベル10を目指して頑張るのは当然として、スキルは何を選ぼうかな」
スキル一覧を表示し、今後の戦闘に役立ちそうなスキルを考える。
近接戦闘は筋力値が高く、【体術】Lv.3を所持しているので問題はない。
遠距離攻撃手段は【雷魔法】のみでレベルも低い。
うーん…ここは他の魔法を獲得して戦闘の幅を広げるべきか? それとも、知力値が増加するスキルを獲得して魔法攻撃力を上げるべきか?
「…悩むなぁ」
暫く悩み続けて、一つのスキルを選択した。
『【水魔法】Lv.1を獲得しました』
【水魔法】Lv.1
水属性の魔法を行使できるスキル。魔力+10
悩み抜いた末に戦闘の幅を広げるため、【水魔法】を選択した。
戦闘の幅を広がるという意味では【雷魔法】と【水魔法】は相性がいいのではないかと思った。
【水魔法】が直撃すれば相手は濡れることになる。その状態で【雷魔法】が直撃すれば感電し、麻痺状態で動けなくなる可能性が高い。
同格や格上との戦闘でその隙は致命傷になる。まぁ、簡単にその状況に陥るほど相手も馬鹿ではないと思うので、楽観視はできない。
あとは水分補給が楽になるメリットもある。川辺まで移動しなくても、魔力を消費してその場で水分補給ができるのは有難い。
「それじゃ、どんな魔法が使えるのか試してみよう」
異世界モノの小説やアニメで見た魔法を思い出し、近くの木に向かって詠唱する。
「水よ、敵を貫く弾丸となれ、
魔力を消費して水の弾丸が形成され、狙い定めた木に直撃する。直撃した木の表面は抉られているので実戦でも役に立つ。
魔力消費量は
「水よ、敵を両断する鎌となれ、
魔力消費量は
「水よ、敵を射抜く矢となれ、
「水よ、敵を貫く槍となれ、
前回、
「水よ、何物も通さぬ壁となれ、
目の前に水の壁が形成され、向こう側の景色が波打つように歪んで見える。
手で触れてみたが、感触としてはゼリーに近いかもしれない。向こう側に手は貫通しないので、しっかりと攻撃を防いでくれると思う。
俺の魔力残量が0になったことで、
「少し調子に乗りすぎたな…」
まだこれからレベル上げのために魔物を倒さないといけないのに、魔力が底をついてしまった。
「きのこの魔物との戦闘は避けて、他の魔物を狩るとするか」
新しい魔法もある程度把握できたので、狩りを再開した。
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