君はやっぱり妹
男の子を見送ったあと、なんだか温かい気持ちになっていたが、不意に舞花が呟いた。
「ねぇ、お兄ちゃん。試しに私のこと、お姉ちゃんって呼んでみてくれる……?」
「……えっ。どうしたお前、頭おかしくなった?」
「違うしっ!! なんかね、その……えっと……」
そんな風に口ごもっている舞花を見て、羽乃は「なるほど〜」みたいな顔をして代わりに話してくれた。
「姉様はですね、さっきの少年からお姉ちゃんって呼ばれたのが嬉しかったんだと思います。だから、たまには兄様の姉になってみるのも良いかな、なんてことを思ったんですよ」
「ま、まぁ……そういうことだよ。なんか恥ずかしい……」
今までずっと好き好んで妹を演じてきたのに、急にこんなことを思いついてしまったものだから、確かに恥ずかしがるのも分かるかもしれない。
……いや、しかしだぞ? さすがに「お姉ちゃん」って恥ずかしいんだけど?? この年になって……?
「呼んでくれないの? お兄ちゃん……じゃなくてふーくん……いや、楓太? あ! ちょっとだけお姉さんっぽいかも!?」
「いや、完全に妹だろ今の……」
「わたしも同意ですね」
それを聞いて、舞花は項垂れている。なんだかんだ言って、俺は多分コイツに妹でいてほしいのだ。だからまぁ、姉でいられると調子が狂う、マジで。……これはこれでちょっと良いかもしれない、とも思ったが。
けれども、それを口に出してしまうのはなんだか憚られた。というかシンプルに照れくさい。
そんな俺の様子を見て、舞花は納得いったような顔で言った。
「つまり、アレだね! お兄ちゃんはどんな私でも大好きなんだ〜? ふぅ〜ん?」
「いや、まぁ……もうそれで良いよ……」
何かが違うような気もしたが、それも事実ではあるので、曖昧に肯定しておいた。もう何言ってんのか分からねぇ……。あれ? どうしよう、顔が赤い気がする。 いや、お前まで赤くなるなって……!
「仲良しですね。……わたしも混ぜてくださいよ」
俺たちを見て、悲しげに羽乃が呟いた。たぶん演技だろうけど。
2人の間に流れている変な空気をなくしたかったし、何より可愛かったので、羽乃を思いっきり撫で回してやった。もちろん舞花と一緒に。
ていうか俺ら、まだエレベーターのそばにいたんだな。ずっと気づかなかった……。
「ちょっと時間は経っちゃったけど、本屋行くんだろ? 早くしようぜ」
「そうですね、早く行きましょう! 新刊が出てるはずなのです」
「そーだね。ごーごー!」
そうして本屋に着いた。やっぱりかなり広かった。
羽乃が、明らかに妹モノのラノベを俺たちに見せつけるようにしてレジに向かって行く。いやだから、その視線は何なの……?
お兄ちゃん怖いんだけど。
というわけで、羽乃が『お兄ちゃんと結婚するために法律変えちゃうぞっ!』なんてタイトルのラブコメを持って、ルンルンで向かってきた。このタイトル、なんか舞花が言いそうで恐怖を覚える。……いやさすがにそこまでのブラコンじゃないと思うけど。
「さぁ、兄様姉様! お昼ご飯を食べに行きましょう!」
ひたすらに純粋な笑顔でそう言ってくる。あと少しで12時になるし、ちょうどいい時間だ。混んでないと良いけど。
「うっどん〜! うっどん〜! つるっつる〜!」
舞花が謎の歌を歌っている。楽しそうなので、俺も乗ってみる。
「「うっどん〜! うっどん〜 ! つるっつる〜!」」
こんなの、傍から見ればただのバカな兄妹なのかもな。羽乃も、俺たちを見て「ふふふ」なんて笑っている。天使の微笑みだ。
そこからは、フードコートでうどんを食べて、服屋とか雑貨屋とかゲーセンとかをいろいろ見て回った。
数時間そんなことをしたが、疲れたし普通に飽きたので家に帰ることになった。最初から最後まで何をしに来たのかよく分からなかったが、楽しかったので良しとしよう。
「楽しかったね、2人とも! また一緒に行こうねっ!」
満面の笑みで、舞花はそう言った。こちらもまた、宇宙人が卒倒しそうなレベルで可愛かった。
そんなことを言われては、返す言葉なんて1つしかないよな!
「おう! また来ようぜ!」
「そうですね……!」
終わり!
ここまで読んでくださりありがとうございます!本当に初めての作品なので、上手く書けているかは分かりませんが、面白いと思ったら応援やコメントなど是非お願いします!
1つ上の義姉が、俺のことをお兄ちゃんと呼んでくる(もう慣れた)! なっくん @nacknn10
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