第6話 長老の所で修行

 エルフの里には目覚まし時計なんてものはなく、起きるのは鳥の鳴き声。


 まさに理想通りの朝。



 そして、いつも通りの金縛り……多分サリアが私の上にいるのだろう。

 ゆっくり目を開けると案の定サリアがいたけれど、馬乗りではなく自分の上に寝ている感じだった。

 お姉ちゃん学校に行ったり旅に行ったりしたら、一人で大丈夫かな?

 疑似体験を経験する前までは、ここまでべったりではなかったのに……


 「お姉ちゃん起きたから、サリアもそろそろ起きて!!」

 「お姉ちゃんもうちょっと……」

 「今日から長老の修行に行かなきゃ行けないの!!」

 「大丈夫。私も一緒に出るから〜もう少し寝る〜」


 全くどく気ははないようだ。

 掛け布団の上に妹は寝ているので、こっそりどかしてベッドから出る。



 私は朝起きたら必ず太陽の光を浴びる。

 疑似体験で、起床後の日光浴は体内時計に良いとか聞いたことがありそこから実践している。

 実際に試してからは朝の目覚めが良くなったので、今でも続けている。

 こないだ紗夜ちゃんに疑似体験の知識は有効なのか聞いたが、有効と言っていた。

 生きてクリアできるのなら無駄な知識を蓄えさせるのはさすがに身が引けると言っていた。

 そこにリアリティを求めるのなら可愛い妹の1人でも用意して欲しいところだが……



 疑似体験だから友達ができなかったのでは?と問いかけたが、しっかり友達ができるように設定してあったと言っていた…… 。

 私が紗夜ちゃんしか友達がいなかったのは友達作るスキルが無さすぎるせいだよね……。


 魔力贈呈とかよりもコミュニケーション能力贈呈とかの方が全然嬉しいけど、紗夜ちゃんも紗夜ちゃんで友達があまりいない人生だったらしいので魔力で良かったのかもしれない……。

 そんな感じで日光浴を終了し、顔を洗った後にリビングへ。


 私とサリアのパジャマは、小さな猫ちゃんが沢山書いてある。私は背景が水色にでサリアはピンク色。


 このエルフの里猫好きすぎだろ!!



 「おはよう」

 「「おはよう」」


 お母さんは、ご飯の準備。お父さんは観葉植物に水を浴びていた。

 お母さんは可愛いカエルのエプロン。

 こちらもお父さんからのプレゼントらしいが、何故そこまでカエルをあげたがるのか?マジで謎。



 お父さんは今日は仕事らしい。

 ちなみに仕事は里の安全確保や、里外に出て魔物を倒してギルドでお金に換算すると言っていた。

 チームワークで動いているから、何かあっても大丈夫らしい……。


 疑似体験では、魔物と闘うといった命のやり取りは一切なかったから結構心配。



 「もうすぐ朝食できるからサリア呼んできて!!」

 「はーい」


 お茶の1口も飲まずして頼まれてしまった。

 リビングにやって来なかったサリアを起こしに自室へ


 「もう起きて。お母さんが朝食できるって」

 「えー。もうちょっと。」

 「ほら、わがまま言わないの。お姉ちゃんが連れていったあげるから」

 「はーい」


 そう言いながら行動しないので、腕を引っ張って洗面台に行った後にリビングへ。

 もちろん寝ぼけている妹のために顔をふくタオルを出すのも姉の立派なお仕事だ。

 全くお姉ちゃん感をここまで出すことになるなんて予想すらもしてなかったよ。


 「おはよう」

 「「おはよう」」


 顔まで洗ったのに眠そうな声。

 リビングには、コッコの目玉焼きとキノコソテーと山菜の炒め物と食パン……。

 エルフの里でお米を食べたことがないけれど、エルフの里にはあるのだろうか?

 疑似体験では、毎日のようにお米を食べていたから食べたくてしょうがない。

 お米でお酒とかも作れるし、作っていないのなら是非作って欲しい


 ちなみに食パンは里内のパン屋さんでまとめて買ったものだ。

 出来たての食パンを食べたことがあるがふわふわでもちもち。いつでも食べたいレベルで美味しい。


 「「いただきます」」


 まずはコッコの目玉焼きを1口。

 うん。疑似体験時の卵の目玉焼きと一緒。

 あちらの世界では、醤油はソースはとかで争っていたけれど、我が家(現実)では何もつけない派。

 もちろん疑似体験時には、醤油派でしたけどね!!


 キノコソテーは、バターで炒めていてキノコ本来の味わいとまろやか感が口いっぱいに広がって美味すぎる。


 山菜の炒め物もしんなりしていて美味しい。

 そこ間にパンを挟んで食べるけどやっぱりご飯が食べたくなる。

 疑似体験時にもっとご飯を食べておくんだった……


 お父さんは里外に出ていると聞いから、今度お米があったら買ってきてもらおう。


 「「ごちそうさまでしたあぁぁ」」



 台所まで食器を運び、部屋に戻る。

 クローゼットにある外用の服(お母さんが買ってきた服)に着替えて準備完了!!上はワイシャツみたいな感じに下は黒い長ズボン……ほぼ学生服。


 「今日から修行だけど、気分はどう?」

 「少し緊張するけど、体調面は大丈夫だよ。ありがとね」


 紗夜ちゃんも元指導者だから、生徒さんの気持ちが気になるのかな?


 「長老のところが終わったら、紗夜ちゃんよろしくね」

 「おk」


 紗夜ちゃんの修行に関しては全く緊張がしない。

 疑似体験時、仕事やプライベートでも一緒に居たから信用しているからだろう。

 リビングに戻りサリアの着替えを待ち。


 「今日から長老のところで修行するって言ってたけど気をつけるんだよ。魔力は体内で暴走することもあるから」

 「分かった。ありがとう」


 お父さんは少し心配そうに声をかけてくれた。お母さんは、楽しんできて!!と笑顔で声かけてくれる。


 「お母さん。水筒!!」

 「もう用意してるから、2人とも持っていってね」

 「「はーい」」


 サリアがリビングに戻ってきた瞬間に水筒とは……。なんて優秀な妹なんだ!!

 水分不足などが原因で熱中症になり疑似体験を終了させてしまった私とは大違い!!頼もしい


 「「行ってきます!!」」

 「行ってらっしゃい」


 行ってきます。いってらっしゃい。を言えるって本当に幸せだな。

 疑似体験では、一人暮らしだったから家に帰っても1人っきり。

 だからこそ、今まで当たり前に感じるていたことがどれだけ幸せなことなのか。と感じる


 サリアの格好は白Tシャツ(カエルの絵柄)に黒の長ズボン。


 またしてもカエルだ……


 もはやカエルの呪いにかかっているのか?レベルで家を侵食してきている。


 騙されないぞ!!



 サリアと手を繋ぎながら里の裏庭に一緒に出かけた。

 巨乳を揺らす姿を見ても全然羨ましくないんだからね。


 「お姉ちゃんは、初めてだから魔法のコントロールからだと思うよ!!一人一人に合わせて指導してくれるから大人気なんだ!!」

 「何人ぐらいが受けに来るの?」

 「私たち入れて4人だよ」

 「……」


 この里には子供がこれほどまで少なかったのか?

 長寿であるエルフだから少子化問題とかおきないと思うけど。

 てか、私みたいに部屋から全く出ない子も多いのかもしれないな……


 「お姉ちゃんまた変なこと考えてるでしょ。長老の訓練は2、3年すれば卒業!!って感じだから人数が4人なんだよ。しかも、全員私より年下だし」

 「……」


 お姉ちゃん行かなくてもいいかなぁ?と声に出したくなってしまったけど、こらえた。だって旅のためだもん。


 我が家では、しょっちゅうお酒が飲める訳ではなく祝い酒程度。

 酒好きな私からすれば全く物足りない!!早く家を出てお酒を飲みたいところだ。

 お酒は、飲んでも呑まれるなと言うがほんとにその通りだと思う。

 疑似体験時に家飲みで飲みすぎて頭がかち割るかと思った経験を何度したことか。

 ついつい飲みすぎてしまうから、気をつけようね。 



 歩き足を止めることなくサリアと話しているうちに里の裏庭に到着。

 そこには長老の他に男女1人ずついた。2人とも小学生を、感じさせるような小ささ。

 もちろんカエルの服ではない。二人は猫の服を着ている…。


 動物系が流行ってるのか?


 「これで全員揃ったな。今日から一緒に勉強するアリアとサリアだ。仲良くするのじゃよ」

 「「はーい」」


 なんて可愛いお返事なのだろうか?

 幼稚園児を眺める為だけにボランティアに行くほどだった私からすると幸せな時間。

 長老は私以外に指示を出した後私に向かってくる。



 「サリアは、身体強化ができると聞いたから魔法についての説明は省略する。アリアは今回が初めてだからまずは魔法について説明する。魔法というのは体内に存在する魔力を使って自身の強化だったり、火などを出すことだ。使えば使うほど精度が上がったりするから我々エルフは重宝されている。そもそもエルフが魔法の」


 長老、話長いよ!!


 最初の魔法については、しっかり聞いていたが今なんかエルフの歴史について語りだしちゃった。

 もしかしてこれを乗り越えたからこそ、エルフというのは魔法が強くなるかもしれない。


 そんな感じで長老がはなすこと2時間。


 「って感じで魔法は大事なのだ。わかったかな?」

 「はい!!」

 「すまんすまん、話しすぎてしもうた。次回からは実践だから今日みたいな動きやすい服装で来ておくれ。人数が増えて孫たちも気合いが入ってるみたいだから、負けずに頑張っておくれ」

 「はい」


 やっぱり、長老のお孫さんだったのか。だから猫。

 長老の家のコップも猫だったし、長老家では猫が大ブームみたい。

 それにしても羨ましい!!

 私も猫が大好きなのに家で流行っているものはカエル。

 別にカエルが嫌いという訳では無いが家の中がカエルだらけになってしまったら、ショックで家にいたく無くなる。

 癒し効果なんてないと思ってるし、マジで羨ましい!!


 「では、今日はここまで!!また明日も遅刻せずに来るんじゃよ!!」

 「「はーい」」


 ここで解散!!と思いきや、長老のお孫さんが話しかけてきた。


 「お姉ちゃんはサリアお姉ちゃんのお姉ちゃんなの?」

 「全然似てないけどどうなの?」

 「そうだよ。お姉ちゃんはサリアのお姉ちゃん。アリアって言うんだよ。君たちのお名前は何?」

 「私はマーサ」

 「僕はラッサー」


 なんて可愛いのだろうか。このまま家に持ち帰りたいぐらい。サリアも十分に可愛いけど、これぐらいの年齢の子は見てるだけで癒しになる。


 長老が羨ましすぎる!!


 こんなにもかわいかったら、ついつい猫のTシャツとかあげたくなってしまうよ。マジで共感!!


 私が2人を可愛げに見ていたのが気に入らないのかサリアは、少しほっぺたを膨らませている。


 「今日はもうおしまい!!質問は明日受け付けるから、お姉ちゃん帰るよ」

 「えっちょっと!!」

 「「ばいばーい」」


 サリアに手を引っ張られて自宅に帰宅する羽目に!!

もしかしてヤキモチ妬いちゃったのかなぁ?

 家でも結構べっとりだり。もしかして、シスコン!!

 まぁ〜こんなに可愛い妹に嫉妬されるのなら別にいいけどね。


 「お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなの!!2人のお姉ちゃんではないんだから気をつけてね」

 「はーい」


 ほっぺたを膨らませたまま言うサリアはなんて可愛いのだろうか?

 もはや私もシスコンになってきてると思う。

 この後は紗夜ちゃんとのトレーニングがあるから、サリアに嘘をつかなくては行けないのが少し心細いが……


 そんな感じで裏庭から自宅までゆっくり話しながら帰っていった。


 「「ただいま!!」」

 「おかえり〜」


 お父さんの声がしなかったからもう出かけてしまったのだろう。

 いってらっしゃい が言えなかったのは少し寂しいなぁ。



 家に帰ると手を洗いリビングへ。


 お母さんがいる状況で出かけないと絶対にサリアはついてきてしまう。


 でもその前に休憩!!



 今日から実践だと思ったのに二時間も話を聞かされたから少し疲れた。

 冷蔵庫を開けるとお茶とお水、それに見たことの無い液体があった。


 「お母さんこれなに?」

 「これはね。苦り茶。良薬は口に苦しというように、非常に苦い代わりに傷を癒してくれる効果があるのよ。お父さんがいつ怪我して帰ってくるか分からないからね。」

 「そうなんだ。」


 さすが、お母さん。

 結婚生活で亀裂が入る家庭が多いも疑似体験でよく言っていとけれどうちは全く違う。

 今でもイチャイチャしてるぐらい仲がいいのは我が家が珍しいのか?エルフはそういう種族なのか?

 謎が積もるがお母さんが、優しいっていうことで考えは終わった。

 私は両親の子で良かったなと改めて思う瞬間だった。



 コップ(透明で犬デザイン)にお茶を注いで、ゆっくりした後、外に出る時間になった。


 「お母さん。ちょっと出かけてくるね。」

 「お姉ちゃんどこ行くの?」


 お母さんにウインクで助けを呼ぶが、なかなか助けてくれない。

 サリアなんて、私のことずってみてどこにも行って欲しくないような目で訴えてくる。


 「お姉ちゃんはね。ロボットさんと訓練してくるんだよ。」

 「お母さん?!」


 慌てて家中響き渡る声を出してしまった。

 内緒にするはずが、堂々と妹に暴露したら誰でも驚くだろう。



 …………紗夜ちゃんごめんね。


 お母さんがあっちに回ったらもう無理みたい。私は諦めるのであった。


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少し前に初めてコンタクトを目に入れましたが、無意識に眼球が拒否して動きまくる!!そのせいでコンタクトを入れるのに時間がかかるし、入れ終わったら目が真っ赤になってるしでほんとに大変……ちょっとずつ上手くなってると思うけど、未だに拒否反応が辞められない……


【追加】

長老の孫娘 マーサ

長老の孫息子 ラッサー


【今後の予定】

10話に達するまでは1日1話公開予定!!毎日0:00に公開します。 その後は水、土曜日に更新予定です。

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