第16話 ホブゴブリンと戦闘…勝利!
木々の間を通り抜け、森の中をホブゴブリンを探索しながら進む。
【熱源感知】と【異臭感知】を発動して周囲を警戒しつつ、スキル一覧を表示する。
先程、レベルアップした時にスキルポイントが増えたので、ホブゴブリン戦を想定してスキルを選択する必要がある。
俺が一番伸びているのは筋力値だ。この長所を活かすには魔法戦闘ではなく、近接戦闘でホブゴブリンに挑戦したほうがいいだろう。
【雷魔法】以外の魔法や魔力が増加するスキルではなく、筋力値や頑丈値、敏捷値が増加するスキルを選択しよう。
「よし! このスキルにしよう」
『【身体強化】Lv.1を獲得しました』
【身体強化】Lv.1
筋力値と頑丈値、敏捷値が一時的に1.1倍になるスキル。有効時間1分。筋力値+10、頑丈値+10、敏捷値+10
スキルの詳細説明を確認し、時間制限付きではあるが、危機的状況を打破できるスキルだと思った。
そして、能力値の増加が三つもあるのはとても嬉しい。もしかしたら、これから獲得スキルの中に能力値が複数増加するスキルもあるかもしれない。
スキル選択を終えて空を見上げる。太陽の高度がさがり、森に差し込む光も少なくなってきている。
「今日は見つけられないかもしれないな…」
今までレベル上げや食糧調達のために森の中を探索していたが、一度だけしかホブゴブリンと遭遇していない。
遭遇する可能性の低さに落ち込む中、川辺に戻りながら探索する。
すると、一つの反応を捉えた。内心、蛇か兎?だろうなと思いながら進むと、反応の正体に思わず目を見開く。
俺の倍くらいある体高に緑色の体皮、筋肉質な身体つきでこちらに背中を晒している魔物。
あの魔物は今一番待ち焦がれていた魔物、ホブゴブリンだ。
【心眼】で視ても、【棍棒術】Lv.2を所持しているので間違いない。もしかしたら、以前遭遇したホブゴブリンかもしれない。
まさか、本当に遭遇するとは。これも幸運のおかげかもしれない。
さて、気を取り直して今の俺の実力がホブゴブリンに通用するのか試させてもらおう。
まずは先手必勝。隙だらけの大きな背中に向かって【雷魔法】を詠唱する。
「雷霆よ、敵を貫け、
バリバリバリィィィ
「グギャ!」
奇襲を受けた驚きと痛みに声を上げ、こちらを振り向くホブゴブリン。背中には皮膚が焼けて小さな穴が開いており、細長く煙が出ている。
貫通はしてないが、内部に攻撃は届いた。
ホブゴブリンは背中から流血しながらも俺を見つけ、自分を襲撃してきた敵だと認識すると、棍棒を振り上げながら向かってくる。
魔法攻撃は通用するが、致命傷は与えられないと判断し、近接戦闘に切り替える。
ホブゴブリンは棍棒の届く範囲まで近づくと、より高く振り上げて俺を叩き潰す勢いで棍棒を振り下ろす。
俺は頭上で腕を交差させ、棍棒の振り下ろしを受け止める。
「…なるほど」
棍棒の直撃を受けた腕は折れなかったが、衝撃で片膝を地面についてしまった。俺の頑丈値はホブゴブリンの筋力値より低いようだ。
ただ、そこまで数値に差はなさそうだ。
外見はただのゴブリンである俺が棍棒の一撃を受け止めたことで、ホブゴブリンは驚いている。
受け止めた棍棒を掴み、立ち上がりながら力任せに奪おうとすると、ホブゴブリンも必死に抵抗してくる。
しかし、筋力値は俺のほうが高いようで、棍棒を奪うことに成功する。
慌てたホブゴブリンが拳を握り、俺の顔面目掛けて振り抜く。
「オラァ!」
奪った棍棒を振り抜かれた拳に合わせる。
バキ!
衝突した拳と棍棒。衝撃で棍棒はいくつもの破片になって粉砕した。そして、ホブゴブリンも拳を抑えて後退る。
後退る時に抑えている拳から血が滴り落ちているのでかなり重傷だろう。
ホブゴブリンの表情から焦燥が伺える。背中と拳を負傷している今がチャンスかもしれない。
一気に決めにいく!
【身体強化】を発動して駆ける。拳を抑えていたホブゴブリンは俺の攻勢に怯み、慌てて拳で攻撃してくる。
その拳に俺も拳を合わせる。
バキ!
俺の拳はホブゴブリンの拳を容易く粉砕する。
「グギャアアア!」
両拳を粉砕され、腕がだら〜んと下がっている。
ホブゴブリンは俺に勝てないと判断し、踵を返して逃走を図る。
「逃すか! 雷霆よ、敵を貫け、
すぐに【雷魔法】を詠唱し、ホブゴブリンを攻撃する。
【雷魔法】が直撃したホブゴブリンはその勢いのまま顔から地面に倒れる。そして、とどめを刺すために駆け出し、大きく跳躍する。
「オラァ!」
ホブゴブリンが両手を使えない状態でなんとか上体を起こそうと踠いているところに後頭部に向かって拳を振り抜く。
骨を粉砕する鈍い感触が拳に伝わり、ホブゴブリンの頭部が地面に沈む。
ホブゴブリンが絶命したことを確認し、その側に腰を降ろす。
「意外に苦戦はしなかったな。でも、防御力が不足していることが分かった」
頑丈値と知力値はスキルによる能力値の増加がないので仕方がない。
「はぁ…上位種のホブゴブリンを倒してもレベルが上がらなかったのは残念だったな。…まぁ、上位種を倒せたことは自信に繋がるから良しとしよう」
流石に川辺までホブゴブリンを引きずるのは疲れるので、ここで食べることにする。
ホブゴブリンに齧り付き、口元から血を滴らせながらどんどんと肉を喰らう。
森が暗闇に包まれた頃、俺は就寝した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます