破壊
僕は攻撃の手を緩めることなく、今度はパソコンの頭上にフライパンの側面を振り下ろす。
しかし案外頑丈に出来ているようで大きな衝突音こそ立てるもまだまだ少し傷が付いただけで壊れる気配すらない。
作戦を変え、パソコンのディスプレイを上にして床に置き、フライパンを思い切りディスプレイ目掛けて振り下ろす。
その瞬間パソコンはガシャッと大きな立てる。
流石に耐えきれなかったようでフライパンを上げるとディスプレイには大きな亀裂が広がっていた。
僕はこれに味を占め、もう戻れないことを感じながら興奮していた。多分僕は人生で一番脳内麻薬を出している。
もう一度、さらにもう一度、何回もフライパンを叩きつける。
今度は横から、今度は振りかぶって、蹴って殴って何回も何回も。
何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も。
……どれほどたっただろうか、体感では1時間ぐらいぶっ通しで叩いていた気もするが、実際時間は案外2分くらいなのかもしれない。
アドレナリン……いや?ドーパミンだったか?脳内麻薬と言うものは恐ろしい。
1時間と2分の時間の違いも分からないほどに何回も叩き潰した結果、目の前にあったのは内部が完全に露出した、ただのスクラップの鉄屑、言うなればかつてパソコンだったものだった。
床には破片が散らばって9畳の片付けていない部屋を圧迫し、飛び出た基盤は割れ、配線は露出しており、ディスプレイは粉々に砕け散り、原型を留めていない。
これのもとがパソコンだと言われなければパソコンだと気付くのにかなり時間かかるレベルだ。
だとすると、この惨事に掛かったは2分という時間などあり得なかった。多分10分くらいじゃなかろうか。
「はぁ………はぁ……」
ただフライパンを振り回し叩きつけるだけでも、11年間引……いや、僕にとってはかなりの運動量だった。
息切れは止まらず、動悸もする。
だが僕は成し遂げたのだ。たくさんの因縁や思い出が詰まったパソコンの完膚なきまでの破壊を。
やり過ぎだとか、断じてそんなことはない。こうでもしないと僕はすぐに三日坊主になってしまう。
こんなことをせずとも変われるなら、すでに社会復帰を果たしている。
……思えば僕はずっと昔から、限界まで追い詰められてからしか行動を起こさなかった。
夏休みの宿題、試験勉強、どれも期日が迫ってからしかやらない。ある意味典型的な学生だが、僕はその度合が、日常的生活においても異常なのだ。
学校から出る毎日の宿題や、今は無き友人に頼まれていたこと……他にも色々なことが毎回のように全部ギリギリ。
だがそのどれも完璧に近いクオリティでこなすものだから随分たちが悪かっただろう。
もちろん常日頃からやっているやつには及ばないが、成績などもだいぶ良い方でよく
「やれば出来るのに……」などと言われたものだ。
だからといってその言葉を今も頼りにしているわけではない。昔はどうだったか忘れたが今となってはただの戯言だ。
そしてそんな僕にとって引きこもり状態での締め切りが無い=追い詰められないという状況は恐ろしかった。
何か行動を起こさねばとなっているのに物理的な締め切りがないせいでいつまでたっても行動に起こせない。
完全に自分のせいなのだが、こんなにも時間が経ってしまった。
だからこそ今度はパソコンを完膚なきまでに破壊したのだ。自分を追い詰め、後戻りが出来ないように。
となると動画をアップロードするのも同じ意味を持つかもしれない。
一応カメラには散髪からパソコンを破壊した様子まで撮っている。
ここまでの行動をまずはアップロードしてみようか……
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