第5話 紗夜ちゃんありがとう
あれ?なんか体が動かない……。
寝違えたってここまでなることは無いはず。もしかして、これが金縛りってやつ?!
怖いけど、思い切って目を開けないと。
でも、一気に目を開けて目と目があったら怖いよね……。
ゆっくり目を開けよう。
ゆっくりね……。
「お姉ちゃん!! 起きて!! もう朝だよ!!」
「?! サリア?」
「そうだよ。もう起きて!!」
私のドキドキ返せ!!
サリアは私の上に寝っ転がっていた……。驚かせやがって。
そもそも、ほぼ引きこもりで、家族ともあまり話さなかった私に対してこんなことをしてくれるとは、サリアの中で私に対する感情が変わったのかな?
「これからいっぱい遊んでもらうからね!! 私気づいたんだよ。お姉ちゃんがいなくなって、こんなに悲しくなるんだって。だから、いっぱい遊んで貰うことにしたから!! だから、起きて!!」
「気持ちは嬉しいけど、お姉ちゃんまだ疲れてて、もう少し寝たいかな?」
「もしかして、お姉ちゃんどこか具合が悪いの? 大変だよ!! お医者さん行かなくちゃ!! お父さんとお母さんにも言わないとだし!! どうしよう!!」
サリアは、私の上で寝っ転がりながら、ああでもない。こうでもない。と慌ただしくしている。
はぁ。今日はもう寝れないのか……。
もう少しだけ、ぐっすり寝たかったな。
私は少し疲れた声でサリアに話しかけた。
「やっぱりお姉ちゃん起きよっかな? どこも悪くないし、サリアと遊びたい気分かも!?」
「!! やった!! 今度ね、お姉ちゃんと一緒にパン屋に行きたいんだよ。いつもお姉ちゃん家に居て来てくれなかったでしょ。楽しみだな。」
「機会があったらね。」
「楽しみ!!」
棒読みの私に対して、サリアは一緒にパン屋に行くことが決まると、今まで見たことがないぐらい嬉しそうな顔になった。
パン屋ぐらいなら、いつでも行くのに。それにしても、疑似体験に行く前の私、そんなに無愛想だったのかな?
今では想像すらもできないな。
その後、妹に連れられ1階にて顔を洗いリビングにいった。
「おはよう〜」
「おはよう」
欠伸をしながら言う私と違い両親はすっかり目をさまして、ハキハキとした返事で返答してくれる。
今日はお仕事がお休みなので、ゆっくり寝てもいいのになんでこんなに早く起きているのか……。
疑問は残りつつ用意されたお茶を1口飲んだ。
「アリア体調の方は大丈夫かしら?」
「昨日の今日だし、今日は家でゆっくりしてな。何かあったら、お父さん休みだから、なんでも手伝うぞ!!」
「ありがとう。今のところ、体で変なところがないし、ぐっすり眠れたから安心して。」
「「良かった。」」
両親は、安心したのかお茶を飲みながらニコニコと笑ってくれた。
娘が一週間も家出し、体調が悪いのではないかって心配するよね。
これからはあまり心配かけないようにするから。
「それとアリア聞きたいんだけど、この一週間どこにいたんだ?」
「そうよ。何があって一週間もいなくなってしまったのか詳しく教えてね。」
「……。」
ああああああああぁぁぁ!!
やってしまった!!
昨日はすぐに寝てしまった為、紗夜ちゃんと作戦会議もできず全く話の内容を考えていない。
そもそも、紗夜ちゃんのことも話せないし……。
……マジでどうしよう。
私が「どうしよう。どうしよう。」と慌てていると、隣から助け舟?を出してくれる。
「お姉ちゃんね。旅行に行ってたんだって!! 昨日サリアが聞いといたよ!!」
えっへん。とした態度でサリアは返答してくれたが、両親は私の顔を見て怪しんでいる……。
こんな言い訳が聞くのはお子様だけだよね。
何とかして、この場を誤魔化し、紗夜ちゃんと作戦会議をしなくては!!
どうするアリア。考えろ!!
無言な時間が続けば続くほど、両親の顔色が真っ青になっていく。
「あっれだよ。あれ。ええっと。ずっと家に閉じこもっているのも良くないから。少しでも外の世界に行って外の世界の素晴らしさを知りたかったと言いますか……。あれ? なんか眠くなってきたから寝てこよっかな……。」
「なら、アリアの部屋で返答の続きを聞きましょうか?」
「今言います……。」
完全に終わった……。
里のみんなは男絡みとか意味わからないこといってたが、もしかして二人ともそう考えているのでは……。
本当のことを言いたいが、紗夜ちゃんのことは秘密にする約束だし、そもそも言っても信じてもらえなさそうだし……。
本当にどうしたらいいんだ!!
私は無意識に頭を抱えていた。
「サリア。長老に昨日のうさぎのお肉を持っていきたいんだけど、持って行ってくれる?」
「えー!!お姉ちゃんのお話聞きたい!!」
「その後にお姉ちゃんのお話聞きましょうね!! 帰りにパン買ってきていいから」
「パンは今度お姉ちゃんと一緒に行くって約束しちゃったもん。」
「そうなのね。今日のお昼はサンドイッチにしようと思ったのだけど……。それはまた今度でいいかしら?」
「サンドイッチ?! 約束だからね!! 絶対だよ!!」
サリアは目を輝かせながらお母さんを見つめる。
お母さんが作るのサンドイッチは、キノコの炒め物が入っていたり、謎のサラダが入っていたりしてすごく美味しいのだ。
さすがにサンドイッチには勝てないよね……。
お母さんは、おっそわけのお肉とお財布をサリアに渡す。
財布は、愛用のお財布はカエルのがま口財布……。
前に1度聞いたことがあるが、お父さんから貰った宝物らしい。
サリアは、お母さんから渡されると、元気な声で、「行ってきます!!」と言って出ていった。
「サリアも居なくなったし、正直に話してもらおうか。」
……。
それにしても、お父さん圧が怖い。
その圧に負けて本当のこと話しそうだし……。
もうどうしたらいいの!!
私は考えすぎて頭の中がぐにゃぐにゃになる感覚がする。
何か言い良いわけは……。
考えろ。考えるんだ!!
「すまない。アリアには少し実験を手伝ってもらってた。だから、1週間程自宅に帰宅することが出来なかった。申し訳ない。」
「? ディーロ? アリア? どっちが話したの?」
「違うぞ」
「私も違うけど……」
紗夜ちゃん!!
もうどうしようもない状況だけど……。
助けて!!
紗夜ちゃん!!
今まで何も無かった空間から、急に球体のロボットが現れ浮かんでいた。
状況が理解出来ないお父さんとお母さんは、頭の上に?が並んでいる。
「……何かしらこれ?」
「こんなもの見たことがない……」
「紗夜ちゃん……」
「こんな形で再開するとはな。久しぶりだな、見た目は変わったが、この里で生きていた紗夜だ。今回のことは本当にすまないと思っている。ここまで長期間になる予定ではなかったが、ついアリアと話が進んでしまってな……。実験と言っても、マルバツ問題を答える程度のものだから気にしないで欲しい。」
「あなた……。機械が……。紗夜さんって言ってるわよ……。」
「ああ。信じられない……」
私は疑似体験があったおかげで紗夜ちゃんのことを信じることができたが、お父さんとお母さんは信じることができないだろう。
そもそも、死んだことになっているエルフが生きているんだから、信じられないだろう。
お父さんとお母さんは、必死に理解しようとしているが、常識が邪魔をして、混乱している。
「詳しいお話をしようと思うのだけど、二人とも大丈夫だろうか」
「「……」」
そこから2人が落ち着くのを見て、紗夜ちゃんがこの一週間起きたことを誤魔化してくれた。
なんでも、この里に珍しい植物が生えていて、それの手伝いをしてもらったとか言っていた。
その事を聞いた二人は口をポカンと開け、頷くことしかできていなかった。
「仮にアリアがそのような理由で居なくなったとして、あなたは本当に紗夜さんなんですか?」
「証明しようにも難しいな……。二人の昔話でもすればいいのか?」
「ただいま!!」
「えっもうそんな時間!!」
「サリア?!」
以外にも早く帰ってきたサリアに驚きながら、この場はお開きになった。
紗夜ちゃんは、サリアが寝たらまたやってくるらしい。
紗夜ちゃんのいた場所は今までと何も変わらない空間に戻った。
サリアが帰ってからは二人とも何か腑に落ちない様な感じで一日を過ごしていた。
そしてサリアが寝ると、先程と同様に何も無い空間から、スっと紗夜ちゃんが現れた。
「状況を確認しますが、昔を私たちに魔法を教えてくれてた紗夜さんが、ロボットになって生きてたって事? それでアリアに植物の採取みたいなことを依頼していたってことですか?」
「そんな感じだな。」
「……。」
「これから、昔のことを話して私のことを信用してもらえるようにする予定だが、アリアはこの場にいた方がいいか?」
「そうですね……。一旦席に外してもらいましょう。少し恥ずかしい話もあるかもしれませんし……。」
「それはそうだな!!」
そうして、私は一回自室に戻った。
その間紗夜ちゃんとお母さんとお父さん三人で話し合い。終わり次第読んでくれるらしい。
しばらくだった後、お母さんが私を呼びに来て一緒にリビングへ行く。
「待たせてごめん。信じられないが、間違えなく紗夜さんだよ。」
「私も話したけど、私と紗夜さんしか知らない話を全て知っていたから、信じるしかないよ。」
「私も二人に信じて貰って良かったよ。」
お母さんとお父さんは、なんとも言えない顔をしている。
紗夜ちゃんは、わかってもらえて嬉しいのか声色がさっきより良くなっている。
「二人と話して盛り上がっている内に本当の事話しちゃった。ごめんね!!」
「紗夜ちゃん!!」
「本当のことがしれて、良かったよ。アリアが嘘をついたのは悲しかったけど、それ以上の悲しい話を聞くことがなくて良かったよ……。疑似体験ってすごいんでしょ。」
「うん。一言で表せないぐらいにね。」
「無事に帰ってきて本当に良かったわ。」
和やかムードの中、それを崩すように紗夜ちゃんが話し始める。
「ほんとここで話すことでは無いと思うんだけど、ひとついいかな?」
「「?」」
「実は、今すぐにって訳では無いんだけど、アリアとこの世界を見て周りたいと思ってて。それにアリアも賛成してくれてるんだけど……。戻ってきてあまり経ってないのにこんな話して申し訳ないんだけど、あまり後々で話す話でもないと思って。頭の片隅にでも入れといてくれないか。」
両親の顔はすごい不安な顔とどうしようと迷った顔をしている。
「お言葉ですが、この子は全くと言っていいほど魔法の勉強をしてきませんでした。エルフは、人並み外れた美貌等で襲われる原因にもなりますので、旅に出るにはまだ早いかと。もし行くとなっても数十年後になると思います」
「それもそうだな。」
お母さんがお父さんを差し置いてここまで発言するのは珍しい。
こんなお母さん見たことがない。
旅をして、色んな風景を見たり、感じたりしたいが諦めなくちゃかな……。
せっかく異世界にやってきた感が出てるんだから、旅に出たい!!
「お母さん。お父さん。私も紗夜ちゃんと旅したくて、これから本気で勉強して魔法も沢山使えるようになるからダメかな?」
「ダメとは言ってないんだけど……」
「魔法が使えればいいんだよね。紗夜ちゃんに教えてもらうから!! それに、紗夜ちゃん曰く私に魔力を上げたって言ってたから、順調に魔法も覚えそうだし。」
「魔法の勉強だけでは、この世では生きていけない。仕事でもそうだが、冒険をするならチームで動き何かがあったら助け合いするのが当たり前になってくる。もし、本気で行きたいのなら1年間は長老と紗夜さんに修行をしてもらい、その後学校に通ってもらうことになるがそれでも行きたいか?」
「うん。私はそれでも旅に行きたい。」
「分かった」
「ディーロ!!」
「すまない。ディーロ。ウサ……」
お父さんとお母さんが意見が食い違ったが少し話し合いをした後、結局お母さんが折れてくれて条件を達成したら旅に出ていいことになった。
「ほんと今日は驚きっぱなしだわ。」
「そうだな。」
「「ごめんなさい。」」
「それにしても、紗夜さんはご飯とは用意した方がいいのでしょうか?」
「気持ちはありがたいが、この体では食べることができないから大丈夫だ。それと、せっかくの家族の時間を邪魔したくないから大体は姿を見せないから安心して」
「分かりました。」
その後私は自室に戻りベッドで寝るが紗夜ちゃんは、まだお母さんとお父さんとお話をしてる。
今日は紗夜ちゃんが出てこなかったら何も出来なかったと思う。
ありがとう。
私はそのまま目をつぶって寝たのであった。
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今回のお話で学園ものになることが確定しました!!本来は学園物語を作る予定ではありませんでしたが、このまま旅に出るとお話が少しおかしくなってしまうのでは!!ということで学園編を追加しました(その前に長老などの講座有り)。 旅小説にする予定がズレにズレまくっているのが少し心配です。学園編が終わる頃には旅のこと忘れていたりして(アワアワ)。後で、パン屋のお話も詳しく書こうと思っているのでお楽しみに!!
【追加項目】
お母さん ウサ
お父さん ディーロ
【今後の予定】
10話に達するまでは1日1話公開予定!!毎日0:00に公開します。 その後は水、土曜日に更新予定です。
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