第13話 反応の正体…それは人間

 「シャア!」


 蛇が身体をバネのように伸縮させ、噛みつこうと跳躍する。目前まで迫った蛇に棍棒を振り下ろし、地面に叩きつける。


 グシャ!


 蛇は頭部を潰されて絶命した。蛇の死体を首に巻きつけ、再び歩き出す。


 兎?が草藪から飛び出てきて俺と目が合う。俺を敵と認識し、貫通性能に特化したドリルのような角を向けて跳躍する。


 兎?の突撃を半身になって躱し、空中で隙を晒す兎?に向かって棍棒を振り下ろす。


 グシャ!


 蛇と同じように棍棒に潰されて絶命する兎? 兎?を腕に抱え、他の魔物を探索する。


 すると、きのこの魔物を見つけた。一度倒している魔物なので慌てることはない。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 バリバリバリィィィ


 雷撃ライトニングが奔り、きのこの魔物を貫く。ノロノロと歩いていたきのこの魔物が動きを止め、ゆっくりと倒れる。


 倒したきのこの魔物を放置し、その場を離れようとした時、ガザガサと草薮か揺れ、きのこの魔物が現れた。


 「…もしかして、雷撃ライトニングの轟音で呼び寄せてしまったのか?」


 呑気にそんなことを考えていると、きのこの魔物はカサを揺らし始めた。


 (まずい! 毒性の胞子をばら撒くつもりか!)


 瞬時に状況を理解し、【雷魔法】を詠唱する。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 バリバリバリィィィ


 雷撃ライトニングがきのこの魔物を貫き、毒性の胞子をばら撒かれる前に倒すことができた。


 『【毒胞子】Lv.2にUPしました』


 俺自身は使用できないスキルではあるが、魔力+20の増加は馬鹿にできない。


 一匹目と同じように死体を放置し、探索を再開する。


 「ウキャ!」


 猿の魔物三匹と出会し、三対一の戦闘が始まった。


 お互いが同時に駆け出し、打撃と棍棒の間合いに入ると、棍棒と拳がぶつかる。


 鈍い音ともに拳を粉砕された猿の魔物が後退る。それと同時に俺の側頭部目掛けて二匹目の猿の魔物が蹴りで攻撃してくる。


 咄嗟にしゃがんで蹴りを回避し、足払いを仕掛ける。体勢を崩して倒れた猿の魔物の頭部を棍棒で強打する。


 しかし、三匹目の猿の魔物に頬を殴られる。二匹目の猿の魔物を確実に仕留めようとしたので、それは仕方ない。


 ステータスの差が影響しているのか、頬を殴られても少し衝撃を感じたくらいだ。


 俺の頬を殴った手首を掴み、棍棒で殴り返した。最初に拳を粉砕された猿の魔物が不利を悟り、逃走する。


 (逃すか!)


 すぐに駆け出し、無防備な後頭部目掛けて棍棒を振り抜く。


 『Lv.7にUPしました』


 「ふぅ…太陽もだいぶ傾いてきたし、今日の狩りは終わりにしよう」


 猿の魔物の死体を背負い、引きずりながら川辺に戻る。


 無事に川辺に出ると、途中で魔物の死体を投げ出し、勢いよく川に顔を突っ込む。ゴクゴクと喉を鳴らし、冷水をがぶ飲みする。


 「ぷはぁ! 生き返る〜!」


 やはり、連戦は疲れる。戦闘中は魔物としての闘争本能が勝り、身体疲労は感じない。


 戦闘が終わると疲労が一気に押し寄せてくる。


 これからレベルを上げて上位種に進化するのに連戦は避けて通れない。少しづつでも体力が増えればいいんだけどね。


 さて、夜飯の時間だ。途中で投げ出した魔物の死体を回収し、川辺に腰を降ろして魔物の死体に齧り付く。


 グチャ…グチャ…グチャ…。


 おっと! 忘れないうちにスキルを選択しておこう。


 『【魔力遮断】Lv.1を獲得しました』


 【気配遮断】を獲得した時に次はこれを選択しようと決めていた。続いてスキルの詳細説明を確認する。


【魔力遮断】Lv.1

 Lv.1以下の【魔力感知】を妨害するスキル。精神値+10


 人類種や魔物がレベル2以上の【気配感知】や【魔力感知】を所持していないと、俺の存在には気づけない。


 より奇襲が成功しやすくなり、戦闘の負担が軽減できる。楽に倒せるならそれが一番だ。


 食事とスキルの選択を終えて、木の根元に移動する。そのまま背中を預けながら就寝した。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 翌日。


 森に差し込む太陽の光で目を覚ます。


 大きく欠伸をし、寝ぼけ眼を手で擦る。


 木を支えに立ち上がり、腕を上に伸ばして背伸びをする。そして、覚束ない足取りで川辺に向かう。


 川の冷水を手で掬い、顔を洗う。


 「よし! 目が覚めた!」


 完全に意識が覚醒したところで、川の中に顔を突っ込み、冷水で喉を潤す。


 「ふぅ…美味かった」


 濡れた口元を手で拭い、魔物を狩るために草藪を掻き分け、森の中に入る。


 今日は幸先がよく、既に蛇と兎?を一匹ずつ狩ることができた。まぁ、流石にこれだけでは空腹が満たされないので、さらに魔物を探す。


 すると、四つの反応を捉えた。また、ゴブリンか犬のような頭部をした魔物が集団で行動しているのだろう。


 今更慌てる相手ではないので、奇襲してやろうと近づいていく。


 しかし、四つの反応の正体はゴブリンでもなく、犬のような頭部をした魔物でもなかった。


 「…あれは…人間だ」


 人間だと分かった瞬間、近くの木の陰に身を潜める。


 俺は警戒心を高めながら様子を伺った。


 


 

 

 

 

 


 

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