第2話 戻った記憶

 「ちょっ えっ!!耳っえっ?」


 本当に人族ではないってこと?!


 だって、こんな耳、人族だったら絶対にありえないし、もしもこんな耳になったら、ただの見世物扱いされるだけ……。


 私は確認の意味を込めて、もう一度長いであろう耳を触ってみる。



 フニフニ。


 ……。



 うん。もう考えるのはやめよう。うん。


 考えれば考えるほど、訳が分からなくなるし、既に頭が痛くなってきた。


 私は受け止められない現実についため息が出てしまう。


 「耳の状態に関しましては、記憶が戻り次第正常な判断ができると思います。そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。」


 ……。紗夜ちゃん?の言葉を聞くと、こんなに悩んでいるのがバカバカしく感じると同時に怒りがどこからか湧いてくる。


 ここまで焦っていて、どうしよう。どうしよう。と慌ててる時に、ここまで冷静に反論された上に、それが正しいとここまで気分が悪いとは……。


 そもそも、今話してくれているのは本当に紗夜ちゃんなのか?


 実際に紗夜ちゃんだというのなら、紗夜ちゃんとは何者なのか。


 あの世界で友達と接した紗夜ちゃん。今冷たい対応で接してくれる紗夜ちゃん。


 どっちが本当の性格で、私のことをどう思っているのか。が不安でしょうがない。


 このまま黙っているという選択を選ぶこともできるが、私は勇気を出して紗夜ちゃんに聞いてみることにした。


 「紗夜ちゃんは、何者なの?」


 ……。言ってしまった。


 あんなに勇気を出して言ったのに、今は言わなければ良かった。と後悔している。


 紗夜ちゃんがなんて返答してくれるのか。が気になって今までにないぐらい鼓動が早くなってきたが、紗夜ちゃんからの返答はない。


 「……。」


 「あっあの。えっと……。」


 「……。」


 そういえば、さっきまで紗夜ちゃんからの返事全て敬語だった!!


 今まではタメ口で話せる関係性だったけど、急に敬語になったということは……。


 本当にやらかしてしまったかもしれない……。


 多分今鏡で自分の顔を見たのなら、病気かと疑うレベルの真っ青な顔だろう……。


「ごめんね。今の状況を理解出来ない上に、唯一の友達から急に敬語で話しかけられたらそんな顔にもなるよね。つい面白そうだから、からかっちゃったよ。そんなに深刻そうな顔しないでよ。私は今まで友達と接していた紗夜そのものなんだから。それで、私のことだけど、少しだけ説明するね。私は、アリアと同じエルフだった。色々あった後に魔法の研究をして、自分を機械化できたらもっと魔法の研究ができるのでは?! と思って機械になったって感じかな。簡単に言ってるけど、結構難しいんだよ。少しは褒めてもいいよ!! 元エルフだから今まで通り、いや、これからずっと一緒だから今まで以上に仲良くして欲しいな。」


 「……。」


 「やっぱり後でまた言い直した方がいいね」


 「……。お願いします。」



 とりあえず整理しよう。


①私はエルフだったらしい。

②紗夜ちゃんは元エルフで今はロボットらしい。

③私のエルフだった記憶はその内戻るらしい


こんなところかな……。


うん。全く分からない。


とりあえず、外に出て周りを出歩けば少しはなにか思い出せるかもしれない!!


 私は当たりを見渡すと謎の機械の近くで謎の球体の物体が浮かんでいる……。


 大きさ的にサッカーボールぐらいだろうか。


 まさか、これは私がどこにいてもついてくる録画機械なのかもしれない。


 私が死んだと思った世界で昔流行ったと聞いたことがある。なんでもその動画を動画サイトにアップロードして金稼ぐ方々がいたとかいないとか……。


 もう何がなんだか分からなくなってきた。


 私がまたアワアワと慌てていると、紗夜ちゃんから声をかけられる。



 「そんなに慌てないで。ぷかぷか浮かんでいるのが私、紗夜だよ!! ちなみに、エルフの肉体を離れて800年になるから機械の扱いは大ベテラン!! ってところかな。迷惑かけることはないと思うけどこれからよろしくね!!」


 「よろしく。……ん?800年前?!」


 「えっ?800年ぐらいどうって事ないでしょ。言うてエルフの平均寿命3000年だし」


 「……」



 さっきまで色々考えていたが、3000年と言う想像もできない寿命を聞いてしまうと、その事しか考えられなくなってしまう。


 ……。


 3000年も生きるのか。


 ……。


 3000年……。



 これは、記憶が戻った時に対処することにしよう。うん。そうじゃないと意味が理解できない。


 私は近くにある木に寄りかかりながら、ため息をつく。


 はぁ。


 …………


 …………


 ……あっ!!


 これは、エルフだった時の記憶かな?なんだか自分が誰かにアリアって言われている光景がふと頭に流れる。


 うん?これは……。


 ……。


 私引きこもりだね……。


 ……。そういえば年齢60歳だった。


 確か学校等に通っていないから、60年間引きこもりって言うことか……。


 って言うことは、あと平均寿命まで2940年。


 うん。そこまで長く生きられる気がしないな。


 「徐々に記憶が戻ってきたみたいだね〜」


 記憶が戻ってきた時に、少し安心したのが顔に出ていたのかもしれない。


 エルフだった時の記憶を思い出せば少し紗夜ちゃんのこと分かるかな? と思ったが全く紗夜ちゃんのことが思い出せない。


 そのうち思い出すだろう。




 そんなことを思っていたら、徐々に記憶が戻ってきて一時間もすれば記憶完全復活!!



 疑似体験時は、寿命が短いのでやりたいことをしなさい。とよくテレビでやっていた為一日一日を大切にしていたが、以前の私はそうではなかった。


 平均寿命が3000歳であることから、時間のことをあまり気にせずにいつも家の中でボーとして過ごす生活。そもそも、エルフ自体が時間のことを気にしない性格なのだ。


 今日できなければ1ヶ月以内に。


 それでもできなかったら1年以内にと、どんどん先延ばしにすると性格。


 疑似体験時の性格と真逆につい自分を疑ってしまう。


 これからは、一日一日を大切に生きよう。


 ってそんなことを思い出している場合ではなかった!!


 私は山菜採りに行ったっきり帰ってこない存在になってしまっているのだから。


 ここでどれぐらい過ごしたのか?もしも何十年とたっていたら、大変なことになってしまう!!



 「紗夜ちゃん!!私が疑似体験に入ってからどれぐらいがたったの!!」


 「そうだな、一週間ぐらいか」


 「……」


 年数ではなくて安心したが、全く外に出ない引きこもり体質が一週間も外を出歩いていれば家族は心配でしょうがないだろう。


 私はどうしよう。どうしよう。とあたふたしてしまう。


 「まぁ、少し落ち着いてくれ。たったの一週間だぞ。エルフからすれば数時間いや、数分程度の感覚。そんなに心配しないだろう。ゆっくり帰ろっか。」


 「……」


 引きこもり体質なんです!!と発言しようと思った時にあることを思い出す。


 それは、話し方の変化だ。


 昔はお嬢様喋りのようにお淑やかであったが、仮想世界を強く生き抜くために口が悪くなってしまった……

 不良少女と間違えられるかもしれない……


 「とりあえず家帰ろっか?道わかる?エルフの里?」


 「……」


 「無視は良くないよ」


 「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 エルフの子供(私)がショートするの合図だった。

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言葉を発する前後に空白を入れ少し読みやすくなったと思います。(昨日の1話も、訂正済み!!) 期間限定の激辛カップラーメン美味すぎて鼻水垂れてくる。お店には伺ったことがないので、今年中には行ってみたい!!

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