第5話 紗夜ちゃんありがとう

 「お姉ちゃん!!起きて!!もう朝だよ!!」

 金縛りにあった感覚と同時に声が聞こえてくる。


 「1週間も会えなかったんだから、これから沢山遊んでもらうからね!!ねぇ起きてよ!!」

 「お姉ちゃん起きてるからね。だから下行っといて」

 「お姉ちゃんそう言っていつも2度寝するでしょ!!今日は起きるまで、見張ってるんだからね!!」



 本日は2度寝ができないアナウンスがされました。


 悲しくなりながら、目を開けると妹のサリアが私に対して馬乗りになっている。



 「お姉ちゃん苦しいからどいてくれないかなぁ?起きてるから、2度寝しないから!!」

 「ほんと?嘘ついたら、パン屋さんでパン買ってもらうからね!!」


 顔を膨らましながら言う妹はなんて可愛い存在なのだろうか?

 疑似体験でも、こんな妹を登場しても思う。現実でないのなら、最高のシチュエーション作り放題なのになぜ登場させなかったのか……



 全く紗夜ちゃんは分かってないなぁ〜



 そう重いながら、被っている布団を退けてベッドから出る。

 その後、妹に連れられ1階にて顔を洗いリビングへ。


 「おはよう〜」

 「おはよう」


 欠伸をしながら言う私と違い両親はシャキッとしている。

 今日は2人とも仕事は休みらしいけど、何故早起きなのか?

 疑問は残りつつ用意されたお茶を1口飲んだ。


 「アリア聞きたいんだけど、この一週間どこにいたんだ?」

 「そうよ。大事な事だからしっかりと教えてね!!」


 来てしまった。

 紗夜ちゃんのことを話すことができないから、なんて答えればいいのか……。



 ……マジでどうしよう。



 流石に、1週間もいなくなったら、理由聞くよね……



 「お姉ちゃんね。旅行に行ってたんだって!!昨日サリアが聞いといたよ!!」



 昨日焦って適当に言ってしまったことを後悔することになるとは……。

 妹は納得している感じだったが、親に通じるわけが無い。ほんとどうしたものか……。

 昨晩考えてから寝るべきだったが、どうせ考えながら寝てただろう。


 私が焦っている表情を察し、よからぬ事をしたのではないかと両親の顔の雲行きが悪くなる。


 「あっれだよ。あれ。ええっと。ずっと家に閉じこもっているのも良くないから。少しでも外の世界に行って外の世界の素晴らしさを知りたかったと言いますか……」



 結構頑張った言い訳だが、さすが両親もう気づいてらっしゃる。さすがに気づくよね。

 家に籠ってたのに急に外の素晴らしさが知りたいから旅行しました!!とか明らかにおかしいし……


 「サリア。長老に昨日のうさぎのお肉を持っていきたいんだけど、持って行ってくれる?」

 「えー!!お姉ちゃんのお話聞きたい!!」

 「その後にお姉ちゃんのお話聞きましょうね!!帰りにパン買ってきていいから」

 「行く!!」


 ほんと可愛い妹。

 年齢は40歳とエルフで言うとまだまだ子供。

 疑似体験では、携帯の普及に伴いませてる子供が増えたけれど、この世界にはそんなことは起きていなかった。

 そんな中お母さんは、おっそわけのお肉とお財布をサリアに渡す。

 愛用のお財布はカエルのがま口財布……。

 前に1度聞いたことがあるが、お父さんから貰った宝物らしい。


 妹は、そのその2つを持って大声で「行ってきます!!」と言って出ていった。



 「サリアも居なくなったし、正直に話してもらおうか。」


 お父さん圧が怖いよ。その圧に負けて本当のこと話しそうだし……もうどうしたらいいの!!


 紗夜ちゃんごめんなさい。

 あなたの事を話さないとさすがにダメみたいです……



 「すまない。アリアには少し実験を手伝ってもらってた。だから、1週間程自宅に帰宅することが出来なかった。申し訳ない。」

 「?お父さん?アリア?どっちが話したの?」

 「違うぞ」

 「私も違うけど……」


 もしかして紗夜ちゃん!!


 もうどうしようもない状況だけど……


 助けて!!紗夜ちゃん!!



 今まで何も無かった空間から、急に球体のロボットが現れ浮かんでいた。

 状況が理解出来ないお父さんとお母さんは、頭の上に?が並んでいる。


 「……何かしらこれ?」

 「こんなもの見たことがない……」

 「紗夜ちゃん……」



 「ほんとにすまないことをしたと思ってる。私は紗夜。今あなたたちの前で浮かんでいる機械。アリアに実験を手伝って貰った為一週間も自宅に帰ることが出来なかった。本当に申し訳ないことをしたと思ってる。仮に手伝ってもらうにしても一声かけるべきだった……」


 「あなた……機械が話しているのだけど……」

 「ああ。信じられない……」


 私は疑似体験があったおかげで紗夜ちゃんのことを信じることができたが、お父さんとお母さんは信じることができないだろう。


 お父さんとお母さんは、話の内容が右耳から左耳へ流れ、今の状況を何とか理解しようとしているが混乱しすぎて訳が分からなくなっている。


 「詳しいお話をしようと思うのだけど、二人とも大丈夫だろうか」

 「「……」」


 そこから二人が話せるようになるまで時間がかかったがまだ夢の中にいる感覚をしている。


 「もう大丈夫だろうか……」

 「はい大丈夫です……」


 「まず私の名前は紗夜。この世界では800年前に亡くなったエルフなんだけど……」

 「「……?」」

 「ちょっと話を進めるね。一通り話した後になにか質問があったら聞くから。今回アリアには、一週間ほど私の実験に手伝って貰った為自宅に帰宅することができなかった。その手伝いというのも、私が作った世界を体験するものというものであって、そこで少しの間遊んでもらった感じかな。それと、生きてる頃。あっエルフだった頃に二人にも会ったことがあるんだけど、覚えているかな?魔法を教えてくれるおばちゃんみたいな感じで覚えてくれてると思うんだけど……」

 「「ちょっと待って!!時間ちょうだい!!」」


 二人とも先程の話を思い出して一つ一つピースをはめていく。


 ピースがはめ終わった頃にはサリアが帰ってきた。


 「ただいま!!」

 「えっもうそんな時間!!」

 「サリア?!」


 サリアの前ではあまり詳しいお話ができないので、サリアが寝た後に詳しいお話の続きをすることになった。

 極力内緒にしたい為、サリアには内緒ということになった。



 そしてサリアが寝て……



 「まって、状況を整理すると。昔私たちに魔法を教えてたおばあちゃんがロボットになって生きてたってこと?あと、アリアに自分が作った世界で遊んでもらった為一週間も帰ってこなかった? ってことであってる」

 「うん。」


 お母さんは話しながら上の空を見ている。それを聞いてるお父さんももちろん上の空だ。

 一日で理解しろって言う方が無理な話なんだ。


 「紗夜さんだと証明するものはあるのかしら?ごめんなさいね。さすがに娘が一週間も居なくなった原因であるあなたのことが知りたくて」

 「そうだな」

 「アリアの母親はウサ。父親はディーロ。ウサは、小さい頃にパンの耳を揚げたのが食べたくて泣きながらおねだりしたり。ディーロは、弓矢が下手くそで泣きながら抱きついてきたこととか、あと」

 「「そこまでで大丈夫です!!」」


 子供に自分の恥ずかしい話を聞かれたのか顔を赤くしながら話を切り上げて貰った。未だ信用してない感じだけど……


 「今は信用出来ないのはしょうがないと思う。急にこんなものがやってきたら、私だって同じ対応をとると思うし。だがこれだけは信じて欲しい。私から実験に付き合ってと頼んだのだ。だからアリアは一切悪くは無い。」

 「……はい。何となくですが、理解しました。」

 「……少しわかったのだが、ここで質問してもいいだろうか?紗夜さんだけしか知らないことをここで確認したい。」

 「私もよ。」


 私は一回自室に戻る。



 その間紗夜ちゃんとお母さんとお父さん三人で話し合い。終わり次第読んでくれるらしい。


 しばらくだった後、お母さんが私を呼びに来て一緒にリビングへ行く。


 「待たせてごめん。信じられないが、間違えなく紗夜さんだよ。」

 「私も話したけど、私と紗夜さんしか知らない話を全て知っていたから、信じるしかないよ。」

 「私も二人に信じて貰って良かったよ。」


 お母さんとお父さんは、なんとも言えない顔をしている。

 紗夜ちゃんは、わかってもらえて嬉しいのか声色がさっきより良くなっている。


 「ほんとここで話すことでは無いと思うんだけど、ひとついいかな?」

 「「?」」

 「実は、今すぐにって訳では無いんだけど、アリアとこの世界を見て周りたいと思ってて。それにアリアも賛成してくれてるんだけど……戻ってきてあまり経ってないのにこんな話して申し訳ないんだけど、あまり後々で話す話でもないと思って」


 両親の顔はすごい不安な顔とどうしようと迷った顔をしている。


 「お言葉ですが、この子は全くと言っていいほど魔法の勉強をしてきませんでした。エルフは、人並み外れた美貌等で襲われる原因にもなりますので、旅に出るにはまだ早いかと。もし行くとなっても数十年後になると思います」

 「それもそうだな。」


 お母さんがお父さんを差し置いてここまで発言するのは珍しい。こんなお母さん見たことがない。


 「お母さん。お父さん。私も紗夜ちゃんと旅したくて、これから本気で勉強して魔法も沢山使えるようになるからダメかな?」

 「ダメとは言ってないんだけど……」

 「そうだな。今まで家にいたアリアがここまで言うんだから、覚悟は出来ているんだろ。」

 「うん」

 「魔法の勉強だけでは、この世では生きていけない。仕事でもそうだが、冒険をするならチームで動き何かがあったら助け合いするのが当たり前になってくる。もし、本気で行きたいのなら1年間は長老と紗夜さんに修行をしてもらい、その後学校に通ってもらうことになるがそれでも行きたいか?」

 「うん。私はそれでも旅に行きたい。」

 「分かった」

 「お父さん!!」

 「すまない。ディーロ。ウサ……」


 お父さんとお母さんが意見が食い違ったのか少し話し合いをしているが、結局お母さんが折れてくれて条件を達成したら旅に出ていいことになった。


 「ほんと今日は驚きっぱなしだわ。」

 「そうだな。」

 「「ごめんなさい。」」


 「それにしても、紗夜さんはご飯とは用意した方がいいのでしょうか?」

 「気持ちはありがたいが、この体では食べることができないから大丈夫だ。それと、せっかくの家族の時間を邪魔したくないから大体は姿を見せないから安心して」

 「分かりました。」


 その後私は自室に戻りベッドで寝るが紗夜ちゃんは、まだお母さんとお父さんとお話をしてる。


 今日は紗夜ちゃんが出てこなかったら何も出来なかったと思う。

 ありがとう。

 私はそのまま目をつぶって寝たのであった。


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今回のお話で学園ものになることが確定しました!!本来は学園物語を作る予定ではありませんでしたが、このまま旅に出るとお話が少しおかしくなってしまうのでは!!ということで学園編を追加しました(その前に長老などの講座有り)。 旅小説にする予定がズレにズレまくっているのが少し心配です。学園編が終わる頃には旅のこと忘れていたりして(アワアワ)。後で、パン屋のお話も詳しく書こうと思っているのでお楽しみに!!


【追加項目】

お母さん ウサ

お父さん ディーロ


【今後の予定】

10話に達するまでは1日1話公開予定!!毎日0:00に公開します。 その後は水、土曜日に更新予定です。

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