第2話 戻った記憶

 「ちょっ えっ!!耳っえっ?」


 焦りすぎてもはや言葉にならない。エルフだった時の記憶が一切戻っていないのだから。

 耳をふにふに触ってみるが、触ってはいけないものを触ってるような感覚。それにしても、壁とかにぶつかりそうで怖い……。

 私はブツブツと言いながら自分の耳を触っている。


 「耳の状態に関しましては、記憶が戻り次第正常な判断ができると思います」


 正常な判断が出来ないのは当たり前だろ!!死んだと思ったらエルフになって、同期だった紗夜ちゃんとお話して頭がこんがらがっているのだから、正常な判断ができてる方が逆に異常だよ。

 それにしても、本当に紗夜ちゃんだとしたら紗夜ちゃんは何者なんだろうか?

 不安は残るが、意を決して聞いてみることに。


 「紗夜ちゃん 敬語とかいらないからね。いつも通りでいいよ。それと、紗夜ちゃんは何者なの?」


 そもそもどこから声がするのかも分からないし、周りを確認しても生命反応は私と小動物ぐらいしか見つからない。

 こっちの世界でも紗夜ちゃんとの関係性。これが気になってしょうがない。

 疑似体験では、友人であったが、それはこっちの世界での関係性を鑑みてプログラムしたものかもしれないからだ。

 唯一の友達であった紗夜ちゃんとこんな形で疑うことになるなんて夢にも思わなかった……。

 コミュニケーション能力も皆無な私は上手く聞き出すこともせずにオドオドとして紗夜ちゃんの返答を待つ。


 「私はあなた方と同様にエルフだったもの。人生を魔法の研究に捧げたおかげで機械に体を移し今も尚生きている存在。疑似体験時にアリアに接近したのも、最近の子供の考え方を取り入れたいから。そして、取り入れた結果ひとつの結果が出てしまった……。それは、お前らエルフを皆殺しにすることだ!!」



 もしかして、私のせい!!



 私の性格が良くなかったが為に、エルフの里の皆が殺されてしまうとか耐えきれない。

 実際に、記憶が戻っていないので里にどんなエルフがいるかなんて分からないが、私のせいで死んだとなれば罪悪感がすごい。

 そもそも皆殺しにするのだから、私から殺されるだろう……。



 記憶にないお父さんお母さん今まで育ててくれてありがとう……。もし天国で会えたのなら声をかけてくださいね。

 私は天に祈りながら死ぬことを決意した。



 「って言ったら怖いよね。ごめん。冗談冗談。 てか心拍数上がりすぎ(笑)。疑似体験時のアリアだったら、ツッコんでくれるかな?って期待したんだけどやっぱり無理だったか。ごめんごめん。冗談だから。エルフも殺さないから安心してよ。」

 「……」


 私は今までにないぐらいの怒りが体の奥からみなぎってくる感覚を初めて覚えた。

 何が冗談だよ。今の自分に置かれてる状況も把握出来てないのにいきなり殺すとか言われたら信じるだろ。


 しかも、言われた相手が友達とか……。悲しすぎて言葉にならない……。

 私は紗夜ちゃんの事を信用しすぎたのかもしれないと反省をする。




 私どうすればいいの!!




 私はここから脱出するために当たりを見渡すが見たことの無い物体が浮かんでいる……。

 サッカーボールぐらいの大きさの丸い球体が私に近づいてくる。

 もしかして、どこかに逃げてもついてきて、私を殺す準備満タンを間接的に伝えてきてるのかもしれない……。

 私はドキドキになりながら今後の作戦を練ることに。



 「ごめん。これ程心配するとは思ってなくてつい意地悪をしてしまった。今アリアの目の前に飛んでる機械が私。ちなみに、エルフの肉体を離れて800年になるから機械の扱いは大ベテラン!!これから、色々とお世話になることがあるとおもうけど、よろしくね」

 「……ん?800年前?!」

 「えっ?800年ぐらいどうって事ないでしょ。言うてエルフの平均寿命3000年だし」

 「……」



 私たちは3000年も生きるのか……。疑似体験でも平均寿命が160歳だったのにそれの10倍以上はある……。私は、疑似体験時の80年間を振り返るが実に濃くて長い人生だったと思う。それと同時に3000年も生きていけるのだろうか?という不安も混み上がってきた。


 エルフの感覚は理解が出来ない(私もエルフらしいです。)。800年前ぐらいと言えてしまうのだから……。

 こんな恐ろしい種族になってしまったのか、と少し動揺しながら、何か思い出せることはないかと記憶を振り返る。



 …………


 …………


 ……あっ!!



 うっすらとエルフだった時の記憶が思い出してきた。私の名前がアリアだったこと(疑似体験時と同じ名前)。年齢が60歳だったこと。エルフの里にてほぼ引きこもっていたこと……


 平均寿命まで2940年か……。全うできる気がしない……


「徐々に記憶が戻ってきたみたいだね〜」


 記憶が戻った時に少し安心したのが顔に出ていたのかもしれない。

 それにしても紗夜ちゃんのことについては全く思い出せない。完全に記憶を取り戻したってことでは無いからなのか?

 私は少しでも早く記憶が戻るように戻った記憶を繰り返し頭の中で浮かべる。




 そんなことをしていたら徐々に記憶が戻ってきて、一時間もすれば完全復活!!



 テッテレー!!

 記憶完全復活!!


 疑似体験時は、寿命が短いのでやりたいことをしなさい。とよくテレビでやっていた為一日一日を大切にしていたが、以前の私はそうではなかった。

 平均寿命が3000歳であることから、時間のことをあまり気にせずにいつも家の中でボーとして過ごす生活。

 今日出来なければ1ヶ月以内に。

 それでも出来なかったら1年以内にと、どんどん先延ばしにすると性格だった。

 私は思い出しながら、こんな性格だったのか?!と今の性格と比べて驚きが隠せない。

 これからは、一日一日を大切に生きる予定。


 ってそんなことを思い出している場合ではなかった!!

 私は山菜採りに行ったっきり帰ってこない存在になってしまっているのだから。

 ここでどれぐらい過ごしたのか?もしも何十年とたっていたら、大変なことになってしまう!!



 「紗夜ちゃん!!私が疑似体験に入ってからどれぐらいがたったの!!」

 「そうだな、一週間ぐらいか」

 「……」


 年数ではなくて安心したが、全く外に出ない引きこもり体質が一週間も外を出歩いていれば家族は心配でしょうがないだろう。

 私はどうしよう。どうしよう。とあたふたしてしまう。


 「まぁ、少し落ち着いてくれ。たったの一週間だぞ。エルフからすれば数時間いや、数分程度の感覚。そんなに心配しないだろ!!」

 「……」


 引きこもり体質なんです!!と発言しようと思った時にあることを思い出す。


 それは、話し方の変化だ。


 昔はお嬢様喋りのようにお淑やかであったが、仮想世界を強く生き抜くために口が悪くなってしまった……

 不良少女と間違えられるかもしれない……


 「とりあえず家帰ろっか?道わかる?エルフの里?」

 「……」

 「無視は良くないよ」

 「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 エルフの子供(私)がショートするの合図だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


言葉を発する前後に空白を入れ少し読みやすくなったと思います。(昨日の1話も、訂正済み!!) 期間限定の激辛カップラーメン美味すぎて鼻水垂れてくる。お店には伺ったことがないので、今年中には行ってみたい!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る