第3話 ゴブリンに転生
気がつけば太陽の温かく優しい光が差し込む森の中に立っていた。
「…転生場所が森の中というのは親切じゃないな」
微風に揺れる枝葉の音や鳥の鳴き声が聞こえるので、異世界に転生したというのに心は落ち着いている。
しかし、一つ違和感がある。
木々は高層ビルを見上げた時のように聳え立ち、草花は膝上に迫る勢いだ。
まるで、小学校低学年の時に見ていた景色に似ているかもしれない。
「もしかして…背が縮んでいる?」
次第に感じる違和感が大きくなり、視線を下に向け、腕や足を確認する。
「えっ!? 肌の色が…緑色だ…」
現状を理解できず、徐々に不安と困惑が込み上げてくる。
「ふぅ…落ち着け。取り乱したとしても何も解決はしない」
神様は言っていた、異世界に転生させると。その世界は異世界モノの小説やアニメに類似した世界だった。
異世界転生といえば、この世界に胎児として転生し、両親に育ててもらいながら成長するものだと思っていた。
しかし、転生した場所は森の中で、肌の色が緑色であることを考えれば、一つの可能性が浮上してくる。
それは人外転生。人族以外の人類種や魔物に転生すること。
「まぁ確かに、神様は人族に転生させるとは言ってないが、他にも異世界人がいると聞けば、普通人間に転生すると思うだろう…」
まさか人外転生が待っているとは…いきなりハードモードだな。
さて、いつまでも愚痴ってても仕方がない。まずは俺が何に転生したか、だな。
どうやって確認するか…そういえば、この世界は魔法やスキルがある世界だ。ならば、自分自身が所持している魔法やスキルを確認する方法があるだろう。
その一つとして、脳内や視界に表示されるステータス画面。基本的には「ステータス」や「ステータスオープン」と発言すれば確認できる。
よし! やってみよう!
「ステータスオープン」
すると、視界にステータス画面が表示された。
【ステータス】
・名称 ゴブリン
・性別 雄
・種族 小鬼
・称号
・加護
・Lv.1
・魔力 12
・筋力 10
・頑丈 10
・敏捷 12
・知力 10
・精神 10
・器用 12
・幸運 22(12+10)
【スキルポイント】
残量 0
【スキル】
[ユニークスキル]
・【強欲】Lv.1
「本当にステータス画面を見ることができた。少し感動を覚えるが…そうか…ゴブリンかぁ…」
ゴブリンって、スライムと一緒で魔物の中では最弱格だよな。それに側から見ればゴブリンにしか見えないわけで、中身が人間でも討伐対象になってしまうわけだ。
人類種同士の戦争には巻き込まれないかもしれないが、人類種の糧として討伐されたり、他の魔物と生存競争をしないといけないとなると、やっぱり人族として生まれたかったなという気持ちの方が大きい。
「はぁ…仕方ない。もう後戻りはできないんだから、これから生き抜くためにも、他の情報に打開策はないか確認しよう」
レベルは1。きっと、人類種達は魔物を討伐してレベルを上げていくのだと思うが、魔物はどのようにしてレベルを上げることができるのだろう?
捕食対象である人間を倒した時? あるいは同じ魔物を倒した時でもレベル上がるのか? これは検証していくしかないな。
魔力と能力値は全て10以上。特に魔力と敏捷、器用、幸運が優れているようだ。
あとは、人類種や他の魔物もレベル1で魔力や能力値が10前後なのか気になる。
流石に人類者はレベル1で魔力や能力値が20前後くらいはありますよってなると、魔物は脅威にならないわけだから、人類種も魔物も公平であることを願う。
スキルポイントの残量は0。おそらく、レベルが上がると増えるのだと思う。
ステータス画面にはこの世界に存在する職業やスキルが一覧として閲覧できる。
魔物が職業に就くというの考えられない。人類者は職業を選択し、色々な恩恵を得るのだろう。…めちゃくちゃ羨ましいんだが!?
1レベルアップでどれだけのスキルポイントが増えるか分からないが、5ポイントでスキルを獲得できるみたいなので、積極的にレベルは上げてかないといけない。
そして、一番気になっていたスキル欄。何故、一つしかない? 神様は転生者に魔法とスキルを合わせて三つまで与えると言っていた。
俺には一つしかないんだが? 魔物に転生したあげく、スキルが一つしかないって…どうやって生き抜けばいいんだよ!?
もしかして、神様は俺に嘘をついたのか? そんなことがあり得るのか?
…はぁ…盛大に文句を言ってやりたいが、今更戻ることはできない。
では、俺に与えられたこの七つの大罪を冠するスキルはどのようなものなのか、確かめるとしよう。
【強欲】Lv.1
対象の所持する魔法やスキルを強奪するスキル。
・生者(強奪確率)
レベルが下→10%
レベルが同→10%
レベルが上→0%
・死者(強奪確率)
レベルに関係なく100%
「…確かに強力なスキルではあるな」
七つの大罪を冠するスキルなだけあって強力なスキルであることは間違いないが、それでもレベル1。
レベルの上限が分からないが、即効性はない。強奪確率10%って…低すぎないか?
それに対峙している時はほぼ戦闘に発展する可能性が高い。その間に10回も強奪しようとしても、戦闘に集中できず、殺される可能性がある。
だから死者、というか倒した対象ということだろうと思うが、戦闘に集中して倒し切ってからの方が安心安全に魔法やスキルを奪えるから、生者から強奪するのは現実的じゃない。
まぁ、レベルが上昇したら確率も上がると思うから、生者から魔法やスキルを強奪するのは高レベルになってからだな。
現状の確認はできた。
まずは今日の食糧や寝床を確保しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます