第5話

「また、なんかスキルを獲得したみたいだ。試したいところだけど。先に服を着ないと素っ裸だもんな」


 俺はアイテムボックスから着替えを取り出し、服を着る。アーマーは予備を買う余裕がなかったため、そもそも用意していない。それに、この『竜の鱗』というスキルがあれば、もう防具を買う必要すらないかもしれない。


「よし、外に出るか。あいつら、俺が帰ってきたらびっくりするだろうな」


 39階は鬱蒼とした森林地帯と平原のステージになっている。森を抜ければ、開かれた平原がつづいている。隠れる場所もないためモンスターに見つかりやすい反面、こちらからも対処がしやすい。


「あれはオークか」


 人型の太ったモンスターが見えた。片手に巨大な斧を持っている。その奥には槍を構えたものも複数いるようだ。竜を倒す前だったら逃げていただろうな。でも、俺には相棒もいるし、新しいスキルもある。戦ってみるか。


「おーい、ぶたやろう!こっちにこーい」


「ブモ?ブモモ!」


 人語を解さないはずのオークが怒り心頭といった感じで土煙をあげながら走ってくる。


「よし、スキル発動『吸引』『竜の鱗』」


 斧が落ちてくる。別の角度からは槍が腹部に向かって突き付けられていた。オークは目を細めニヤリと笑っている。きっと勝ったとでも思っているのだろう。ただ、それは大きな間違いだ。


「ブモ?」


「よしいくぜ相棒」


 勢いよく鞘から刀を引き抜き適当にぶん回す。レベルが上がった影響や刀自体の鋭い切れ味のお陰で斧や槍ごと一刀両断し、オークを半分に切り伏した。残りのオークは何が起こったのかわからないといった表情でお互いに顔を見合わせている。


「油断大敵とはこのことだな」


 俺はとびかかり、オークの顔を蹴り飛ばした。隣でぼうっと突っ立っているのも切り伏せ、アイテムに変化するのを確認した。


「オークから出るのはオーク肉と偶にハイポーション。今回は全部オーク肉みたいだな」


 モンスターを倒すと必ずアイテムが出る。オーク肉もハイポーションもどちらも高く買い取ってもらえるため、ソロで倒せるのはかなりでかい。これまでのパーティーであれば、この戦闘の利益は1万円しかなかったが、今回は40万円近い。


「あいつらにポーション代まで負担させられてたからな。これまでの借り、必ず返してやる」

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不遇で不死身のタンク、謎スキル「吸引」で世界最強に至る。 UFOのソース味 @kanisan

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